Shiny NOVA&WショーカのNEOスーパー空想(妄想)タイム

主に特撮やSFロボット、TRPGの趣味と、「花粉症ガール(粉杉翔花&晶華)というオリジナルキャラ」の妄想創作を書いています。

「第8章・ハエとクモ」感想

 そんなわけで、DVD発売を来週に控えて、ようやくの記事書き。
 ここまで、書き込みが滞るとは思わなかったです。


 まあ、第3部が夏上映だと思い込んでいて、「いや、年末上映になりましたよ」とコメントをもらったおかげで、自分が情弱になってることを気付かされた次第。
 仕事で忙しかったとか、ゲーム(スパロボ)にいそしんでたとか、言い訳しつつも、DVD発売を機に、また記憶の再確認を行おう、と。

あらすじ

 ガンダルフと別れたトーリン一行(含むビルボ)は、闇の森に足を踏み入れる。
 そこは侵入者を惑わす魔法が掛けられており、案内人のいない一行はあっさり道に迷ってしまう。
 道を確認するために、身の軽いホビットが高木に登ったりするものの、その挙句、ドワーフたちと離れて孤立することに。
 結果として、ビルボはクモの襲撃から逃れることができ、クモの糸に捕らわれたドワーフたちを助けるために、勇気を奮い起こす。
 スティング(つらぬき丸)と名付けた剣と、姿を消す指輪を使いこなして、単身、クモの群れを撃退したビルボ。
 仲間を救出することには成功したが、闇の森を統治するエルフ王スランドゥイルの手の者にトーリンが捕らわれるのだった。

 このシーンの骨子は、「闇の森で、ビルボ無双のクモ退治。だけど、ドワーフたちはエルフに捕まって……つづく」となるわけですが、
 細かいところがだいぶ違っています。


 本記事の趣旨として、その改変部分をチェックすることで、原作の魅力を再確認しつつ、映画の目指す方向性も探ってみたいな、と。

ドワーフたちの珍道中

 映画の中での「闇の森」は、いかにも魔法がかけられているらしく、眩惑的な光と影が交錯するような、一種のサイケデリック空間として演出されてました。
 探索困難というよりも、探索不能な場所ですね。


 一方で、原作ではもう少し進みようがあるというか、ドワーフたちは道に迷いつつも、
 川に行き着いて、それを渡るために向こう岸にあるボートを引き寄せようと投げ縄を使ったり、
 食料が足りなくなって、鹿狩りのために矢を射ち込んだり(結局は逃げられる)、
 川の魔力でボンブールが眠り込んだり、
 いろいろなイベントを行いながら、ビルボとドワーフたちの連携が次第に作られていく様子が描かれてます。
 で、それまでは足手まといだったビルボが、次第に「鋭い観察力と機転」を発揮するようになり、代わって足手まとい役に転落するのが太っちょボンブールという流れ。


 探索の途上で、食べ物が尽きて難儀しているという描写は、原作ならではのもので、
 映画の場合は、もっと目に見える脅威を映し出すことに焦点が当たってますね。
 よって、闇の森でドタバタ動き回って、行き当たりばったりの道中を何とか切り抜けようとするドワーフたちの探索行は大きく割愛。
 で、一気にメインイベントに。

木登りビルボ

 原作のビルボは、木登りがあまり得意ではありません。
 だから、ワーグの襲撃でも、一人だけ木に登れずに、ドーリにかつがれて何とか切り抜けられたわけだし、
 闇の森で方角を確かめるために、高木に登る際にも、ドワーフたちに無理矢理、押し上げられて、おっかなびっくり登るという描写。
 なぜ、木登りが苦手なビルボが選ばれたかと言えば、「周囲を見渡せるほどの高木の先端は、ドワーフの体重を支えられそうにないから」という理由。
 ただ、これだけ苦労して登った木も、「森の窪地に生えていたために、出口までは見渡せない状態」だったため、出口が分からずに成果なし、というのが原作の描写。


 一方、映画のビルボは、結構、器用に木登りを行います。忍びとしてのアクション技能は、映画の方が優秀と。
 ワーグの襲撃に際して、一人だけ逃げ遅れたのも、ワーグに突き刺した剣を抜くのに手間取ったため。
 剣を抜いて回収するや、素早く木に飛びついて、難を逃れたりも。
 そして、第2部でも、木登りを難なくこなし、しかも原作と違って、「森の出口の方向にある離れ山」を見つけます。*1
 ただし、ドワーフたちに報告のために木から下りようとしたところで、クモの襲撃にあうわけですが。

エルフの宴会

 映画では、木登りイベントから一気にクモ戦に突入しますが、
 原作では、その前に、エルフとのイベントが設けられています。


 出口も分からないまま、食糧難に陥ってるところに、「森の中に明かりが見えた。遠目にうかがうと、エルフが宴会を開いている。ちょうどいいので、食べ物を恵んでもらおう、と勇んで、明かりに突入したら、パッと明かりが消えて、エルフに逃げられた」というイベント。
 何度かエルフの宴会の明かりを追いかけてるうちに、ビルボがはぐれて、トーリンがエルフ王に、「我が森で、祝宴を邪魔するとは不届きな奴」という理由で捕まってしまうのが、原作での展開。
 ここでのエルフ王は、トーリンとは初対面で、映画で描かれたような因縁は設定されていません。単に、種族としてエルフとドワーフは仲がよろしくないことと、トーリンが「宴会を邪魔した侵入者」と見なされたこと。さらに、「森に入った目的を、トーリンが意固地になって打ち明けなかった」という事情で、牢獄に閉じ込めた流れです。

クモ退治

 映画では、木登りイベントの直後、
 原作では、エルフの宴会絡みで眩惑された結果、
 ビルボはドワーフたちからはぐれて、孤立することになります。


 そして、本章メインのクモ戦が開始される、と。
 原作では、クライマックスの五軍の戦いでも、ビルボは戦いの中心から外れたところで観察役になっており、積極的に剣を振るったわけではないので、「ホビットの冒険」の作中でも唯一、ビルボのバトルが見られるシーンです。
 まあ、映画の場合は、第1部ラストを始め、原作以上に剣を振り回す機会が多くなってるのですが。


 ともあれ、原作ではビルボ無双と言えるほど、ビルボの活躍が華々しく描かれるクモ戦です。
 つらぬき丸を振るうだけでなく、遠くから石を投げてクモの頭を打ち砕いたり、クモを挑発する歌を歌っておびき出したり、その隙を突いて糸に囚われたドワーフを救出したり、指輪の力で消えたり現われたりを繰り返してクモを撹乱したり、もうやりたい放題。
 なお、原作では、この際に、姿を消す指輪のことをドワーフたちに打ち明けています。映画では、「指輪の重み」が原作以上に設定されているので、いまだ秘密のままですが。


 一方、映画では、原作のようなビルボ無双ではなく、解放されたドワーフたちも豪快に暴れまわって、ビルボ以上の勢いでクモ退治。
 さらに、ドワーフを追って森に侵入したオークに備えて活動していたレゴラスを始めとするエルフたちもが戦いに参加し、
 ここに、ドワーフ、エルフ、クモ、オーク、ホビットの5種族を交えた「プレ・五軍の戦い」とも言えるアクションシーンに至ります。
 その結果、クモは退治され、オークは森から撤退。
 森を警備するレゴラスが、ドワーフたちを連行する形で、原作同様、「エルフに捕まったドワーフ」という流れに入ります。

レゴラス登場

 ホビット原作には登場しない「指輪物語」のキャラ・レゴラスが、ホビットの映画に登場すると聞いて、最初は「第1部のフロド同様、ただの顔見せ出演かな?」と思っていたのですが、じっさいは顔見せどころか、アクションシーンで完全に他キャラの見せ場を奪う大活躍ぶり。
 好意を寄せる女エルフのタウリエルとのドラマでも重要な役割を与えられ、さらにオークのボルグとの因縁まで作られるなど、ある意味、LOTRの映画以上に優遇されてやしませんか?
 それと、ドワーフの一人、グローインの持ち物を検査していて、家族の写真を見つけて、


グローイン「これは息子のギムリだ」
レゴラス「何て醜い生き物だ」


 もう「指輪」での、レゴラスギムリの友情を知ってみると、
 若き日のレゴラスの暴言に苦笑しつつ、とうとうギャグメーカーまで担当するようになったか、と感じ入ったりも。
 後のオーク戦でも、アクションシーンがギャグになっていたり、情熱とクールさとユーモアの三要素を兼ね備えたナイスなキャラに成長しましたな、レゴラスさん。

ビルボと指輪

 原作の活躍の何割かをレゴラスに奪われた感のあるビルボさん。
 無双状態にはならず、混戦状態の中で、クモの攻撃を受けて、あろうことか大切な指輪を落としてしまいます。


 ここでビルボが突然、凶暴化。
 落とした指輪の位置を確認すると、そこには子供のクモが近づいてくる。
 指輪を奪われてなるものか、と、勇気とは別種の感情を爆発させて、無抵抗なクモをスティングで滅多刺し。


 原作では、単なる便利アイテムでしかなかった指輪を、LOTRの設定につなげる形で、設けられたこのシーン。
 レゴラス登場と合わせて、LOTRファンを感じ入らせてくれます。果たして、第3部でも、これぐらい穿った描写の仕方はされるのかな?

PS:一応、これで原作の半分が終了した形。次は、「9章・牢から逃げ出すたるのむれ」ですが、記事書きする前に、DVDを先に見ることになりそうですな。

*1:このシーンは、広大な森の向こうにそびえるクライマックスの舞台のはなれ山が美しい映像で描かれ、雄大な自然美としては、第2部中ベストだと評価します。