娘のいない誕生日
NOVA「今日は8月27日、つまり、翔花の5ヶ月めの誕生日だ」
ケイP『翔花ママはコンパーニュの塔で修行中だろ?』
NOVA「姉の1号はな。妹の2号もお盆休み前に送り出したんだが、それから10日以上が過ぎて、今だ帰ってくる様子がない。温泉でキャッキャウフフと楽しくやっているならいいんだが、そろそろビルドも終わったし、メガネンジャーの総括もしたい。誕生日には帰って来ているだろうと思ったが、いくら何でも遅すぎないか?」
ケイP『そんなに心配なら、コンパーニュに連絡を入れてみてはどうなんだ? こんなところで、おらを相手に愚痴っている暇があるぐらいならよ』
NOVA「いや、干渉しすぎる父親ってのもどうかと思ってな。あれでも精神年齢14歳ぐらいの難しい年頃だし」
ケイP『だけど、実年齢が半年足らずだから、マスターが想像するよりも幼くて、父親離れしていないところもあるぞ。少なくとも、誕生日おめでとうぐらい伝えてもいいんじゃねえか』
NOVA「うむ。先日のルパンイエローの父親みたいに、誕生祝いぐらい言ってもいいか。じゃあ、コンパーニュに連絡してみる」
(連絡した後で)
NOVA「……最悪だ。翔花2号は現在、行方不明中らしい」
ケイP『ヘッ、何でそういうことに?』
NOVA「……南郷さんに謝られてしまった。不用意な次元転移技を発動してしまったせいで、どこか遠い未来へ飛ばしてしまったかもしれないそうだ」
ケイP『どこか遠い未来って?』
NOVA「そんなの俺が知るか」
ケイP『マスターは時空魔術師じゃねえのかよ』
NOVA「飛ばした本人が分からないのに、何の手掛かりもなしに俺が分かるはずがないだろうが。おまけに、シルバーアイズはコンパーニュの塔に残して行ったそうだ。あれを持っていれば、時空魔術で位置情報が割り出せたろうに」
ケイP『どうして?』
NOVA「そりゃ長年、俺が愛用していたメガネだからな。痕跡を辿るのは簡単だ」
ケイP『だったら、翔花ママの痕跡だって……』
NOVA「物品に比べて、生命体はエーテル的な干渉波を受けやすく、探知魔法が不安定なんだ。ある程度、当たりを付けた上でないと、特定の存在を探り当てるのは非常に困難なわけで」
ケイP『魔術の理論はよく分からねえが、何か手はあるんだろう?』
NOVA「一番確実なのは、翔花2号がこっちに連絡をくれることだ。それなら、迎えに行くのは簡単なんだが、今のままだと広大な砂漠に落ちた針一本を探し出すぐらい困難だろうな。磁石を持っていれば、運良く針を引き寄せることができるかもしれんが、どんな強力な磁石でもある程度近づかないと、磁界の影響外で磁力も働かん」
ケイP『それでも、手当たり次第でも探り当てるべきじゃねえのか?』
NOVA「そいつは最後の手段だ。その前にすることがある」
ケイP『何をする気なんだ?』
NOVA「白いパンドラパネルと、導きの星神ハルーラと、花粉症の神さまと、ブルーアイズに祈ってみる」
ケイP『ちょっと。何で、いきなり神頼みなんだよ?』
NOVA「いや、白いパンドラパネルと、ブルーアイズは神さまじゃないぞ。前者は物理法則を越えて二つの世界を融合させる。後者は、俺に真実の知見を与えてくれる。どちらも思念を込めることで、俺と翔花の分かたれた魂を結びつけることや、ブルー・スタンドの絆を紡ぎ当てることが可能だ。要は翔花の位置を探り当てる幸運度の判定に相応のボーナスをくれるスペシャルアイテムってことさ」
ケイP『何だか胡散臭えな』
NOVA「まあ、そう言うな。神さま、仏さま、白いパンドラパネルとブルーアイズの名にかけて、翔花2号の居場所を教えて下さい」
(数瞬後)
NOVA「ん? 何だか時空通信に反応あり? こいつはもしや……おお、ハイラス。お前かよ、珍しいな。何か異常が発見されたのか? ああ、ビルドの世界がスカイウォールのない世界に融合したことは、こっちも観測した。あの世界の行く末は今後も監視しないといけないだろうが、目下の懸念は2068年だ。タイムジャッカーという連中が動き出そうとしているみたいだからな。え? すでに動き出しているだと? いや、こっちはまだ観測していないが。何? 時空の歪みが発生して、そこから娘がPON!と飛び出して来た? タイムジャッカーに追いかけられていたのを、お前が見つけて保護しただって? どうなってやがる。分かった、すぐにそっちに行く。知らせてくれて助かった」
ケイP『どういうことなんだ、マスター?』
NOVA「ああ、本当に白いパンドラパネルが導いてくれたようだ。新世界、次なる時空の物語が翔花2号の運命と交わったらしい」