今年も残り一月かあ
NOVA「いろいろ慌ただしい年末が今年もやって来たが、一番の楽しみはウイングマンだな」
翔花「NOVAちゃんは、セイギピンクこと森本桃子ちゃんのファンなのね」
NOVA「ああ。だから、ドラマでの彼女の扱いがいろいろと残念なんだな。いや、特撮好きのオタク女子というキャラはネタとして悪くないが、原作の「しっかり空気を読んで、健太の秘密をはっきり察する感受性とか、健気なまでのサポート精神とか」ウイングガールズの3番手としてのポジションの取り方が表現されていない点が、がっかりではある」
晶華「ドラマは尺が短いから、アオイさんと美紅ちゃんの三角関係ドラマに焦点が当てられて、そこに桃子ちゃんが入るとややこしくなる、と判断されたっぽいわね」
NOVA「セイギピンクとして、しっかりリーダーをサポートする役割が削除されたり、いつまでも健太の秘密に気づかない鈍感さ(セイギマンの男性メンバーの役回りまで担当か)をドラマで描かれると、これじゃ一般人ポジションと変わらないじゃないか。俺の好きだった桃子ちゃんとは違うなあ、と、その点は不満がある」
晶華「でも、ここで不満をぶちまけても仕方ないんじゃない?」
NOVA「こういう時の俺のすることは一つ。ドラマで描かれていない彼女の裏ストーリーを妄想創作して、SSを書く。とりわけ、昨夜の放送(7話)での桃子の扱いが残念でならない」
翔花「どの点が?」
NOVA「ウイングマンの変身と戦闘を目撃した布沢久美子と森本桃子、福本と松岡先生という構図だが、全員まとめてアオイさんのディメンションパワーで記憶消去された。後ろ2人は納得だが、ウイングガールの2人がここで記憶を消されると、原作と話が違って来るんだよ。原作では、ザシーバ戦でウイングガールズ結成だし、桃子ちゃんなんてティール戦の時にはウイングマンのバトルに参加していたガールズのナンバー2ポジションなんだからさ」
晶華「全国のウイングガールズ森本桃子ファンは涙しているかもね」
NOVA「まあ、令和のこのタイミングで、ウイングマンがリアルタイムの特撮ネタとして話題に上げられる時点で嬉しいし、メインストーリーや特撮アクションとしては、しっかり原作のエッセンスをくみ取って、坂本監督やスタッフ、キャストもみんな良い仕事をしてるなあ、と楽しめているんだ。不平不満なんて一言も言いたくないし、9割ほめて、1割の瑕疵はまあ仕方ないかなあ、と大らかな心で受け止めたいんだ」
翔花「でも、それができないと?」
NOVA「俺の中のセイギピンク=森本桃子ラブ魂が、思っていたよりも強かったようだ。この心の中の❤️をぶちまけないと収まらないモードになっている」
翔花「ネーミング的には、森と桃で植物系なのよね。だったら、もしかすると、NOVAちゃんの彼女への愛のエッセンスが、花粉症ガールに混ざっている可能性もあったりする?」
NOVA「可能性は皆無とは言わんが、花粉症ガール設定を考えたときにセイギピンクは全く意識していないからなあ。ただ、アニメ版の桃子の声優は、山本百合子さんなんだ。スパロボ的には、アイドルの美森くるみ=堀江美都子を除くと、彼女が一番の出世頭と思える。ダンクーガの結城沙羅やイクサー1だし、北斗の拳のユリアだし、聖闘士星矢の魔鈴さんだし、ハーロックのラ・ミーメだし、リメイク版の魔法使いサリーだし、1話だけだが必殺仕事人71話にも出ていて、81年のサンディベルで声優デビューする前は、歌手や女優としても活動していたそうだ」
晶華「ガールズの他の声優さんは、こんなところね」
NOVA「アオイさんは、ゴッドマーズの日向ミカ(コスモクラッシャー隊の女性隊員)とボトムズのココナか。主役格ではないが、その後、ドラゴンボールのブルマの母とか、リメイク版のドクタースランプの山吹みどり先生を演ってたんだな。
「美紅ちゃんは、とんがり帽子のメモルで主演。その後、ドラゴンボールのプーアルや2代目のチチ、ちびまる子ちゃんのたまちゃん、星矢の幼馴染の美穂ちゃん、吸血姫美夕など。
「久美子ちゃんは、ドクタースランプのガッちゃんが一番耳に馴染みがある。笑ったのが、ハーロックのラ・ミーメの偽者の声を演ったそうだ。つまり、桃子ちゃんの偽者が久美子ちゃんという声優つながりネタがあるわけだな。他には、一休さんの小僧の一人の哲梅さんだ」
晶華「そんなキャラ、言われても分からないわよ。今の令和の若者に分かるキャラで説明してよ」
NOVA「とは言っても、アニメのウイングマンが1984年の作品だからな。声優さんの多くも、とっくに還暦越えだ」
翔花「主演の広野健太くんは、堀川亮さんだから、ドラゴンボールのベジータさんの声ってことで、今も有名よね」
NOVA「コナンの服部平次の声でも長年続けているし、世代を越えて知られた声だな。俺にとっては、アンドロメダ瞬とガンダム0083のコウ・ウラキだ。……って、それよりも桃子ちゃんの話をさせろ」
晶華「はいはい。アシスタントガールとして、仕方なく聞いてあげるわ。ドラマではセイギピンクになれなかった、アクション演劇部の特オタ娘、森本桃子さんの話をね」
NOVA「いや、話したいのは、原作マンガ版の話なんだが」
原作コミックの桃子とヒロインたち
NOVA「まず、ウイングマンのメインヒロインは、美紅説とアオイ説の2つがあって、一般人代表の美紅と、異世界人代表のアオイということだが、保護対象は美紅ちゃんで、共に戦う年上パートナーであり非現実への誘う役としてのアオイという構図があったんだが、健太にとってのヒロインは美紅で、アオイは最初に従姉という設定にしたために『年上の頼れるお姉さん』というポジションになったんだな」
翔花「アオイさんにとっての健太くんは、ケン坊呼びからも分かるように、弟分ね」
NOVA「健太にとってのアオイは、ヒーローへの入り口であり、夢と非現実の象徴であり、小悪魔的な誘惑者でもある。でも、ヒーローの夢を叶えてくれた恩人でもあり、自分が強くなれるように導いてくれるコーチ役でもあり、中学生の子にとっては家庭教師のお姉さん的なポジション。まあ、従姉のアオイさんという設定なので、恋愛対象ではなかったんだけど、アオイの方が男として強く成長する健太を見守るうちに、無意識下の恋愛感情が生まれ、そのことにはっきり気付いたのが、ナァス編ということになる」
晶華「あれ? 桃子ちゃんの話をしたいんじゃなかったの?」
NOVA「いや、そうなんだが、話を整理するためには、まずアオイの役割を確認しておかないといけないからな」
翔花「ウイングマンの夢と、アオイさんというのは不可分の関係なのね」
NOVA「で、最終的には健太とアオイは結ばれることなく、別れることになるのは原作もアニメも同じなんだが、健太の夢の象徴がアオイで、現実の象徴が美紅ということになる。アオイと出会う前に、健太は保健室で美紅と出会い、生まれて初めて恋に落ちるわけだよ。だから、ヒーローの夢を選ぶか、真面目な美紅ちゃんに嫌われないよう現実を見るかの選択を迫られたところに登場したのがアオイさんという話の構図だ」
晶華「原作の美紅ちゃんが、健太くんのヒーローの夢を受け入れるまでに時間がかかったわけね」
NOVA「最初の単行本では、3巻のティール戦で美紅が健太のチェイングを目撃して、ヒーローとしての戦いを知って、自分の恋愛感情を表明して告白する流れになるわけだな。その辺の序盤の恋愛感情の芽生えから悶々とした悩みと葛藤は、ドラマ版ではバッサリ切り捨てられて、美紅ちゃんは原作の内気さが嘘みたいに、積極的に健太にアプローチをかける。ヒーローの夢もあっさり受け入れ、これでもかとばかりに都合のいい女になって、健太を否定することなく全面肯定するほどだ。
「恋愛ドラマを期待したファンには、少々がっかりだが、特撮ヒーロー物としてのアクションと格好良さが描かれていれば、大筋は外していないだろう、ということで、この点は俺も納得する。じれったい中学生のドラマではなくて、もう少し成熟した高校生って設定もあるわけだし、昭和のヒロイン像と令和のヒロイン像の違いもあるだろう」
翔花「昭和と言っても長いけどね。ここでは、80年代と21世紀の違いで考えてみたら?」
NOVA「80年代は、戦うヒロインというのが少年マンガにも受け入れられた時代だな。その萌芽は70年代に芽生えていて、キューティーハニーとか、モモレンジャーとか、お色気お姉さんと戦闘ヒロインの系譜はいろいろ語られる。アオイはその系譜に位置付けられるヒロインで、うる星やつらのラムちゃんの影響も当然あるだろう。最初から超能力を持っていて、主人公の日常生活を翻弄する色気美女の系譜に挙げられる。一方で、美紅は従来の守られるヒロインだな」
晶華「桃子ちゃんは?」
NOVA「戦隊ヒロインがモデルだから、戦うヒロインの系譜にあるけど、アオイがお姉さん役だから、桃子はリーダーの健太をサポートするチームのサブキャラ。ドラマでは、美紅がアオイよりも桃子に嫉妬というか、対抗意識を示しているのが特徴。原作では、桃子が空気を読めるので、健太と美紅の関係の邪魔はしない。むしろ、内気な美紅の想いを察して、さりげなく応援してくれるぐらいだ。桃子は活発だけど、人を押しのけてポジションを奪うとか、他人に嫉妬するような了見の狭さは持っていない」
翔花「ドラマの桃子ちゃんは、オタク特有の空気の読めなさを発揮しまくっているよね」
NOVA「原作は隠れオタクだったけど、令和の時代では隠れる必要がなくなったというか。隠れ特撮オタクだった桃子(当時はオタクという言葉はなかったけど)が、『隠れることなく、自分の好きなヒーロー愛を表明し、しかも実は真のヒーローだったという健太』に心酔し、ヒーロー教の信徒みたいに一途に純粋にサポートしている節があるな。しかも、アオイが健太のことを好きだっていう気持ちまで、アオイ本人が気づいていないうちから察しているし」
アオイ「桃子ちゃんも大変ね。ケン坊はいつでも美紅ちゃんに夢中だし」
桃子「そういうアオイさんだって……」
アオイ「私? 私はただの従姉だし、ケン坊は年上好みじゃないみたいだし……」
桃子「年上って?(アオイが本当は中学生ではなくて、16才だと知らない)」
アオイ「いや、それは……(適当にごまかす)」
NOVA「こんな感じのアオイとのやりとりが原作にはあったんだが、ヒーローショーのエピソードで、桃子は健太とアオイの戦いが現実だと知って、自分も健太のために戦いに参加したいという気持ちをアオイに訴えるんだ。ウイングマンの変身やアオイの超能力の鍵が、健太ではなくてアオイにあることを察して、アオイに自分も超能力を使えるようにして欲しいと頼む。その動機として、健太への恋愛感情を表明するんだな」
晶華「ドラマでは、桃子ちゃんの健太へのラブ感情が完全に割愛されているわね」
NOVA「ただのヒーロー好きの後輩女子でしかなくなっているよな。原作では、美紅と健太の相思相愛が実った後、三角関係ドラマを盛り上げるために桃子ちゃんを導入したんだろうけど、桃子ちゃんが意地悪な娘ではなく、しかもアオイの心情まで察する役回りを担ったものだから、アオイが桃子の恋心に当てられて、健太への想いを自覚する契機となる」
翔花「恋愛感情が感染していくのね」
NOVA「恋愛ドラマって、多かれ少なかれそういう傾向があるな。誰かが誰かを好きだって恋バナが伝わると、自分の気持ちなんかを意識し始めて、自分の中の恋心に自覚的になるとか」
晶華「恋バナだけじゃなくて、趣味バナもそうでしょ?」
NOVA「と言うと?」
晶華「NOVAちゃんが、桃子ちゃん❤️と話したら、これを読んだ読者さんが共感して、自分も桃子ちゃんが好きでしたとか思ったり、自分はドラマ版の美紅ちゃんがいいですと違う意見を述べたり、どうしてドラマには美森くるみが出ないんだと不満がったり、ザシーバが化けていた水野麗さんが好きだったのに黒津さんなんてキャラに変わって、しかも出番が少ないとか思ってるファンの感情を刺激したりしない?」
NOVA「いや、美森くるみはともかく、水野麗さんにそこまでの愛着を持っているウイングマンのファンは珍しいと思うが。それより、黒津さんだよ。桃子の紹介でアクション演劇部に参加したのに、あっさり行方不明になるなんて、桃子的にはどんな気持ちになるか」
翔花「そもそも黒津って知り合いの存在も、ザシーバさんがディメンションパワーで記憶を植え付けたんじゃないの? だから元々、黒津って友だちはいなかったんだし、いなくなっても桃子ちゃんは気にしないんじゃないかな」
晶華「グリッドマンのアニメで、最初から友人がいなかったことにされていて、グリッドマン同盟のメンバーだけが消えた友人のことを覚えているとか、そんな感じ?」
NOVA「まあ、教育実習生とか、侵入してきた刺客の新入部員とか、昔馴染みのフィアンセとか、次から次へとゲストキャラが学校にやって来て、尺の都合であっさり倒されて余韻を感じる間もなく、次のエピソードに切り替わるスピード展開に、俺の情緒面が付いて行けなくなっている感じかな。もう少し溜めが欲しいというか、エピソードの切り替わりに間が欲しいというか」
晶華「Aパートでバトルと事件解決。Bパートで新たな事件発生で続く連続ドラマ仕様だからね。1話完結というか、今回のザシーバ編は1.5話完結?」
NOVA「6話と7話の前半がそうか。でも、こういう話だったら、黒津さんに化ける必要が薄かったな。その話のうちで、あっさり正体バラしているので隠れ蓑を装う意味がまるでないとか」
翔花「その辺は、原作要素を少しでも拾うためと、ゲスト女優さんでの話題作りのためじゃない?」
NOVA「まあ、ザシーバはその前の幹部のシャフトの役割まで兼任した形だが、わずか1.5話で退場するとは思わなかった。もう少しドラマオリジナルで、キータクラーのライバル幹部として暗躍するものと思っていたが」
晶華「NOVAちゃん、そんなにザシーバさんが好きだったの?」
NOVA「いや、ザシーバじゃなくて、声優の戸松遥さんの方だな」
翔花「グレンダイザーUの双子王女さまね」
NOVA「そう言えば、テロンナとルビーナの一人二役の戸松劇場を経て、ザシーバにつながるのか。俺的にはヴァルヴレイヴのサキさんと、キュアフォーチュンと、喜びの戦騎キャンデリラ様だが、他にもソードアートとか妖怪ウォッチとか、数多くの人気作品で主演もしくはメインヒロインを担当したりもしている。ちょっと声優の無駄使いに終わったな、と思われるのが今回のザシーバさんだ」
晶華「NOVAちゃんとしては、もう少し暗躍タイムが欲しかった、と」
NOVA「アクション重視で、尺が短いので、暗躍ドラマの溜めが短いのが残念仕様だが、それも仕方ないか。ドラマでは『ポドリムス人には想像力が足りない』とはっきりセリフで語られていて、原作コミックみたいな狡猾な作戦は考えられないことを言い訳している。つまり、せっかくの暗躍状態を活かして潜伏し続けるほどの想像力がなくて、少し優位に立ったら、すぐに調子に乗ってベラベラ喋り出す頭の悪さを露呈しているわけだ」
翔花「それって、特撮ものの敵あるあるじゃない? ウイングマンに限った話じゃなくて」
NOVA「いや、敵の全てがそうじゃないだろう? ゲスト怪人は頭が悪いが、幹部クラスだともっと慎重に狡猾に立ち回る。ウイングマンの場合は、尺の都合で幹部クラスの狡猾なキャラまでもが、ゲスト怪人みたいな頭の悪さをさらして、溜めもなくあっさり倒されるのが残念でな。とりわけ、原作ザシーバはなかなか正体を明らかにせず、アイドル美森くるみのマネージャー水野麗として、得意の幻覚攻撃と予知能力と遠隔操作で狡猾に立ち回ったキャラなのに、ドラマでは呆気なく倒されたなあ、と」
晶華「ところで、NOVAちゃんが語りたいのは、ザシーバさんなの? 桃子ちゃんじゃなくて?」
NOVA「ああ、もちろん、桃子ちゃんだよ。ザシーバなんて、戸松遥声じゃなければ、気にかけることはないはずだったのに、やはり声優さん効果は大きい。他の関連キャラへの愛着まで引きずられてくる。まるで、ザシーバがメインヒロインみたいな幻覚攻撃を受けてしまっていたや」
改めて桃子ちゃんと時代の変化
NOVA「で、桃子ちゃんの一番の魅力は、セイギマンやガールズのムードメーカーであり、チームの和を何よりも大切にするサポートヒロインってことだ。とにかく、劇中の立ち回り方が明るくて、しかも『リーダーには美紅ちゃんがいるから』と言って、自分の恋心はしっかり秘めたまま、気づかいをしっかり示す友だちにしたい女子ナンバーワンってところだな」
翔花「だったら、ドラマ版の特撮オタク桃子ちゃんは?」
NOVA「昭和と令和とじゃ、特撮好きの立場が違うよなあ、と感じた。昭和時代は、特撮ヒーローって子どもの番組で、中学生になったら卒業して当たり前って時代だった。大人向きの特撮なんてものがアメリカの『スターウォーズ』以降は模索されていて、先にガンダムなどのミリタリー系ロボアニメや、『うる星やつら』などのSFラブコメが年長の若者の間でアニメブームとして語られるようになった時代。
「アニメに比べて、特撮ヒーローは児童向け、そこからアクションの多い時代劇もしくは刑事ドラマ、角川映画、大映ドラマなどに流れる実写導線があって、変身ヒーローから卒業して、変身しないアクション物に移るのが中高生の世界だな。その中でJACの千葉真一や真田広之といったアクションスターが特撮ヒーローにも出演して、『宇宙刑事ギャバン』やら『超新星バイオマン』やら80年代前半には特撮アクションのレベルも大きく上がる。
「体を張ったスポ根演出の目立つ泥臭い70年代に比べて、80年代のアクションは派手なワイヤーワークやら、技巧に富んだ機敏な動きなど芸術度の増した形に洗練されていく。90年代はリアリズム方面とファンタジー方面に二分化して行くんだが、80年代はカットを割らずに長尺の立ち回りで流れるようなアクションを見せたり、撮影技術の向上もあって、とにかく映像で合成したときの見せ方が力強さと美しさを合わせ持っている。その頂点がメタルヒーローだが、戦隊ヒーローのチームとしてのアクションも秀逸なものがある。だから、子ども向きドラマという目でなく、アクション活劇という意味では頂点に達しているのが80年代と言っていい」
晶華「90年代は?」
NOVA「ドラマ面での進化が著しくて主流になったから、アクションが従になった印象がある。アクションで魅せることよりも、ストーリーで魅せるように作劇レベルが向上したから、アクションだけを切り取ると、80年代よりも退化したというか、凄いアクションは毎週のTV放送よりも、ビデオ作品の方が主流となって、TV放送の番組だけを比べると90年代は格が下がったというか、80年代のTVでどこまで凄いアクションができるかというチャレンジ精神が失われたと思う。80年代は、前の作品よりも凄いものを作ろうって意識が濃かったんだろうけど、90年代はアクションよりもドラマでの面白さを追求したから、アクション演出は二番煎じ、三番煎じの焼き直しとなる」
翔花「でも、この時期はゴジラ映画やガメラ映画が凄いレベルのSFXを魅せているのよね」
NOVA「光学合成とかの発展が凄いよな。ライブアクションのTV番組と違って、劇場映画は予算が全然違うのも大きいが、時流が役者の体を張ったアクションではなく、ミニチュアとかスーツギミックとか機械的な凄さ、そして合成技術とかカット割りとかの撮影手法の進化が凄いのであって、その後、CGとかの発展につながるのだが、TVのヒーロー物ではまた違うアクションを見せるようになる」
晶華「何?」
NOVA「それまではアクションシーンとドラマシーンは別で、脚本などでもドラマは細かくセリフを書くが、アクション場面は省略されて、以降は現場にお任せします、という流れが主流だったのが、アクションとドラマの融合が模索されて、スタントマンにもドラマの訴求に応じられる演技力が求められるようになったのが世紀末からの大筋だ。アギト以降の平成ライダーに顕著だが、戦闘中にも頻繁に会話のやり取りが為されて、戦闘シーンとドラマシーンがシームレスにつながるのが昭和のヒーローとの大きな違いか、と」
翔花「ウイングマンもそうじゃない?」
NOVA「今の特撮だからな。80年代のコミックやアニメで定番だったアクションとドラマのシームレス化は、当時の実写特撮では難しかったと思う。CGの発展もあるが、1話完結ものとしてのスタイルとか、アクション班と本編班の撮影体制の違いとかもあって、今のウイングマンがその辺を上手くやっているのは、坂本監督がアクション監督と本編監督を兼任しているからだろうし、80年代当時からの撮影体制の変化をあれこれ考えると、80年代だからこそ撮れた作品と、今の時代だからこそ撮れる作品の違いがあって、どちらが良いかは世代感覚も含めた個人の好みの問題が大きいかな、と」
晶華「で、アクションの違いはともかく、特撮オタクの桃子ちゃんは今の時代だからああなった、ということね」
NOVA「特撮好きの女の子というのが、普通に市民権を得ている世代だからな。布沢さんのスマホ撮影もそうだが、学校にカメラを持ち運んでいる時点で、彼女は変人なんだよ。でも、新聞部という名目で許されているし、原作の布沢さんは普通に変人だ。彼女が登場すると、『ゲッ、布沢久美子』とリアクションされたりもするぐらい、健太とは別方向で変人というキャラ立てが行われている。
「一方、アオイも美紅も桃子も自分を隠して生きている面がある。健太はヒーロー好きの自分は隠さずに生きているが、アオイは元よりポドリムス人なので3次元では擬態して生きているし、美紅は自己主張が苦手な内気少女で、桃子はヒーロー好きだと隠していた。それが自分の好きを隠さず正直に生きている健太に惹かれたり、サポートしたくなるのが原作だが、ドラマでは美紅も桃子も、自分を隠すことはあまりしていない。アオイは、だから原作以上にストレスを溜め込んでいるし、意外にも原作では自分を隠さずにいた布沢さんが、世界の真理に気づいたのに誰も信じてくれないサスペンスドラマの登場人物みたいになっている」
翔花「そう言えば、布沢さん、周りが記憶を消されているのに、自分だけ記憶を取り戻して、怪物とヒーローの戦いを目撃してしまったなんて、ちょっと怖いかも」
NOVA「原作では、健太に直接、問い詰めたりしているのに、ドラマではそういうアクションに出ないんだな。ややコミュ障気味で、原作の陽キャラぶりがまるで美紅と入れ替わっているような趣だ。一番近いのが、ファイズの野座間友子みたいなキャラになって来た」
晶華「ああ。他人の秘密はコソコソ探るけど、直接のインタビューはしないというキャラ?」
NOVA「コミュ障な記者なんて、80年代には考えにくかったけど、令和だとそれもありなのかな、と考える次第」
翔花「ところで、桃子ちゃんの話じゃなくて、布沢さんの話にズレて来てない?」
NOVA「あっ」
晶華「別の女に気が移るなんて、NOVAちゃんの桃子愛も大したことはないよね」
NOVA「いや、ドラマの桃子ちゃんは何というか、原作のサポート気質が弱くて、自分の好きなヒーロー話を弾ませているだけで、俺好みじゃなくなって来たな、と言いたいわけだ」
翔花「サポート気質が弱くて、自分の好きなヒーロー話を弾ませているだけ……って、今のNOVAちゃんそのものじゃない?」
NOVA「ああ、オタクってそういうものかもしれないなあ。令和は84年頃と比べても、特撮オタクの解像度が世の中で上がったから、桃子ちゃんもそういうキャラになってしまったのか。でも、女版健太とか言われて、鈍感力まで発揮しているのに、自分ではヒロインに変身できないなんて、残念じゃない? セイギピンクじゃなくなることで、大切な何かをいろいろ失ったと思うんだ」
晶華「つまり、ドラマ版は学園戦隊セイギマンが存在しなくなった時間軸ってことで、セイギマンのブルー、グリーン、イエローの3人を取り戻さないと、あの世界は滅びてしまうのよ」
NOVA「何? すると、最終回では、森本桃子がセイギピンクだった自分を再発見して、真の自分の世界を見出す話だというのか!?」
翔花「ウイングマンの世界から、セイギマンが消えた結果、ウイングガールズが結成されないまま、日本がリメルに支配されてしまうのよ。バッドエンド」
NOVA「セイギマンが勝利の鍵だとは気付かなかったな。だったらウイナアもそうじゃないか? 健太がアオイといっしょにポドリムスに行かなかったから、歴史が変わったとか?」
晶華「ドラマ版で割愛されたもので残念会を開くってのもありね」
NOVA「セイギマンに、ウイナア=ウイナルドに、シャフトと配下のシードマン、あとはドリムカセットかあ。第2シーズンに出たりしないかなあ」
さらなる桃子ちゃん話
NOVA「どうも、的が定まっていないが、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。桃子ちゃん目掛けて、愛の思い出話をなおも語るぞ」
晶華「じゃあ、NOVAちゃんが桃子ちゃんの好きなエピソードを3つ挙げてください」
NOVA「1つはバレンタインの話だな。桃子ちゃんが健太にチョコレートを用意するんだけど、美紅ちゃんに遠慮して結局、あげられないんだ。でも、夢の中でチョコを渡すという少し切ない話。実は、桃子ちゃんは作者のお気に入りっぽくて、作中唯一、小学生バージョンと大人バージョンが描かれたり、自宅でシャワーを浴びてるシーンが描かれている。健太との出会いは、小学生の時に愛犬あいしー*1が交通事故に遭った際に助けてくれたのが健太だったというエピソードがあって、そこからの憧れの対象だったらしい」
翔花「つまり、美紅ちゃんやアオイさんよりも先に、健太くんに遭っているってこと?」
NOVA「そういうことみたいだな。だけど、告白する勇気を持てない間に、健太が先に美紅ちゃんと恋人関係になったために失恋して、それでも自分の想いを秘めたまま、健太のサポートばかりか、アオイや美紅のサポートもして、敵の陰謀で2人が健太と疎遠になった際も、決して出し抜こうとかそんなことは考えずに、チームの和を誰よりも重んじる面がある。トラブルメーカーになりがちな布沢さんと違って、これ以上ないぐらいのできた娘だ」
晶華「ウイングマンは、今で言うところのハーレム物っぽいわね」
NOVA「まあ、うる星やつらを意識したのは間違いないだろうけど、それをもっと大人向きのシリアス路線にしたら、シティハンターになるのかもしれない。さておき、ドラマでは美紅ちゃんの内気さがなくなって、積極的に振る舞うように改変されたために、桃子ちゃんが美紅ちゃんをサポートする必要もなくなって、チームでの今後の役割が見えなくなっているが、原作ではアオイさんに次ぐお色気要員というか、アクション中に不幸な事故にあって、イヤーンと恥ずかしがるのは桃子ちゃんの役割だったり」
翔花「どういうこと?」
NOVA「桃子絡みで、いろいろラッキースケベな事態が起こるってことだ。薄い本絡みのネタになりそうなシーンで、スカートがめくれたり、戦闘中に服が破れたり(とりわけディメンションスーツになる前のセイギピンクのスーツでの破損率高し)、さすがに今の時代に映像化するのはセクハラ的な描写が連発していた。それがますますエスカレートしたのが、リメルを倒した後の第2部、ライエル編なんだが」
晶華「ライエル編はアニメにもなっていないので、原作ファンが待望しているそうね」
NOVA「どちらかと言えば、実写ドラマよりもアニメで比較的原作に忠実なものを、ということだが、まあ、当時のヒーローネタとかエロネタで再現しにくいものを削ったりしつつ。まあ、エロネタと言っても、バスタードほどではないのだし、あっちが行けるなら、ウイングマンは十分健全だ。で、桃子の注目点はライエル編の第1エピソードになる」
翔花「どんな話?」
NOVA「宇宙からの侵略者がライエルで、暗躍して3次元人奴隷化計画を目論むリメルに対して、こちらは地球人殲滅計画を立てて、より大規模な作戦を立てて来る。最初の怪人コウモリプラスはいわゆる吸血鬼で、地球人を吸血人間にして奴隷化作戦を展開したんだが、最初は加減が分からず、血を吸いすぎて殺害してしまう」
晶華「リメル編では、騒動になってもヒーローショーとか映画の撮影と認識されて、人殺しまでは発展しなかったものね」
NOVA「暗躍心理戦の多いリメル編に比べて、ライエル編はもっと過激にストレートな侵略活動だな。その中で初の成功した吸血人間第1号が桃子ちゃんなんだ」
晶華「NOVAちゃんの吸血鬼好きもその辺から影響されてる?」
NOVA「いや、ルーツはもっと前からだと思うけど、吸血鬼話に最初に金を出したのは、ウイングマン9巻だ。リメル編からライエル編に切り替わる巻。表紙はライエル編の敵女幹部のヴィムだな」
NOVA「ヴィムも色気美人で、悪女萌え属性を刺激したが、それはさておきコウモリプラスに吸血人間にされた桃子ちゃんは色仕掛けで、セイギマンのイエローの血を吸って、そのイエローが美紅ちゃんを毒牙に掛けたりして、学園が吸血人間だらけにされてしまう。結果的に、アオイさんを除くガールズが全滅したりして、健太も美紅ちゃんに血を吸われそうになったところを、アオイさんのポドリアルスペースで難を逃れるわけだ。とにかく、吸血鬼化した桃子ちゃんや美紅ちゃんの妖艶さが中学時代の俺の何かを刺激したのは間違いない」
晶華「悪堕ち属性とか、吸血鬼属性とか、私にも当事者として心当たりはあるけど、結局、ウルトロピカルのアナちゃんにそういう闇属性を押しつけて、私は太陽サンサンに舞い戻ったわけね」
NOVA「さすがに悪堕ちした状態が日常だと、ブログ記事としてはキツいからな。悪堕ちはヒーロー好きのスパイスみたいなもので、悪堕ちしてゴールだと2次エロ妄想のネタになってしまう。それしか記事書きできないと不自由だ。悪堕ちネタは、たまにやるから萌えるのであって、それしかネタがないのも飽きる。悪堕ち好きは俺の趣味のせいぜい1割あるかないかであって、悪堕ち100%のブログを作るつもりはない。そういうサイト主さんやブログ主さんは、素直に尊敬申し上げ、応援しているけどな」
翔花「でも、自分の娘が悪堕ちすると、嫌がるわけね」
NOVA「そりゃ、父親としてイヤだろう。せいぜい反抗期ぐらいにして欲しいわけで」
晶華「とにかく、桃子ちゃんは、NOVAちゃんのエロ妄想と悪堕ち妄想を適度に満たしてくれたヒロインってことね」
NOVA「そう言われると、う〜ん、と否定したくもなるが、否定しきれないのも事実なので、もう少し補足すると、桃子ちゃんは元々、寡黙なキャラだったんだ。だけど、ヒーローアクション部でセイギピンクの役割を演じることで、積極性を獲得した。だから、その立ち位置を崩したくないんだ。元来の桃子ちゃんは、きっと美紅ちゃんに負けず劣らず、内気でシャイで大人しい娘なんだろうけど、そういう娘が健太に憧れて、勇気をもらったり、成長する……という想像が浮かび上がる。もちろん、そういう健気な娘が、敵怪人の毒牙で怪物化するのもギャップ萌えがある。一方で、美紅ちゃんにはギャップ萌えがあまりないんだよな」
翔花「そうなの?」
NOVA「ティールの変身した偽美紅はギャップ萌えに通じるが、ドラマではそのギャップがいまいちだったな。と言うのも、美紅ちゃんの内気でおとなしいという属性が、恋愛アピール旺盛な形に置き換わって、まるで別キャラだから。恥ずかしがりで恋の告白なんてできそうにない娘が、偽者の挑発に煽られて、意を決して告白するいじらしさが至高なのに、ドラマではアクション演劇部に誘われて、ノリノリで参加している時点で、いじらしさの欠片もない」
晶華「でも、桃子ちゃんに対抗するために、宇宙刑事ギャバンを履修して、次は? と貪欲に吸収しようとする美紅ちゃんっていじらしくない?」
NOVA「で、次のネタとして、ジェットマンを勧める健太も健太だ。いきなり、それかよ。井上敏樹方面に進むと、悪女街道に突入しかねん」
翔花「たぶん、恋愛関係で話がこじれるナアス編つながりだと思うけど、勧めるならやはりドンブラよね」
NOVA「それはそれで問題が大アリだろうが。いきなり変化球を勧めるなって話だ。ここはじっくり新体操つながりでゴーグルファイブか、ギャバンつながりでゴーカイジャーとか、ギャバンの続きのシャリバンってところだろう」
晶華「って、美紅ちゃんに次は何を勧めるかの話じゃなくて、桃子ちゃんの話でしょ?」
NOVA「桃子ちゃんは、健太が勧めなくても、勝手に見て、話を合わせて来るからな。わざわざ育成する必要はない。あれは最初から完成されているから、放っておいても特オタだ。さらに進化させるなら、それこそセイギピンクのコスプレをさせてだな〜」
翔花「まあ、最終回辺りでコスプレ姿を見せるだけでも、ファンの人は喝采しそうだけど」
NOVA「1期のラストで、布沢さんがウイングガールズを提唱するだけでも、2期への期待が爆上しそうだしな。ともかく、令和の桃子ちゃんがいかに唯の一般人オタク娘から、本当のヒロインのセイギピンクもしくはウイングガールズに昇格するかが、この番組のポイントだな。そう、まるで『まどマギ』や『ウルトラマンネクサス』の主人公が、最終局面になってようやく変身したように、桃子ちゃんが真のヒロインとして覚醒するまでの物語なんだ、実写版ウイングマンは」
晶華「そんなことを考えているファンは、NOVAちゃんぐらいだと思うけど?」
NOVA「いや、日本中探せば、あと3人ぐらい同志がいるかもしれないだろう?」
晶華「日本中で3人とか4人じゃ、少ないと思うけど」
翔花「大体、メガネンジャー司令だったら、ここはメガネガールの布沢久美子さんをプッシュすべきじゃない? ドンブラ10話のオニシスター候補なんだし」
NOVA「まあ、布沢さんは俺が別にプッシュしなくても、ドラマで普通に活躍しそうだからなあ。キータクラー先生も、わざわざ彼女の記憶だけ戻してあげるってことは、何か役割を与えようって腹だし。9話辺りで、布沢さんがドラマのオリジナル展開でスポットが当たると見ているんだ。それに比べて、桃子ちゃんはなあ。一般人ポジションから脱却する兆しさえ見えない」
翔花「でも、彼女がセイギピンクのコスプレをしたら、たぶん美紅ちゃんが目立たなくなってしまうと思うの。今回はアオイさんと美紅ちゃんに焦点を当てて、ウイングガールズは次のシーズンの楽しみにとっておくと思えばいいんじゃない?」
NOVA「そうだな。大体、桃子ちゃんはセイギピンクとウイングガールズの2フォーム持ちで恵まれたヒロインなんだし、今回はサポート役に徹して、特オタ話に専念するだけでも良しとするか。役者の娘もドラマ初出演だし、これから経験を積んで、可愛い桃子を演じてくれたらOKとしよう」
(当記事 完)