日本アニメーション50周年で
晶華「前回は世界名作劇場50周年って言ってたけど、同時に日本アニメーション50周年でもあったのね」
NOVA「ああ。前回の記事を書いたときは気づいていなかったが、実は『トム・ソーヤーの冒険』がYou Tubeで無料配信され始めたところだったんだな。ちょっとタイムリーすぎて、ラッキーだと思った」
翔花「すると、NOVAちゃんが昔、見逃していた海賊エピソードや気球エピソードも見れるのね」
NOVA「ああ。インジャン・ジョーにも45年ぶりに会える」
晶華「いや、インジャン・ジョーって殺し屋でしょ?」
NOVA「違う。殺しを商売にしているのが殺し屋であって、ただの人殺しとは少し意味が違う。『このお金であいつを殺してください』と頼まれて応じるのが殺し屋。人を殺して、ついでに相手の金を奪うのが強盗殺人。つまり、インジャン・ジョーは職業的な殺し屋ではない、という理屈になる」
翔花「お金をもらって人を殺すのが殺し屋かあ。つまり、必殺仕事人とかね」
NOVA「仕事人の場合は、『晴らせぬ恨みを晴らすため、許せぬ悪を消す』という哲学性が前提にある仇討ち代行業なんだが、金さえもらえれば誰でも殺すのは外道仕事人と称されたりする。なお、これが幕末とかで世の秩序が乱れると、金ももらわずに人を斬る輩が続出して、仕事人の商売が上がったりという設定のTVスペシャルもあった。つまり、戦争とか内乱の状態では、日常の表裏を扱う仕事人のドラマは成立しなくなるわけだ」
晶華「ちょっと。今回は『ふしぎの島のフローネ』さんの話からのはずでしょ? 何で仕事人の話に突入しちゃうのよ」
NOVA「いや、先ほど言ったように、現在YouTubeでいくつかの作品が無料で見れちゃうんだな。世界名作劇場では、第1作の『フランダースの犬』を初め、85年の11作め『小公女セーラ』に続き『トム・ソーヤーの冒険』の配信が始まったところだ。始まったばかりなので、とりあえず1話から3話まで見たところだが、これから少しずつ話が進んでいくと思ったら、忘れた夢が見えるような気分になってる。感想としては、ミシシッピー川の蒸気船という背景が毎回描かれていて、エンディングも相まって、トムの冒険への憧れを培って来たんだな、と思った」
翔花「ふ〜ん、『未来少年コナン』さんも配信中なんだ」
NOVA「ああ。冒険アニメとしては傑作も傑作、大傑作だから、それはまだなら絶対に見た方がいい。俺は再放送で何度も見たし、20年前に買ったムック本も大事に本棚に入ってるほどのコナンファンだから、今さらなって感じだけど、それでも傑作アニメが広く配信されて語り継がれるのはいいことだと思う」
晶華「『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』などのジブリ冒険物語の原点的な作品だもんね。NOVAちゃんのツボってことで、今回はコナン君の話?」
NOVA「いや、コナンと同じ1978年に第1作が始まった上様の話だ」
改めて「暴れん坊将軍」
晶華「……日本アニメーション50周年から、ダイナミックに時代劇に転がり込んだわね」
NOVA「フローネはまた次の機会ってことで、今回はこっちの話にさせてくれ」
晶華「仕方ないわね。先日のTVスペシャルの話もしたいんだろうし、許してあげる」
翔花「ニャンニャンニャミー♪」
NOVA「『仕方ない。◯◯してあげる』ってフレーズは使い勝手いいなあ。ともあれ、松平健演じる徳田新之助こと徳川吉宗は、時代劇最強の剣士としても評判が高い」
翔花「え? 最強なの?」
NOVA「ああ。仮面ライダーとも映画やゲームで共闘した時代劇キャラはまずいない」
晶華「う〜ん、仮面ライダーや戦隊の役者さんが時代劇に進出する話はよく聞くけど、時代劇キャラがそのまま仮面ライダーにコラボなんて唯一無二の祭りよね」
NOVA「音楽もそのまま昭和ライダーの菊池俊輔さんだもんなあ。で、役者つながりで言うなら、暴れん坊将軍のお庭番で悪党の成敗を担当する人たちが、初代が仮面ライダーV3の宮内さんで、以降もストロンガーやサンバルカンのバルイーグル、ジェットマンのブラックコンドルなど、ヒーロー役者が数多い」
翔花「つまり、上様は数々のヒーローに守られている最強の時代劇ヒーローか」
NOVA「もちろん、最強論争には反論もいろいろあるだろうな。時代劇ヒーロー最強キャラを10人挙げるなら、柳生十兵衛とか、仮面の忍者の赤影とか、必殺シリーズの誰かとか(殺しの数ならトップクラスの中村主水は言うまでもなく)、シリーズ総数なら1000回超えの水戸黄門とか(最強ロボのモチーフだし)、世代によっても、各人のこだわりによっても、いろいろ挙げられる。しかし、松平健の上様には他に負けない記録があるわけだ」
晶華「何?」
NOVA「1人の役者による1つのキャラとしては、大川橋蔵さんの『銭形平次』の888回に次ぐ、832回の放送話数があるってことだ。必殺シリーズも数多いが中村主水1人じゃないし、水戸黄門も役者が代替わりしている。しかし、徳田さまは800回越えということは1年を50話と考えて、少なく見ても16年は上様として毎週、悪人と戦って来たわけだよ」
晶華「1話で少なく見ても10人ぐらいとチャンバラしてるってことは、最低でも8000人を斬っているわけか。中村主水さん以上に殺してない?」
NOVA「いや、上様は刀を逆に返して殺陣しているので、基本的に峰打ちだらけだ。成敗と命じて、実際に殺すのはお庭番の仕事なので、上様が直接、相手を手にかけるのは作風が固まっていない初期の話だけだと思う。まあ、峰打ちでも打ちどころが悪くて、打撲傷で死んでしまうケースもあるかもしれないが」
翔花「殺しの数なら、中村主水さんが上。だけど、殺しを含まない実戦回数なら上様が多いってことね」
NOVA「放送回数の多い銭形平次は、剣客じゃないからな。それと主水さんはTVだと毎週1殺だけど、仕事人以前の商売人とか、劇場版やTVスペシャルなんかでは侍らしくチャンバラも見せて、殺しの人数もいっぱい稼いでいるから、決して不意打ち暗殺だけの人じゃない。時代劇の奉行所に勤める同心キャラでは最多と言って間違いないだろうし、火薬とかによる大量虐殺を除けば、最多人斬りキャラと考える。いや、数えたことはないけど」
晶華「物騒な話が続くけど、上様は戦闘回数の割に、直接殺しをしたケースは稀ってことね」
NOVA「ああ。だから、もしも敵にとどめを刺したキャラだけ経験点がもらえるシステムだと、経験点が少なくなるんだが、さすがに『暴れん坊将軍』をTRPGで再現しようと思って、そんなシステムにはしないだろう」
翔花「峰打ちで戦闘不能にしても経験点がもらえるようにすべきね」
NOVA「それだと最強だろうし、ミッション達成によるベース経験点がもらえるシステムでも、セッション回数800回越えというのは大量の経験点を稼いでいるだろうな」
晶華「そっかあ。1人のプレイヤーが1つのキャラで800本も冒険シナリオを経験しているとなると、すごいレベルになってるってことね」
NOVA「特撮ヒーローに例えるなら、仮面ライダー1号だけで16年以上も続けて来たことになるからな。その間、大きなケガや病気、不祥事なんかで役を降板することなく続けて来られただけでも凄いわけだし、ぶっちゃけ偉大な業績として称えたいわけだが、この度、2代め暴れん坊……に襲名したと言っていいのかな」
晶華「一応、劇中では吉宗の長男・家重さんと合わせて、親子2代のダブル主人公みたいな話作りをしていたけど」
NOVA「片手が使えないので、手1本で戦える西洋の軽量剣で戦う設定だったな。未熟さを努力で補う熱いキャラで、物語としては面白かった。これで、彼1人で独り立ちした続編が作られたらいいんだけど、世の中には親子2代の作品として作られた映画の続編が、あっさり息子が戦死して……って、その点はがっかりな冒険映画もあったからな」
翔花「だったら、『新・暴れん坊将軍VS必殺仕事人』って形でコラボしたらどうかな?」
NOVA「制作会社が東映と松竹どっちだよってツッコミたいところだが、TV局と役者はつながっているんだよな」
晶華「ああ。3年前の必殺で、悪堕ちした兄に殺された絵師の弟くんが、今回、暴れん坊ジュニアとして転生したことになるのね」
NOVA「あの時は線の細いキャラだったが、今回はどうなるかと思いきや、不遇な境遇で反抗期っぽくひねくれたキャラながら熱い内面を持ち合わせて、父親の上様の思いを受け継いだ主役後継者として好演していたと思う。時代劇アクションファンとしては、『片手しか使えない殺陣』で強すぎもなく弱すぎもなく、それでも鍛えれば伸びるというイメージを上手く表現できていたな。片手の剣士というのは、丹下左膳など時代劇では強豪剣士という印象があるが、この設定でレギュラー番組の主人公を張るのは今どき難しいかもしれない。
「でも、TVスペシャルで父との対比で、不遇の息子でありながら根っこの部分で後継者に足る資質を備えているという筋書きは、お見事だし、この辺はさすがに『必殺鎌倉人』の三池崇史さんだなあ、と」
晶華「2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ね」
NOVA「俺の中では、あの作品は『必殺鎌倉人』として記憶に焼きついているぞ」
晶華「NOVAちゃんの中ではね。今回は、あまり寄り道しないで、暴れん坊の話に集中しようよ」
NOVA「うう、善児の思い出動画を貼り付けたい欲求が生じたが、まあいい。大事なのは、仕事人の被害者役だった西畑大吾くんが暴れん坊ジュニアとして、結構いい演技をしてくれたことだな。こういう裏と表のある演技は必殺シリーズにも通じて、応援したくなる役どころだ。父は旗本の三男坊で侍だったが、息子は侍とか将軍とかが嫌いで町人姿で立ち回っていた。この父子の対比が、父の回想話で通じる面があったことに、上手い話の流れだったな、と」
翔花「吉宗さんも元々、将軍になるつもりがなかったのに、巡り巡って将軍になって、それでも庶民の暮らしが気晴らし兼、政道の情報収集と言い訳して徳田新之助になっていたって話ね」
NOVA「最初の互いの正体を知らずに、徳田新之助と徳長福太郎として市井で出会ったときに『まさか、こんなところにいるはずがない』と疑うシーンが笑った。互いの正体を知らずに、あれこれ想像と疑念を巡らせる姿は、最近の仮面ライダーでもあったしな」
晶華「視聴者としては、似た者親子と思いながら、そのギャップやすれ違いを楽しめる流れね」
NOVA「で、特撮者としては、必殺被害者の長男よりも、優秀な次男の方に期待したんだが、洋銃をもらって力に溺れそうになる武断派として描かれていたな」
翔花「優秀な弟だから、弱者の気持ちがあまり分からずに、上が権威で引っ張ろうという考えだったのね」
NOVA「一応、民のことも考えて悪人ではないけれど、視野が狭くて悪人に騙されて利用されるムーブだった。当然、介人とは違ったキャラなんだが、洋銃をもらって調子に乗る姿に、ゼンカイジャーのギアトリンガーを連想して、『うん、ギアトリンガーをもらったら、全力全開の武装主義に走っても仕方ないな』と思わせる茶目っ気はあった」
晶華「でも、江戸の町を戦火に巻き込むような陰謀に乗せられちゃダメでしょう」
NOVA「う〜ん、兄のピンチに影から銃弾撃ってサポート支援してくれるナンバー2ポジションを期待したんだけどな。まあ、今回はGACKTさんの尾張とも張り合う形で、主戦論者の1人となっていた。もしも、敵役の陰謀が実を結んでいたら、ゼンカイザーwithオルタナティブと、帝王ライエル(あるいはディケイド版ライダーマン)のスーパーヒーロー大戦が勃発していたことは間違いない」
翔花「それが実現していたら、盛り上がっていたでしょうね」
NOVA「いやいや。一応、史実があるんだから、陰謀はあっても許されるが、戦争にまで発展すると歴史ファンはツッコミ入れるだろう。変えていいラインと、いけないラインのせめぎ合いを楽しむのが歴史エンタメの醍醐味だ」
翔花「で、味方側の特撮人は誰?」
NOVA「まず、家重のお庭番にリュウソウピンクがいて、一方、吉宗のお庭番には、ガヴのショウマのお母さんがいたそうだ」
翔花「それって一般人じゃない?」
NOVA「だけど、アクションできたんだなあ。つまり、ショウマの母親は忍者の末裔という推測ができるわけだ」
晶華「あと、男忍者の方は、一つ目タイタンの役者さんの息子さんらしいし」
NOVA「難波重工絡みか。そういえば、暴れん坊ジュニアもなにわ男子だし、この時期の徳川は難波つながりってことだな」
晶華「元々、紀州の殿さまだったから、吉宗さんは関西系でしょ?」
NOVA「まあ、紀州は和歌山県だからな。関西弁を話す徳川吉宗はイメージできんが、とにかく端役のホスト役で出演していた仮面ライダーセイバーを含めて、特撮的にもところどころ注目なキャスティングだったが、敵ボスの父親が本田博太郎さんで、いきなり最初に上様に倒される役どころ。その息子の徳川同士討ち計画が陰謀の発端だったわけだな。つまり、味方も父子のドラマであるなら、敵も父子の恨みが背景にあって、そこに風魔忍者が絡んで来たりして、危機感を煽る物語だったわけだ」
翔花「最近の必殺スペシャルよりも派手な話ね」
NOVA「将軍視点と、同心および庶民視点の違いがあるが、近年の必殺は殺し屋同士の抗争劇をあまりやらなくなったからな。敵の戦力が弱くて、活劇を盛り上げずに、殺しのシーンが定番のお約束かコントになってしまえば、演出を楽しむにも限度があるさ。今回の暴れん坊は久々にスカッとする活劇をTV時代劇で見られた気がする」
晶華「当たりってこと?」
NOVA「単発としては十分な出来だったな。あとは2代目の続編物語ができるか次第」
(当記事 完)