昨夜は、水戸黄門懐古話だけで時間を費やしてしまい、肝心の新作の話は、ほとんど語れず仕舞い。
ということで、今夜も水戸黄門です。
お娟さん退場話
今回の2時間スペシャルは、1986年から24年間、ご老公の旅に同行してきた由美かおるさんの送別話の意味もあったわけで。
一口に24年と言いますが、同じ、というか似たような設定のキャラを演じ続けるのは、大変なもの。先般亡くなられた藤田さんの中村主水が、73年スタートから、2009年まで36年間ということですが、途中、ずいぶんブランクがあるので、レギュラー放送としては87年の「仕事人・風雲竜虎編」までで14年間。「激突」の91年を入れても18年。それを考えると、由美さんの24年は本当に偉業だと思います。
なお、ギネス的に考えるなら、最も長く出続けたのは、初代・風車の弥七の中谷一郎さんで、第1部(1969年)から第27部(1999年)までの30年。
それに準じるのが、うっかり八兵衛の高橋元太郎さんで、第2部(1970年)から第28部(2000年)までの、これまた30年。
後は、里見浩太朗氏が、助さん時代が17年間で、ご老公時代が現在8年間で25年。
数字的には、これらに次ぐ偉業を果たしての引退ということになりますな。
ともあれ、今回の由美さんの役どころは、名前こそ同じお娟ですが、忍びという設定は特になく、「水戸のご老公に長年仕えてきた女中間」的な役どころ。何せ、ご老公がそれまで「世直しの旅に出たことがない」という設定にリセットされたので、彼女もまあ「普通の気風のいい(そこそこ腕の立つ)武家奉公人」という程度の役どころ。
で、そんな彼女が、ご老公の知り合いの大店商人に惚れられて、祝言を挙げるという事情で、別れることになるのですね。殉職したわけじゃないから、また出戻りになる可能性もゼロじゃありませんが、そんな先のことを心配しても仕方ありません。今は、長年のファンとしてお疲れさま、と申しておきます。
新くノ一、楓
そして、後任の雛形あきこ演じる楓ですけど、お娟とは縁もゆかりもない設定。一応、にわか雨で雨宿りする共演シーンがあったのですけど、言葉の一つもかわすことなく、赤の他人といった関係。
関係するのは弥七で、必殺の「涼次と如月」を彷彿とさせる「押しかけじゃじゃ馬娘」です。弥七は、田舎から飛び出したがっている楓を持て余していたのですが、老公の旅の道連れにすべく「腕の立つ助っ人」を求める依頼に応じて、強引に仲間入り、と。
第1話(2時間スペシャル)では、由美さんを立てるためか、あまり色気のない山育ちの田舎娘ルック。刀じゃなくて、棒術で戦っていましたが、このままのキャラで通すのだったら、ちと幻滅かな。もう少し洒落た衣装と、華麗なアクションを魅せて欲しい。
役者としては、特撮絡みはあまりないけど、自分しては初主演作の『闇のパープルアイ』が印象強い。原作マンガも好きだったしね。
他に何かネタがないかなあ、と探してみたら、「俳優 天野浩成との熱愛が報じられた」との記述を発見。
そうかあ、橘さんですかあ。こんなところで、名前が出てくるとは思わなかったです。
助・格新生
楓の出番は今回、少なめだったのは、お娟さんの退場と、助・格の「新登場」に時間を使ったため。
で、東幹久氏演じる助さんは、無難な助さんで、特筆することは特にありません。ご老公の側近として、適度に世間知も備えた優等生。
一方で、的場浩司氏演じる格さんの方が、新鮮なキャラ付けがされています。「堅物の田舎侍で、世間知らずなドジキャラ」となっていますね。「不器用な純情侍」と言えば聞こえはいいのですけど、最初は八兵衛以上のコメディキャラとなっています。
どれぐらいドジかと言えば、ラストの戦闘中に、「懐から印籠がスポーンと飛び抜けてしまう」ほど。今回が「初めての旅」という設定ですから、当然、「印籠を見せるお約束シーン」もまだ確立されていないという状況。たまたま、懐から飛び出した印籠の「葵の御紋」を見てしまい、相手がザワザワしてしまう様子に接して、格さん、「しまった!」という表情をしながらも、自分の失態をごまかすためにドサクサ紛れの勢い付けで、「ええい、静まれ静まれ。こちらにおわすお方を……」と例の口上を即興でぶちまける。
かたわらの助さんは、「あちゃあ」という顔を見せつつも、適度に話を合わせて「ご老公の御前である。頭が高い、控えおろう」とうまくつないだ次第。
格さんがボケて、助さんがツッコミ入れたり、フォローしたりする関係が成立したわけですね。
ちなみに、格さんのボケは、印籠シーンだけではありません。
老公や助さんとは知り合いの「風車の弥七」を紹介されて、「風車を造っているのか?」と真面目に質問したり。まあ、普通に考えたら、「かんざしの秀」はかんざし作るし、「棺桶の錠」は棺桶作りますので、弥七の職業が「風車職人」と勘違いしても納得はできると言うものですが。
さらに、八兵衛に江戸の町を案内されながら、観光としゃれ込む格さん。何と、八兵衛の方が先輩格として扱われています。格さん、武士として腕は立つし、学問などもそれなりにできるんだけど、世間のことを知らない。それなのに、「お忍びの旅として町人に扮するという難題」を与えられたりもしたものだから、「町人の作法のことは、八兵衛から習うといいだろう」と助さんに言われてしまいます。なるほど、と納得する格さん。
ここに来て、ヒエラルキーが「ご老公>助さん=弥七>八兵衛>格さん」となってしまったわけで。これまでは「助さんと格さんが対等」という常識があったのに、今回は「格さんの株がグンと下がった(ただし、キャラ付けはぐんと上がった)」形になります。
今後、格さんがどこまでボケたキャラとして、話を盛り上げてくれるか、に期待したいですな。
なお、コメディーリリーフとしての格さんのイメージは、本家よりも、アニメ作品の方が定番となっていますね。いわゆる怪力デブキャラの系譜。本家は、「大食漢」とか「ドジ」とかは、八兵衛が持っていたので、格さんの属性は「素手戦闘」「真面目(朴訥)」ぐらいしか残っていなかったのを、ここで取り戻したというか。
今後、的場格さんが「世間知らずな天然ボケキャラ」から脱却していくのか、それとも新たな個性として定着していくのか、楽しみに見届けたいです。