う〜ん、気持ちとしては、第20話の感想を書くよりも、早く最終2話を見たい、との想いですな。
最終章の脚本は、メインライターだけど寡作の寺田敏雄氏。
この人についての分析で、NOVAは13話感想時にこう書いております。
メインは寺田敏雄。2007、2009新春スペシャル、「1話」、「10話」、「11話」の人ですな。NOVAの視点では、とんでもない変化球投手という認識。必殺のパターンにとらわれない物語を構築し、安心して見ていられない人ですな。
それだけに、「10話」「11話」の源太の悲壮な末路とか、ドラマの大きな転機を描くにはいいのですが、レギュラーとして脚本を量産されると、ツライな、とも思ったり。
何しろ、「玉櫛」「源太」の2人をあっさり殺してますから、「レギュラー殺し」の称号を進呈したい、と思います。次にこの人の脚本があるのは最終回ぐらい?
予想は大当たりでした。しかも、NOVAは1話感想時にこう書いております。
もしかして、2時間スペシャルの分量感覚で、濃密なドラマを描こうと意気込んだら、1時間の枠内では描ききれなかった?
1話については、かなり酷評したNOVAでしたが、寺田さんの描きたいものを見せるには、やはり1時間ではなく、2時間が必要ということですな。最終話が2話構成ということで、それなら十分に濃密なドラマが見られるだろう、と期待大なわけですな。
おっと、今回は20話の感想。
そちらは、そちらでNOVAが「一番、安心かつ期待できる脚本家」と見なしている、森下脚本。しかも2009の最終登板ということで、きちんと感想書き上げなければ、ね。
1話と同じ批評が当てはまる?
ええと、森下脚本の良さはこれまで、「小五郎が格好良く描かれ、しかも他のキャラの描写にも一通り、気を回しており、地味な話でも非常に完成度が高い」と評してきました。
割と、レギュラーキャラと、ゲストキャラの絡みドラマが濃厚で、だからこそ感情移入もしやすいわけです。
しかし、今回はあまり仕事人サイドのレギュラー陣は、ゲストと絡んでおりません。ここまで、仕事人が傍観者に徹したのは1話ぐらいじゃないかな。
1話の感想。
「ゲストたちのドラマ」としては成立しているんだけど、そこにレギュラーキャラがほとんど絡んでこず、「頼み人の恨み」に仕事人たちがほとんど共感せずに、淡々と仕事するという「仕事人としては、全く心の通わないエピソード」になってしまった、と。
これについては、前半の批評がほぼ当てはまります。完全に「ゲストたちのドラマ」であって、仕事人はドラマの外に位置づけられています。
それなのに……批評後半のように、「共感せずに、淡々と仕事するという心の通わないエピソード」にはなっていない、非常に心の通った展開だったわけです。
上手すぎるなあ、森下さん、と思った次第。
ゲストのドラマは、それだけで完結
今回は、父の仇の男を追う母娘の物語。その娘に、同心の大河原伝七が惚れ込んで……というのがトピック。
ただ、大河原さん、本当に良い人で、娘の身を案じつつ、娘に対して強気に出られません。いわゆる草食系男性に相当。
まあ、仕事人のドラマで、普通の人があまり積極的に動くと、悪人に殺されるのがオチですからね。おまけに、役人の立場ですから、「惚れた女の仇討ちを仕事人に依頼」なんて展開にもしにくいし、同僚の小五郎が大河原さんの気持ちを慮って、自ら頼み料を出すなんて展開も無理がある。
大河原さんとしては、視聴者に「やっぱいい人だな」と思わせただけで、OKではないでしょうか。
いや、まあ、突然豹変して、「娘につきまとうストーカー役人」(14話)になったりしたら、どうしよう? なんて、思ったりもしましたが、大河原さんに限って、そんなね。
さて、大河原さんが完全に身を引いたので、娘と、母親と、仇の男のドラマが勝手に展開。
実は、仇の男は、藩のお偉方の汚職を隠すための陰謀に陥れられた結果、娘の父を殺めてしまったという真実。それを知った娘は、武家としての対面上、仇討ちの形式に従わなければならず、それでも、かつては愛していた仇との共感を覚えつつ、その心情を母親に披露。
男も娘の想いを受け止めながらも、仇は仇として自ら討たれる自己犠牲の精神を披露。その上で、真の仇であるお偉方に傷ついた体で挑むものの、多勢に無勢、娘ともども斬殺されて、両者手を握りしめたまま愛の形を示す。
そして、娘の想いを受けた母親が仕事人に依頼。その際、病に冒され長くないことを悟った母親が、自らの命を絶ったことで、仕事人の情が燃え上がる展開も、作劇効果としては悪くない。
仕事人たちの共感
さて、今回のエピソードで、決して深く絡んではいない仕事人たちですが、主水さんを除いて、うまく適度な距離でドラマに介入しています。
まず、一番、被害者に近い位置にいたのが小五郎さん。大河原さんとの付き合いから、娘の事情を知ります。一応、娘を想う大河原さんをフォローして、藩のお偉方の罠の待つ屋敷へ「奉行所の立会い」を提案するも、「町方の出る幕ではない」という当然の断り文句を受けて、退かざるを得ません。しかし、ドラマ的には、断られることを承知で提案してみるところに、冷静だが冷酷ではない小五郎の人物像が示された、と思います。
次に涼次。彼は、仇にされた男が日銭稼ぎとして「絵描き」をしていた縁で、事件に絡みます。さりげない演出ですが、殺しの際に、男の描いた「百合の絵」を元に屏風絵として完成させており、小五郎の殺しの背景として配置する、という「密かな連携」で、それに気付いたマニア心を満足させます。また、当然、彼の担当である屋根裏に隠れての諜報活動で悪人の陰謀を知り、「武家のしきたりへの反感」を披露してみせます。
第3にレン。彼は、仕事の的になりそうな仇の男を追跡することで、娘との関係に接します。惚れた男女なら駆け落ちすればいいじゃないか、と単純な義侠心を披露するレン。あくまで仕事にしたい涼次と、武士の仇討ちに仕事人が介入する余地はない、と武家の名誉心を語る小五郎。3人3様の立場の違い、考え方の違いが上手く描写されながらも、被害者への共感と悪への怒りという意味では、通じる想いを見せる仕事人たち。
そして、最後にお菊。彼女の前で、母親が想いを打ち明け、自害してみせることで、哀しみと怒りが頂点に達したわけですね。
ともあれ、異なる意見を持ちながらも、共通した想いを見せるチーム性が描かれるのが、NOVA好みの仕事人描写。馴れ合いの仲間でもなく、ギスギスしただけの不信感でもなく、適度な距離感のチーム関係こそが、最終章の展開を盛り上げることを期待して。
殺しの演出
やっぱ、主水さんのバラードで始まる殺しは、流れに乗れない、と今さらながらも思いつつ。
今回の主水さんは、奉行所役人として「仇討ちの書類に不備があった」と伝えに来ます。どんな不備か? と誘き寄せられて問う相手に、「仇の名前が間違えていた」と告げてブスッ。ネタとしては納得。
涼次は、まあ、普通に悪徳商人を殺害。いつもの通りで、可もなく不可もなく。
アクションとして傑作は、レン。相手は一番の強敵の用心棒役侍。
囮の死体を使って、相手を引き寄せ、投げた糸を首に巻きつけつつ、バック宙など素早い動きで、相手を翻弄し、反撃の刀も振り上げた際に鴨居に当たるように位置調整、この辺の一連の殺陣は流暢で、非常に見応えがあります。
そして、倒れた相手をうまく組み伏せ、至近距離でギリギリ絞殺。その際、クールな表情の多い一連の糸(紐)使いと異なり、力の入った暑苦しい表情が「新たな絞殺殺し屋のイメージ」を演出していて、NOVA的には高評価。確かに、自分の腕と、相手に絡めた脚の力だけで絞殺ともなれば、表情にも力がこもるわな。
最後に、小五郎。
侍らしいプライドを込めた「武家だったら、きちんと立ち会ったらどうだい」は、初期の不意討ち小五郎からは考えられない立派な姿。でも、NOVAとしては、これで満足です。
次回予告
コメント欄で、京の元締め「都の商売人」氏から、次回は「仕事屋」みたいと話をうかがいました。
で、自分で情報をチェックしてみた印象としては、「仕業人」の方だな、と。
共通点は、「仲間が敵に捕まる」ことです。
仕事屋では仲間を守るために自害。仕業人では、助けに来た女ともども斬殺という末路ですが、果たして、どうなる如月?(そっちかよ)
小五郎「経師屋。お前もそろそろ年貢の納め時だな。おまけに今度はレギュラー殺しの寺田さんだぜ」
故・源太の霊「経師さんも、いよいよこっちに来るんですか? 三途の川で待ってますよ」
涼次「ええい。ネタバレしてんじゃねえよ。からくり屋は、スシでも握ってろってんだ」
小五郎「……言っておくが、俺は『スシ食いねェ!』を歌ってないからな」
レン「そのネタ、もう賞味期限が切れてるよなぁ」
主水「とにかくよ、残り2話。生き延びた者が次の『仕事人2010』に出られるって寸法だ」
お菊「……って、本当にそれやるのかい?」
主水「まあ、何だな。本当に人気があれば、一度終わっても復活できるだろうよ」
シリーズの続編ができることを期待しつつ、最終2話に括目ってことで。