また一人……
NOVA「先月、ここで菊池俊輔さんの追悼記事を書いたんだが、今回は小林亜星さんの訃報を聞いて、哀しく感じている俺がいる」
晶華「小林亜星さんって誰?」
NOVA「貴様、亜星さんのことを知らないなんて、それでも俺の娘か!」
晶華「ふえーん、娘だよ(涙目)。だって、まだ3歳の私が知るわけないじゃない」
009『いや、ここでアシスタントガールを務める以上は、知っていて当然だろう』
ケイPマーク1『ナイン君の言うとおりだッピ。いくら晶華ママでも、亜星さんのことを知らないなんて、世間から知力が疑われるッピよ』
晶華「ええ? そんなに重要な人なの? あっ、そうだ。お姉ちゃんなら私の味方のはずよね。3歳だったら、亜星さんのことを知らなくても許されるわよね」
翔花「何を言っているの、アキちゃん。花粉症ガールである以上は、亜星さまを知らないなんて、恥さらしもいいところだわ。そこまで無知を誇って楽しいの? 世間の常識を知らないなんて、恥を知りなさい、恥を」
晶華「嘘!? お姉ちゃんまで知っているなんて。もしかして、亜星さんを知らなかったのは本当に私だけ? 何だか世界中を敵に回した気分よ」
翔花「大体、あなたはわたしが何も知らないバカのように思っているみたいだけど、こう見えても時を翔ける精霊少女として、いっぱい勉強したんだからね。ここに引きこもっているあなたよりも余程、外の世界のことは詳しいつもりよ。悔しかったら、あなたも修行の旅に出てらっしゃい」
晶華「ふえーん。私だって、未来の世界に飛ばされて、過酷な生活を送っていた時期があるのに〜。その時の暗い記憶は、バットクイーンこと今のダイアンナちゃんが持って行ったから、あまり覚えていないんだけど、引きこもり扱いは酷いわ」
NOVA「引きこもりで世間知が少なくても、それで無知の言い訳にはならんぞ。隠者みたいな生活を送っていても、知識への探究心、好奇心があれば、本の世界で、そしてインターネットの世界で勉強はできる。少なくとも俺のフォローをしようと思えば、俺のブログを読んでしっかり勉強する必要はあるだろうな。最近、勉強を怠っているんじゃないか?」
晶華「そんなことを言っても、NOVAちゃんは亜星さんの話をしたことはないじゃない?」
NOVA「あるぞ。この記事でな」
ケイP『亜星さんの誕生日は、8月11日、すなわち山の日にして、ドゴラの日。だから、オラにとっては縁深い人と思っていたッピよ』
NOVA「ああ。俺にとって、亜星さんもまた思い出深い曲をいろいろ遺してくれた人だからな。その時に書いたことを再録すると、こんな内容だ」
作曲だと、亜星さんには、いろいろ影響を受けたな。
伊福部昭さんや、渡辺宙明さん、菊池俊輔さんの曲は、大体、耳にしたらすぐに判別できるんだけど、亜星さんの場合は、これが特徴だというところが、自分には分からなくて、え、この曲も亜星さん? ってなることが多い。
あまり自分のスタイルを固めずに、ジャンルごとに合わせて、器用にマルチに処理していける人なんだろうな。ガッチャマンとコンVでも全然違うし、そこに魔法使いサリーとか、ドロロンえん魔くんとか、ターンAターンとか加えても、この人ならではの曲の特徴とか、俺には分からない。ヴァリエーションが豊かすぎるでしょ、と。
日立の「この木なんの木」とか、裸の大将の「野に咲く花のように」とか、「ピンポンパン体操」なんかもこの人で、とにかく、いろいろやってるんだなあ、としか言いようがない。
役者としても、寺内貫太郎で有名だし、サンバルカンのバルパンサーの父親役として、戦闘員相手に暴れるシーンも印象的だ。
あとは、クイズ番組の「ヒントでピント」の男性軍リーダーとして、博識ぶりを披露したのも印象的。自分にとってのクイズ王は、この人か、「クイズダービー」のはらたいらさんって感じだな。
この人のマルチタレントぶりは、下記のオフィシャルサイトでも分かるので、興味があればどうぞ。
http://www.remus.dti.ne.jp/~astro/asei/index.html
NOVA「これで粗方、 言いたいことは言い尽くしているとも思うんだが、追悼記事として、他に何が書けるかな」
翔花「わたしに任せて。時を翔ける精霊少女として、この人の曲は過去にいろいろ聞いたんだから、きちんと想いを乗せて言葉に紡いでみせるわ」
晶華「私も一応は時を翔けたんだけど、未来には亜星さんがいなかったものね。故人を偲ぶためには過去を知らないといけない。だけど、太陽戦隊のバルパンサーのお父さまということであれば、太陽サンサンをキャッチフレーズに使う私が知らなくていいとは思わない。この機に、しっかり学ばせてもらうわ」
大自然の歌
翔花「亜星さまって、いろいろなCMソングを作ってきた人なのよね。その中でも、花粉症ガールとしては、この歌を一推しにするわ」
晶華「へえ、何だか優しくて、元気になれるような曲調ね。歌詞もいいけど、それを引き立てるようなリズム感があっていいわ。もしも、花粉症ガールの物語がアニメ化されるなら、是非とも主題歌の曲をお願いしたいところだけど、その夢はもう叶わないのね(涙目)」
NOVA「アニメ化は妄想としても、本当に惜しい人を亡くしたと思うよ。この歌もそうだしな」
NOVA「亜星さんのCMソング集はこれか」
ケイP『ドラマ主題歌はこれだッピ』
009『でも、このブログで一番推すのはこっちだろう?』
NOVA「そうだな。そして、花粉症ガールっぽい歌だと、これになるか」
NOVA「ルンルンのEDの男性声は、亜星さん自身だからな。その意味でも、アニメのこの人の代表曲に入れていいと思うんだ」
晶華「へえ。最初はもっと活劇的な歌を入れると思ったけど」
NOVA「いや、世間ではこの人の代表曲として、SFジャンル的にはガッチャマン、魔法少女ジャンル的にはサリーが挙げられるみたいなんだけど、俺的には変化球、かつ、ど真ん中に突き刺さるものを選びたい。すると、アニメ的には何よりもルンルンなんだよ」
翔花「花粉症ガール的には、それが正解ってことね」
晶華「他に、この路線では?」
NOVA「これかな」
NOVA「メモルは、EDだけが亜星さんで、OPは別の人だけど、要するにファンタジーの世界の雰囲気も曲で描ける人なんだよな。怪物くんもそうだし、うちのブログとは結構、相性がいい作曲家なんだ。それと80年代ラブコメだと、これかな」
翔花「だけど意外ね。NOVAちゃんから、ラブコメのネタが出てくるなんて」
NOVA「別に、俺はラブコメが嫌いと言ったことは一度もないんだが? ラブコメは書けない、書いたことがないってだけで、嗜む程度の素養はある。ただ、やはり主人公が硬派を気取る春助だから、かぼちゃワインはOKだって感覚だな。まあ、とりあえず、声優・古川登志夫さんのキャラは当時、ちょっと不良の入った素直になれないひねくれ者って感じで見ていたのが(ガンダムのカイさんとか)、だんだん主人公を張る機会も増えてきたのが、この時期だな。そして、いよいよ俺の得意分野となる」
SFロボットの話
NOVA「主人公の剣の名前が火炎剣で、ケントの行方不明の父親の名前が隼人だったりするなど、セイバーっぽい要素も感じられるが、とりあえず、ダルタニアスも亜星さんだな」
晶華「ここからスパロボ話に突入ね」
NOVA「ああ、追悼記事でこの話題はどうかと思ったが、『スパロボ30』という新作タイトルが発表された」
翔花「亜星さまはコン・バトラーVの人でもあるものね」
晶華「ああ、そうなんだ。だったら、私も亜星さんの作曲に馴染みまくりってことなのね。誰が曲を作ったかは知らなくても、普通に知ってたんだ」
NOVA「そういうことだ。それにこれもな」
NOVA「特定のゴッドシグマ世代は、太陽系の惑星の順番を亜星さんの作った水金地火木土天海冥のメロディーで覚えたことになるので、つまり星の勉強の手助けを文字どおり亜星さんにしてもらったことになるんだ。俺の中学時代のテストの点数の何点かは亜星さんのおかげなわけで、多分、俺と同じような経験をした人は日本中に何人もいることだろう。その点でも、感謝に値する恩人ということになる」
009『つまり、ぼくやあんたが星の名を冠するNOVAなのも、そしてあんたがShinyなのも亜星さんのおかげということだな』
NOVA「そこまで言いきっていいものかは知らないが、今だけはそう言っても構うまい。ともあれ、亜星さんといえば宇宙。宇宙と言えば、これだろう」
晶華「ちょっと、数々のSFスーパーロボットの主題歌を作曲した人じゃない。何で、名前が知られていないのよ?」
NOVA「名前を知らなかったのは、この場ではお前だけだ。まあ、かく言う俺も、この人の曲の特徴をつかんでいるかと言えば、つかんでいない。これが渡辺宙明さんとか菊池俊輔さんだったら、それぞれ宙明節とか菊池節というのがはっきり出ていて、曲を聞くだけで、ああ、それっぽいと分かるんだが、亜星さんは奥ゆかしいというか引き出しが広大というか、求められているものに合わせるのが非常に上手くて、自分を曲にさらけ出さないところがあるんだと思う。だから、後から作曲が亜星さんと知って、え? ああ、そう言われてみれば、そんな感じか、としか言えない。まあ、俺より鋭い人は分かるのかもしれないが」
009『基本的にOPやEDにしかタッチしていなくて、劇伴は別の人なのも分かりにくい点かもしれないな。例えば、初期戦隊や宇宙刑事は主題歌も挿入歌の多くも劇伴も全て宙明さんが担当していて、音楽的には完全に宙明さんの世界を築いている。昭和ライダーの菊池さんもそうだな。だけど、亜星さんは作品一本丸ごと亜星さんって作り方をしていないから、主題歌のみを担当しているせいで、例えばコンVが完全に亜星ワールドかと言えば、編曲および劇伴が筒井広志氏で、その点で亜星色を塗り替えていたりする』
晶華「作曲と編曲は何が違うの?」
NOVA「作曲はメロディーを作って、編曲は楽器構成とか音調をアレンジして整える。聞いたところによると、亜星さんは『誰でも口ずさめるような印象に残るメロディーは作れるが、SFならSF、ファンタジーならファンタジー、歌謡曲なら歌謡曲とそれぞれの世界観に合わせた音構成までは手が及ばない。だから、それらはそういう世界の音が分かる人にアレンジをお任せするのが正解で、自分は土台となる曲を提供するだけです』というような応じ方をしたらしい。だから、曲は提供しても、自分の音楽世界って感覚は持っていないみたいなんだ」
翔花「それは自分の得意分野をしっかり分かっていて、強引に出しゃばらずに職人に徹した人の言い方ね。ここまでは自分の仕事で、全力で良いものを作る。後は専門の人にお任せしますって感じ?」
NOVA「だから求められたものに合わせられるんだろうな。ケーキ作りなら、スポンジとか、クリームとかの材料はしっかり作って、後のトッピングとかは現場のパティシエに任せる。最初から最後まで自分で作る芸術家と、役割分担で自分の範囲を超えず、その分、大量生産するスタンスの職人との違いかも」
009『自分の世界を見せたい人ではなく、技術で基盤づくりのできる人で、確実に良い仕事を大量にこなせる人として信用を得ているってことか。だから、ジャンルを超えて、いろいろなところに名前が出てくるわけで』
ケイP『えん魔くんも怪物くんも、作者や物語の雰囲気は違うけど、主題歌ではつながっていたとか、いろいろ関連づけが面白いッピね』
NOVA「俺的には、亜星さんの主題歌をいろいろ並べてみたら、編曲や劇伴が筒井広志氏の名前が多く出ていて、そちらの方があまり知らなかったから、さらに調べると盟友みたいなものかな、と。亜星さんの曲を柱に、筒井さんがアレンジを施し、そこに阿久悠氏が詩を付けるとヒット作が生まれたり」
そして特撮
NOVA「ライオン丸のOPとEDは亜星さんの作曲だけど、挿入歌のバラードロックは筒井さんの作曲だな。何となく、こういう過酷な曲調は、亜星さんっぽくない感じだし、おそらくは劇伴を担当しなかったのも、悲壮な曲とかマイナー系な曲は人柄的に作りにくかったのかもしれないな。亜星さんの得意分野は、明るい陽性の曲とか、盛り上がる勢いのある曲とかで、CMソングもやはり商品の魅力をキャッチーに伝えることが目的だから。逆にドラマ作りをしようと思えば、暗い曲、不気味な曲、悲しい曲なんかも手掛けないといけないのだろうけど、そういうアレンジは苦手だったのかもしれない」
009『自分の強みと弱みを心得て、それに合わせた仕事ができるというのは、十分な武器だと思うな』
NOVA「例えば、亜星さんの手がけたえん魔くんも、妖怪ものとして鬼太郎と比べると、編曲は不気味でもヒーローソングのメロディーだもんな」
翔花「他に特撮は?」
009『あれ? ファイヤーマンは冬木透さんじゃなかったのか?』
NOVA「俺もそう思っていたんだが、主題歌だけは亜星さんなんだな。もしも、冬木さんに主題歌を作らせるとこうなるか」
晶華「いや、さすがに主題歌はそこまで悲壮な感じにはならないでしょう」
NOVA「でも、冬木節ってこうだろう。いかにも雄大とか、壮大とか、悲壮とか、ワンダバとかが持ち味で、クールだけど、ヒーローっぽい燃える曲には少し遠い。ファイヤーマンが燃えるヒーローである以上は、表看板は冬木節よりも亜星さんに任せた方が良かったんじゃないか。やはり、人には向き不向きってのがあって、プロほどたくさんの作品を練習し、自分の持ち味を研究しているから、その中で自分が良い仕事ができる場を選んだり、求めに応じられる自分を示しているんだよ。いや、俺なんかが亜星さんや冬木さんの仕事の向き不向きを語るのもおこがましいと思うが、亜星さんの大らかなお人柄だと、許してもらえる気がするんだ。やはり、作品から感じられる人柄ってのもあるんじゃないかな」
翔花「じゃあ、NOVAちゃんにとってのベスト亜星さん特撮ソングは何よ?」
NOVA「これかな」
NOVA「ロボコンは菊池俊輔ワールドだけど、 後番組になるロボット110番は劇伴も含めて小林亜星ワールドだ。亜星さんを語るなら、この作品がベストだと思うんだが、残念ながらこの番組はゴレンジャーの後のジャッカーと同じ道を歩んだ。つまり、前番組が偉大すぎて2年のロングランを築いた結果、後番組はマイナーチェンジ路線で行こうと思ったら、飽きられたのか、これじゃないと思われたのか、結果として3クールで終わった。主要メンバーが4体だけなのも、前作に比べてパワーダウンと見なされたのかもしれない。おそらく、このジャンルでは一番マイナー扱いされる部類じゃないだろうか。俺は好きなんだがな」
晶華「後番組は?」
NOVA「レッドビッキーズだが、そちらは亜星さんがタッチしていないから、話題としてはこちらに移った方がいいだろうな」
009『いや、あんた、いくら何でも、これが追悼記事って忘れてないか? 何で、追悼記事にバラバラマンなんだよ』
NOVA「だって、好きなんだよ、この曲。敵役の歌なのに、妙にかっこよくて、しかも人情味のペーソスに溢れていて、これこそ亜星さんの集大成って感じがしないか? 少なくとも、俺と同じように感じている人は他にもいるらしくて、追悼曲の最初に挙げている」
翔花「でも、まさかバラバラマンで話を終えるつもりじゃないでしょうね」
NOVA「さすがに、それはちょっとな。締めに使う曲は最初から考えている。やはり、最後はこれじゃないかなあ、と」
晶華「とにかく、小林亜星さんという人が、NOVAちゃんと花粉症ガールの世界にもすごく大きな影響力を持っていたことが分かりました。人が人を追悼する気持ちになるのは、その人から自分が受けとった想いを振り返って、感謝の気持ちを捧げることだと思います。振り返って、その人の偉大さを噛みしめて、それから自分の受け止めた諸々を心の糧にして、また多くの人に想いを伝えられるように精進したいと考えます」
NOVA「ああ、菊池俊輔さんに次いで、また偉大な作曲家を一人喪ったことは哀しいけれど、その人の遺した曲はみんなの心の宝だと思って、機を見てまた、いろいろと語り伝えたいな、と思う。ありがとうございました」
(当記事 完)