9月頭に書いた記事のつづき。
いやあ、元々は、ディケイドの最終回記念記事だったんだけど、今になれば、年末劇場版公開1ヶ月前記念って感じですな。
それと、先日の休みに、友人の特撮者といっしょにカラオケに行ってきたんですが、BLACKの挿入歌を歌おうとしたら、入ってないでやんの。「初めに、初めに光あ〜り♪」とか、「君は光の戦士だ♪」とか、歌えずに欲求不満もありますので、それを昇華する意味合いもこめて。
仮面ライダーBLACK
さて、「子供にまつわる」という観点で書いた本記事ですが、BLACKの場合、「子供」ってあまり印象がないんですね。まあ、劇場版とか、一部の回で子供と光太郎の交流、あるいは子供を狙うゴルゴムにスポットが当たった回もあるのですが*1、基本的に大人の視聴者重視の作品だったと思っています。
そして、同時に、これまでのライダーに比べて、女性ゲストの出演率が高かったという印象*2。記事タイトルを「子供にまつわる」から「女子供にまつわる」と変えたのも、それが原因。
で、ゲストではなく、レギュラーという観点で考えるなら、信彦の妹・杏子と、信彦の恋人・克美の存在感が大きい。この時点で、南光太郎こと仮面ライダーBLACKの保護対象は、従来の仮面ライダーのように子供メインではなく、彼女たちを初めとする女性たち、という風に切り替わったと考えることができます。
まあ、前回の記事で、ZXにおける一条ルミの存在が「ライダーと少女にスポットが当たるきっかけ」と書いたりもしたわけですが、視点を広げれば、仮面ライダーに限らず、80年代の特撮ヒーロー界そのものが、ヒーローの保護対象を「男子児童」から「年頃の娘」に切り替えたということも考えられます。
このことを象徴するのが、80年代初期のヒーローの代表である宇宙刑事シリーズ。シャリバンの挿入歌「スパーク! シャリバン」の歌詞中に、「大地を引き裂く魔王の刃 ふまれた野の花 少女の涙♪」とあります。つまり、悪の魔王は、単なる子供ではなく少女を狙い、ヒーローは彼女を守るために戦うというイメージがこの時期には生まれてきているのですね。もちろん、少女は単に守られる対象ではなく、女宇宙刑事として戦うイメージも付与されるのですが。
この傾向は、80年代に始まったのではなく、ビジンダーやモモレンジャーなど70年代の変身ヒロインからの流れも無視するわけにはいかないのですが、戦隊でダブルヒロイン制を初採用したバイオマン(84年)、ダブルメタルヒロインを採用したスピルバン(86年)に至って、「特撮ヒーロー物における女性の地位の向上」は一種の頂点に達したと言えるでしょう。
この点、仮面ライダーは割と保守的で、女性の登場は増えたものの、基本的には保護対象で、なかなかバトルヒロインまでには昇格しなかったのですが*3、次のRXでは新たな飛躍が見られることになります。
仮面ライダーBLACK RX
さて、年長視聴者を喜ばせるシリアスなドラマと、同じく年長視聴者(男性)を喜ばせる女性ゲストの多さで、マニアックなファンを獲得するに至ったBLACKですが、2年めに入って、本来の視聴者である年少組を意識した改変が行われます。
何だか、少し前のZガンダムがガンダムZZに変わって、「明るいガンダム」を志したように、
「黒い太陽」も、もっと明るい「太陽の子」「光の戦士」という属性を強調され、性格も明るく、しかもただの大学生(中退扱い)から、ヘリコプターパイロットという華やかな職業に転職。おまけにカメラマンの恋人までいる、という恵まれた境涯に。*4
あ、RX時期の明るい光太郎や、後の俳優のイメージから、ディケイド劇中で「女に弱いBLACK君」という言葉をディエンドが口にした際、違和感を感じたという人が特撮掲示板にいましたが、実のところ、BLACK時期の光太郎が女性に弱いのは事実です。女性ゲスト回の多くで、BLACKはゴルゴムに操られた女性に手出しができずにピンチに陥っているのでした。やっぱり、調べもせずに思い込みだけの印象論で物を語ってはいけないな、と感じた次第。ま、自分も今回調べるまで、「BLACKは、あまり子供メインの話を作っていない」という印象を持っていましたが、20%もあれば十分かな、と思い直したわけで。
それはさておき。
RXの子供路線化は、光太郎の周りに、レギュラーの子供を配したことからも明らか。佐原一家の茂くんと、ひとみちゃんですね。
初期は、恋人役の白鳥玲子さんも、従来のライダーガールと同じように事件に巻き込まれるお姉さん程度の位置づけ。元ダイアナなので、アクションもできるはずなんですが、それは後半までお預け。
RXでとりわけ自分が好きなのは、第2クール冒頭14話から17話までのガロニア姫編。ここで、佐原ひとみちゃんがクライシスに誘拐され、その後、洗脳されて、ジェットマンのマリアにされてしまいます(いや、役者がね)。光太郎は、そこでひとみちゃんを助けるために悪戦苦闘するものの、哀しみのパワーでロボライダーに、怒りのパワーでバイオライダーに変身する力を身につけ、また盟友「霞のジョー」と知り合うことになります。
惜しむらくは、このガロニア姫が何とか復活できなかったか、と。この後の話で、ガロニア姫の設定そのものがなかったことにされ、クライシス皇帝(ダスマダー)も全く触れてくれなかったわけですが、自分としては「ガロニア姫が再生して、クライシスの悪の幹部として振る舞うも、物語終盤で相応のドラマを見せて光太郎と和解する展開にならないか」と思ったものです。クライシスについては、序盤から中盤にかけて、いろいろと伏線を張っていたのに、10人ライダーの登場でうやむやになってしまったわけで。
……って、RXの話をすると、どうしても「10人ライダー登場という、嬉しいはずなのに無性に不満なイベント」に流れが移ってしまうのですが、気持ちを無理に切り替えて、ヒロイン話に戻りましょう。
あれ? 子供話じゃなかった? とは言わないでね。
RX後半の注目は、変身しないけどバトルヒロインになった玲子さんと、超能力少女・的場響子の存在に尽きます。彼女2人と、霞のジョーが南光太郎を強力にバックアップ。自分としては、いつ玲子さんが「結晶」してくれるか期待……はしていませんでした(爆)。すみません、危うく嘘をつくところでした。RX放送当時の自分は、彼女を演じた高野槇じゅんが、ダイアナ役の澄川真琴と同一人物だという情報を持っていなかったので、つなげようがない。
まあ、それは置いておいて。
この段階で、ライダーガールもしっかりしたドラマを得て、主人公を懸命にアシストする地位を獲得したわけです。玲子さんはクライシスと戦う光太郎を助けるために空手の鍛錬をし、響子ちゃんは水を操って(バイオライダーとの相性最高)、アーチェリーも修得。
変身しないバトルヒロインとしては、この時期、「サイバーコップ」のビーナス(上杉智子)もそうだし、メタルヒーローでも、「ジバン」「ウインスペクター」「エクシードラフト」と変身しないヒロイン作品があったりもするので(「ソルブレイン」は変身ヒロインが復活するけど)、変身しないから価値がない、というわけではない。
でも、変身してくれると嬉しい。
何とか変身してくれないかなあ。
こういう期待感を特撮ファンは割とこの時期から持つようになったわけですね。これは、毎年、変身ヒロインが確実に登場することが分かっている戦隊もの*5とは違ったワクワク感です。
でも、もう少し、見方が成長すると、「変身したら、顔や肢体が隠れてもったいない。できるだけ変身せずに戦ってくれないかな。そして、できれば、ピンチに陥ったりして……へへへ」なんて歪みに溺れたりも(爆)。
そういう煩悩を適度に昇華したのが、こういう作品になるわけですな。
次は、90年代の作品を「女子供」観点から語る予定。
*1:12話のロードセクター登場回とか、15話とか、22話とか、23話とか、27話とか、31話とか、33話とか、40話とか、42話とか、44話とか……って、約10話。じっくりほじくり返せば、それなりに見つかるか(苦笑)。
*2:数えてみると、5話、6話、8話、9話、20話、24話、26話、29話、30話、32話、39話。11話ってことは、子供話と同じくらいの比率ですね。
*3:初期2号編のライダーガールは山本リンダを初め、それなりの戦闘力を持っていたが、せいぜい戦闘員の数減らしでしかなく、初の変身ヒロインであるタックルも、その技・電波投げは戦闘員専門で、奇ッ械人には通用しないのが普通。ビジンダーやモモレンジャーに比べれば、足手まとい感は否めなかった。でも……ディケイド完結編でのタックルの扱いはどうなるかな? それと、キバーラ夏みかんは? それなりの活躍に期待したいところ。
*4:個人的には、BLACKの終盤で分かれた杏子ちゃんや、克美さんのその後がいまだに気になって仕方ないんだけど。
*5:まあ、一人か複数かの違いはあるけど。自分は、好みを選択する自由がある複数ヒロイン希望の人です。