Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

仕事人2009・第6話感想(その3)

 たったの1話の感想を書くのに、記事を3回分も費やして、どうするのよ?
 いくら密度が濃い話と言ってもね〜。


 と、いう気分になりかけているので、今回でこの話は完結させるつもり。

夫殺し

 凶行に手を染めた伊勢崎藤五郎。
 彼の始末をつけるための仕事料を小五郎に渡したのは、彼の妻・初枝でした。
 自分の病気のために悪事を働き、生き地獄に落ちてしまった夫を見るに見かねて、「いっそのこと共に死ぬ道を選ぶ」……この追いつめられた心理が本話のドラマの根幹です。この心情を見据えれば、霊感商法陰陽師の悪行なんて、どれほどチンケなことか。
 もちろん、その心情描写を下支えするセリフも描かれてあって。


 たとえば、序盤で小五郎に語る藤五郎の言葉。
 「身内に病人を抱えて、金の無心なども行えば、友人や親類縁者も寄り付かなくなります」
 そうした藤五郎の孤独感は、彼が道を踏み外すに至った心情のバックボーンともなるでしょう。


 妻に「笑顔を見せなくなった」ことを心配された藤五郎は、妻に顔向けできず、別の女を抱くことで、憂さを晴らそうとします。罪の意識を感じる自分を麻痺させるため、徹底して自分を堕落の道に追いやろうとする。
 そして、夫の心が自分から離れていくことを感じた妻の不安。


 崩壊した夫婦間の絆を死という形でつなぎ止めるために、病に憔悴した妻の下した哀しき依頼。
 そのための頼み料は、小五郎が伊勢崎に渡した「1両」だった。仕事人の受け取る仕事料は、通常「恨みつらみなどの心情のこもった銭」ですが、今回ばかりは「夫婦愛のこめられた哀しき仕事料」です。一種の「無理心中」を依頼するにも似た、この妻の想いを小五郎は受け取ります。

のさばる悪を何とする

 今回のアジトの仕事料受け渡しシーン。
 BGMは、いつもと違った「必殺仕置人OPテーマ」です。この選曲にも、今回しびれました。
 人の想いにとらわれそうになっている小五郎を、気にかける仲間のセリフ。
 想いを振り払うべく、元は自分のへそくりである仕事料を受け取る小五郎。
 その決意の仕草を、哀しくも力強い響きのBGMが彩ります。そして出陣。


 殺しのシーンについては、さほど特筆すべき演出もなし。
 涼次は、2週に渡って「坊主頭の悪人」を始末したな、とか、
 主水さんが悪ボスの陰陽師を差す際、「悪事で金を儲けたようだが、そんなてめえの命は一分銭にも満たなかったぜ」発言は、前置きが若干長くて、切れのいい一言にはならなかったな、とか、
 ドラマの濃さに比べればトーンダウン。


 そして、クライマックスの小五郎。
 人斬りに慣れていない藤五郎相手とは言え、正々堂々と切って見せたことが演出としてや良し。この場面で、いくら何でも、不意討ちしていたら、オイオイとなるところでした。
 ともあれ、小五郎が斬り捨てた瞬間、生けた花が散り、妻の初枝も病死したという演出がグッドで、うまくドラマを引き締めた、と思います。


 最後は、恒例の「こうふくの嫁姑コント」。
 伊勢崎夫婦が奇しくも同じ時間に亡くなったことをセリフで伝えるとともに(このセリフがあるため丸っきり無意味なシーンではない)、これまで過保護な扱いだった婿殿に、「妻が先立った万一の場合」に備えて、家事手伝いをさせるというオチ。
 やはり、この部分は過保護な婿殿より、イビられる婿殿の方がネタにしやすいな、と実感。

必殺シリーズ・侍キャラの系譜3

 今回は、小五郎ではなく、伊勢崎藤五郎を想起させる侍キャラをば、振り返って見たいと思います。

神谷兵十郎

 前回、「中山文十郎」の項目で名前を挙げましたが、今回の話に触れて、もう少し詳しく書いてみようと。
 仕掛人21話『地獄花』に登場するゲスト侍で、仕官のための上納金目当てに仕掛人にスカウトされるのですが、彼の妻もまた夫のために、身を売って上級武士の夜伽を務めていたのです。
 妻のために殺し屋になった夫と、夫のために不貞をはたらいた妻。この互いを想いながら、互いを裏切る形になっていた夫妻が「夫が仕掛けに入った上級武士の屋敷」で遭遇するという皮肉な運命。何だか、O.ヘンリの小説『賢者の贈り物』の悲劇バージョンって感じです。
 絶望した神谷は、仕掛けの的ごと妻を斬り捨てて、失踪します。


 そして仕掛人30話『仕掛けに来た死んだ男』にて、再登場を果たし、死に場所を求めて仕掛人チームと戦い、散っていくことに。

糸井貢

 必殺シリーズ第4作『暗闇仕留人』の主人公にして、中村主水の義弟(演・石坂浩二)。
 彼は、病の妻の薬代のために、裏稼業の世界に入った点で、伊勢崎藤五郎との共通点が見られます。
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 ええと、「糸井さんのどこが侍キャラ?」というツッコミもあるでしょうが、彼の本名は吉岡以蔵。高野長英の弟子の蘭学者にして、脱藩士。すなわち「元侍」と呼べる出自なわけですな。一応、本編中は「三味線」や「絵画」などの芸事でつましい生活を営んでいるのですが。
 それと同時に、彼は裏稼業の悲劇を体現する代表キャラの一人。
 まず、物語半ばの17話『仕上げて候』において、対立する裏稼業組織・仕上げ屋との抗争に巻き込まれ、妻のあやを失ってしまいます。妻のために裏稼業に入った身として、これは非常に辛い運命でしょう。
 その後、厭世的になりながらも、蘭学者として黒船来航後の日本の将来を案ずる彼は、最終話において、開国派の幕府役人を仕留めようとした際に、裏稼業に徹しきれずに動揺した隙を突かれて、命を落とすことになるのです。
 中村主水にとっても、初めて殉職した仲間として、重い記憶を焼き付けたキャラと言えます。

赤井剣之助

 必殺シリーズ第7作『必殺仕業人』の主人公(演・中村敦夫)。
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 ええと、仕業人と仕留人は、主題歌が共に「西崎みどり」という点でも、共通点がありますな。
 それはともかく、赤井剣之助は、本名・真野森之助。元・沼木藩士で、現在はあまり売れない居合いの大道芸人。種類や見た目の印象は全く違いますが、「芸事に身をやつしている脱藩浪人」という点では、糸井貢と共通点があったことを改めて実感。
 彼が脱藩した理由は、愛した女・お歌との駆け落ち。
 そして、仕業人として中村主水とチームを組みますが、最後はお歌と共に斬殺される末路を遂げます。
 彼の死も、同じ侍として、中村主水に重い記憶を留めたキャラでした。


 何だか、今回は重いキャラばかりを紹介してきました。
 まさに「あんた、これらの夫婦をどう思う?」と、苦い後味で終わった記事ですな。
 次回は、もう少し明るい記事になることを期待して。