ヴァンデミアの居城へ
晶華「前回、ルビーKの幻術でクマシロンの姿になった救世主マシロン君は、紆余曲折の末に八幡国のダイミョウなどの敵を倒して、武者鎧を身につけたアーマード・マシロンにパワーアップしました」
マシロン(シロ)「所持品をすべて失って、素っ裸になって地底世界に侵入したときはどうなるかと思ったが、ルビーKのおかげで助かった」
ルビーK(翔花)「これで、マシロン様は一生、わたしに頭が上がらなくなったわね」
ザック(009)「これじゃあ、どっちが主人で、どっちが従僕か分からないな」
マシロン「いや、ボクたちの間に上下関係はないのさ。ともに支え合って、グァンドゥムの導く平和で実り豊かな大地のために邁進するのみ」
ルビーK「ええと、わたしは別にグァンドゥムに帰依するつもりはないけどね」
マシロン「ええ? あの夜、ボクとグァンドゥムの深き智慧と広大なる慈愛に触れて、誓い合ったことを忘れたのか?」
ルビーK「そんな覚えはないし。勝手にでっち上げないで」
マシロン「ボクはリーブラの使徒じゃないから、嘘を吐いちゃいけないって戒律はないからね。ボクにあるのは、この大地を汚す邪悪は許せないってことだ。〈混沌の荒れ野〉を見たが、あんな自然を壊すような所業は、絶対に認められない。ボクは救世主として、この大地の守護者の任を果たしてみせる」
ルビーK「大地の守護者ねえ。支配と守護の言葉の定義にもよるけど、八幡国では『守護』という役職が国や土地を支配したそうだし、『守護大名』って言葉もある。土地を守ることは、土地を支配することにも通じるなら、わたしの望む世界の支配もマシロン様とともにあるのかも」
ザック「まあ、世界を破壊するというよりは、世界を支配して守ってくれる領主の道の方が、はるかにマシだな。何にせよ、ヴァンデミアを倒さないといけないってことは確かだ。例の〈銀のサークレット〉は入手したのか?」
マシロン「ああ。いろいろ犠牲にするものはあったけど、何とか手に入れた。あとは知恵と勇気と幸運と、そしてグァンドゥムの導きさえあれば、上手く行くさ」
ザック「そうだな。思い返せば、俺とマシロンの最初の出会いも、グァンドゥムの導きあればこそだし」
ルビーK(翔花)「そっかあ。わたしの本作初プレイも、ケイさんの前にグァンドゥムだった。つまり、ルビーKとグァンドゥムは一心一体のようなもの」
マシロン「え? ルビーKの中に実はグァンドゥムがいた?」
晶華「グァンドゥムって、元々はヨーレの森限定なローカル森の精霊のはずだったのに、旧世界編に入って、世界規模な大地の精霊になってしまったのね」
ザック(009)「実は、世界の創造神タイタンのローカルな呼び名の一つがグァンドゥムなのかもしれない。リーブラだって、地域によってはシカーラとか、バーステンとか、マカーラといった別の呼び名があるそうだし、アランシアの一部地域では、タイタンのことをグァンドゥムと呼ぶ文化があってもいいのかも」
晶華「公式ではないけど、当ブログではそういうことにしておく?」
マシロン「う〜ん、『グァンドゥム=創造神タイタン』説かあ。大地の神だったら、タイタンの娘ガラナの方が近いと思うんだけど、まあいいや。グァンドゥムはグァンドゥムで、それ以上は掘り下げない方がいいだろう。ボクは別に神学者じゃないんだし、今は別に為すべきことがある」
晶華「では、グァンドゥムの謎は残しておいて、話を進めましょう。妖怪ムジナの罠からザックさんを救い出したマシロン君は、ザックさんの案内で美術館の奥に踏み込みます。ここに来たときに、ザックさんが秘密の通路を見つけていたんですね。そこからヴァンデミアの城に入れるんじゃないか、とザックさんは推測します」
ザック「推測というか、ムジナがそこから出てきて、ヴァンデミアの手から逃げてきた、とか言ったんじゃないか? 俺はてっきり、さらわれたアムって娘かと勘違いして、罠にはめられたわけだが」
ルビーK「知ってる? ヴァンデミアに取り憑かれると、目が緑色に輝くそうよ」
ザック「だったら、もう騙されないようにしないとな。緑の目は要注意、と」
晶華「さて、そんな風に対策を考えながら通路に踏み込もうとすると、美術館の物陰から〈悪魔の落とし子〉と呼ばれる混沌魔法の実験生物がわらわら出現、襲撃を仕掛けてきます。マシロン君は4体と戦ってください。ザックさんも同数を相手にするので、支援の+2はありません」
マシロン「ボクだって、あれから強くなったんだ。ザックに頼らずとも、自分の身は自分で守れる。多数の相手に最適の武器は……このナギナタだ!」
ダイミョウから入手したナギナタをブンブン振り回すマシロンの姿は、八幡のサムライもかくや、と言うほどの勇壮さを示していた。
〈悪魔の落とし子〉は技術点が2〜5のザコ敵集団なので、たちどころに長柄の刃が斬り散らす。しかし、後から後から際限なく現れる群体に際して、ザックは言い放った。
ザック「これじゃきりがねえや。おい、ここは俺が食い止めるから、お前たちは先に行け。ヴァンデミアを倒せるのは、マシロン、お前だけだ!」
マシロン「ザック……分かった。後で、酒場で飲み交わそう」
ザック「今度は、お前の奢りでな(ニヤリ)」
マシロン「……神殿の前に置きっぱなしにした金貨を後で回収しないと」
こうして、マシロンはルビーKを引き連れ、再会したばかりの親友と再び別れて、ヴァンデミアの居城に通じる地下道に駆け込むのだった。
悪魔犬の謎
晶華「地下道を駆け抜けた先は、階段になっていて、それを上ると、城の大広間に出ました」
マシロン「一回、地下道に戻って、手持ちの食料、最後の1つを食べます。この先では、のんびり食事休憩をしにくいと思うので(体力点19に回復)」
ルビーK「最後の晩餐ってところ?」
マシロン「そうだな。時間はもう、夜中に入ってるだろうしね。よし、準備完了。城の大広間に突入する」
晶華「そこには不気味な怪物がいます。象ほどの大きさがあって、毛皮がなく、骨や内臓がむき出しになった悪魔犬です」
ルビーK「そんなの犬じゃない」
マシロン「毛皮もないなら、モフれないしな。正気度判定を要求されそうな外見は、何とかして欲しい。ルビーK」
ルビーK「幻術で、見た目はファンシーなゾウさんに変えます」

晶華「悪魔犬をピンクの悪魔象に変えるなんて。幻術の乱用禁止」
ルビーK「ゲーム性とは関係ないフレーバー演出よ。大目に見てください」
マシロン「そいつの目は緑色じゃないよな」
晶華「悪魔犬も、悪魔象も緑色の目はしていません。ルビーKがそう宣言しない限りは」
ルビーK「緑の瞳の象(グリーンアイズ・エレファント)なんているの?」
晶華「幻術なら作れないこともないだろうけど、この象がヴァンデミアでないのは確かです。鎖につながれていて、動きを制約されていますし、吠えるだけで襲いかかる様子も見せません。見た目の割におとなしい印象でしょうか。ただ、城の奥に通じる扉が、象の後ろにあるので、完全にスルーして通るわけにもいきませんね」
マシロン「戦って倒すか、召喚獣を呼び出して相手させるか、獣使いのパワーで操るか、素早く横を通り抜けようとするかの4択だな。こいつを操るのは、体力点1点消費でいいのかな?」
晶華「本来は6点消費ですけど、今のマシロン君は集中力が高まっているので、1点消費でいいですよ」
マシロン「1点を惜しむなら、横を通り抜けるのが正解だけど、ここはストーリーを大事にしたい。ダメ元で、獣使いの能力を発動してみる(残り体力18点)」
晶華「しかし、相手は獣の魂を持っていないようです。そうですね、アランシア編でエルフの娘シーナさんが化けた黒ヒョウに術が通じなかったような感じでしょうか」
マシロン「ヴァンデミアに支配されたペットだから術が通じないか、それとも魂が知的生物のそれだから通じないのか。両方の可能性が考えられるな。もう少し観察してみると?」
晶華「その黒い瞳は何だか悲しそうです。じっくり聞いていると、その吠え声もパターンがあって、9回吠えて休み、1回吠えて休み、13回吠えて休む……という繰り返しです」
マシロン「9・1・13かあ。何かの暗号かな」
ルビーK「9・1・3なら、仮面ライダーカイザなのにね」
ザック(009)「俺はそこにいないが、プレイヤーとしてツッコミ入れさせてもらう。このゲームブックが書かれた1988年は、BLACKからRXの時代で、カイザなんて存在しない。おそらく、アルファベットに置き換えたらいいと思うが」
ルビーK「ナイン、ワン、サーティーンで、頭文字はNOT。何かを否定しているってこと?」
ザック「その発想は斬新だと思うぞ。普通は、1=A、2=B、3=Cって感じだろう」
マシロン「すると、I・A・M。『私は〜です』か。続きを教えて欲しいんだけど」
ザック「I,Amと、解釈すれば、有名なSF小説『I,Robot(われはロボット)』みたいな形で、『私はアム』って言っているんだ、と解釈できる……とグァンドゥムが教えてくれたことにでもしておいてくれ」
ルビーK「このピンクの象が、もしかしてアムさんってこと?」
晶華「いや、原作ゲームブックでは象さんじゃないし。分かっていて、可愛い見た目にしたんじゃないの?」
ルビーK「いいえ、単に悪魔犬の見た目がグロかったから、変えてみたかっただけだし?」
マシロン「ええと、ヴァンデミアが悪魔犬の姿で、アシュカイオスの街からアムさんを連れ去った。そして、今はアムさんの体を乗っ取ってるって話だったら、この悪魔犬の中にアムさんの魂が入っているってことでいいのかな?」
晶華「ピンクの象さんは、ようやく話が通じたらしく、嬉しそうに吠えてます」
マシロン「だったら、アムさんの中に入ったヴァンデミアをここに誘き出して、体を交換させる必要があるんだな。ただの憑依じゃなくて、肉体と魂を交換する『転校生』状態だから、話がややこしい」
晶華「最近では『君の名は。』の方が伝わりやすいと思うけどね」
ザック「あれは、時間差ギャップがあるから、単純な入れ替わりとも違うと思うけどな」
ザック「このネタで一番、当時のタイムリーに近かったのは、『ドラゴンボール』のギニュー隊長だと思うんだが、よくよく調べてみると、そっちはナメック星に行ってからの話で90年前後だから、入れ替わりネタは山本さんの方が少し早かった。やはり、80年代でメジャーな入れ替わり物は『転校生』だが、70年代だと『へんしん!ポンポコ玉』というネタもある」
ルビーK「ポンポコ玉は、タヌキネタということも含めて、このゲームブックの原作っぽいわね」
ザック「いや、タヌキはこの記事だけだから。少なくとも、山本さんがポンポコ玉を元ネタにこの作品を考えたという話は聞いたことがない。勝手な捏造をしないように」
晶華「というか、クライマックスの緊迫感が、ピンクの象とか、寄り道脱線で台無しになりかけているし。大広間の悪魔犬は、邪魔して来ませんので、早く奥に進んでください」
マシロン「ああ。それでは、いよいよヴァンデミアに会いに行こう」
妖魔ヴァンデミアとの邂逅
晶華「パラグラフ518番です。長い廊下を走り抜けた先には、広い玉座の間があります。そこまでたどり着いたマシロン君は、ふと人の気配を感じて振り向きました」

晶華「そこには白いドレスを着た愛らしい少女が立っています。その人相や衣服から、アシュカイオスの街からさらわれたと聞いている少女アムだと分かります。『あなたはだれ? ここで何をしてらっしゃるの?』 少女は驚いた様子で、緑色に輝く目でマシロン君を見つめています」
マシロン「ここで70を加えたパラグラフ588番に進むんだな」
晶華「ええ。何も操作しないと、パラグラフ442番に進んで、いきなりバッドエンドです」
パラグラフ442
君は、自分は味方だから何も心配することはないと少女によびかけた。少女は嬉しそうに君に抱きついてきた。
つぎの瞬間、君は胸に鋭い痛みを感じた。少女が隠し持っていたナイフで君の胸を刺したのだ。少女の笑い声が響く。君はさっぱり事情がわからぬうちに死んでいった……。
マシロン「酒場で情報を聞いていないと、こうなるのか。588に進むと?」
晶華「相手の正体が分かっていると突き詰めると、少女の態度は一変し、にやりと不敵な笑いを浮かべます。『いかにも、私がヴァンデミアだ。だが、私をどうやって倒すつもりだ? 私を殺せば、この娘も死ぬことになるのだぞ!』 さあ、あなたはどうしますか?」
マシロン「下手な選択をすると、バッドエンドだらけなんだな、ここ。とりあえずは、力づくで少女を取り押さえて、悪魔犬と体を入れ替えたいところだが」
晶華「マシロン君が飛びかかると、少女姿のヴァンデミアは身軽に体をかわしました。唇に冷酷な微笑を浮かべると、その目が緑色に妖しく光ります。〈銀のサークレット〉を身につけていますか?」
マシロン「もちろんだ。そのために、いろいろと苦労したんだからな」
晶華「では、サークレットを持たないアナザー展開は、EX記事に回しましょう。今回はトゥルー・エンディングを目指すということで、パラグラフ454番です。見覚えのあるサークレットの魔力で魂交換の能力が通用しないことに気づいたヴァンデミアは、顔色を変えて逃げ出しました。さっきの悪魔犬の大広間を目指しています」
ルビーK「そこでは、わたしが待機しています。ピンクの象になってる悪魔犬を見て、ヴァンデミアがどんな反応を見せるか楽しみ。あ、それと、わたしはPONと姿を消しているから。まさかとは思うけど、精霊獣でもヴァンデミアの憑依の的にされたら大変だから」
晶華「ええと、ヴァンデミアは隠れているルビーKには気づかないってことで。とにかく、ピンクの象になってる悪魔犬を見て、『下手な小細工を!』と憤りの声を上げて、つないでいた鎖を外すと、少女の体は急にぐったりとなって、床に倒れてしまいます。同時に、悪魔犬は……」
ルビーK「悪魔犬じゃなくて、ピンクの象!」
晶華「ううっ、ピンクの象は急に凶暴になって、暴れ出します。その目は緑色に輝いていますね」
マシロン「どうやら、うまく行ったようだね。次は、少女の体からヴァンデミアの象を引き離さないと。うわあ、凶暴な象が襲いかかってくるや。撤退しないと。逃げろ〜、と玉座の間に後退する」
ルビーK「マシロン様、演技が白々し過ぎ」
マシロン「正直に生きてきたもので、嘘には慣れていないからね。とにかく、ヴァンデミアが憑依できる体を10メートル範囲に置かないことが大事。死にかけのヴァンデミアが、もう一度、アムの体に戻ったり、ここにザックを呼んだりしたら、バッドエンドだからね」
ルビーK「アムさんの体と、ザックさんの足止めはわたしに任せて。マシロン様は、玉座の間でヴァンデミアと一騎討ちを頑張って……と思念を送る」
マシロン「いや、厳密には一騎討ちをするつもりもないんだけどね。とにかく、玉座の間を決戦場に決めて、ヴァンデミアを誘導する」
晶華「象の姿のヴァンデミアは、マシロン君を追っているうちに、ルビーKの幻術の効果範囲を外れて、元の悪魔犬の姿を取り戻します。さあ、玉座の間では、逃げも隠れもできません。最終決戦の開始ですよ」
●悪魔犬:技術点12、体力点20
マシロン「技術点で1差で勝っているから、このまま戦っても多分勝てると思うけど、最後は獣使いらしく、派手に行かせてもらう。出でよ、暗黒ナンバーワンの象徴たるブラックドラゴンよ!」
マシロンは、体力点を1点消費して(本来なら7点消費だが)、混沌の世界のどこかにいるであろう暗黒龍を召喚した。
運も12になっているので、運だめしも失敗せずに、召喚成功。
こうして、龍使いマシロンと、悪魔犬ヴァンデミアの決戦が始まったのである。
ブラックドラゴンVS悪魔犬
轟音と衝撃が城を震わせた。大理石の壁ががらがらと崩れ落ち、黒い鱗に覆われた巨大な爬虫類の首がぬぅっと現れる。
成長した獣使いの呼び声に応じて、暗闇の世界に巣食う最強クラスのモンスターが召喚されたのだ。巨大な二頭の怪物が互いの毒を吐き合うが、いずれも毒には耐性を持っていて通用しないことを知るや、肉弾戦での激突に入る。
●黒龍:技術点14、体力点20
ルビーK「召喚獣のダイスは、わたしが振っていいのね。技術点2差で勝ってるから、余裕で倒せるはず」
マシロン「うん。勝てるのは間違いないと思うけど、できれば互いに体力点を削りあって、ギリギリの勝負をして欲しい。ヴァンデミアは自分が倒されると、殺した相手の体に移り替わるようだから、勝ったドラゴンの相手をボクがしないといけなくなる。さすがに体力十分なドラゴンと戦いたくはないし」
ルビーK「つまり、わたしがヴァンデミアに勝ったら、今度は暗黒ナンバーワンの座をかけて、わたし=ヴァンデミアがマシロン様と決着をつけるってことね」
マシロン「う〜ん、ルビーKと戦うんじゃなくて、プレイヤーの翔花がラスボスってことになるのかな?」
晶華「ディレクターの私を差し置いて、お姉ちゃんがラスボスを操作するなんて、第1部の再現じゃない! ここは番狂せで、悪魔犬が勝ちを狙わせてもらうわ」
ルビーK「そうはさせない。暗黒ナンバーワンの座は、わたしの物」
こうして、花粉症ガール同士のラスボスの座を賭けた戦いが始まった。
もっとも、体力点20点同士の削り合いを延々と、文章につづっても、書く方も読む方もつまらないと思うので、略式経過だけ。
4ラウンドめまで、黒龍が順調に攻撃を命中させ続けて、悪魔犬の体力は12点に。
5ラウンドめで、悪魔犬が勝って、黒龍18点。
6ラウンドめも、悪魔犬が意地を見せて、黒龍16点。
7ラウンドから9ラウンドめまでは、黒龍の勝ち。悪魔犬は残り6点になる。
10ラウンドめは悪魔犬が勝って、黒龍14点にするものの、それが最後の抵抗で、13ラウンドめに黒龍が悪魔犬にとどめを刺す形で、暗黒ナンバーワン決勝大会の第1試合が終了した。
救世主VS最後の暗黒の決着
晶華「くっ、ラスボスの座は、お姉ちゃんに譲り渡すわ」
ルビーK→翔花「それでは、黒龍の目が緑色に輝いて、わたしがヴァンデミアを操作します。まずは、元ご主人のマシロン様にあいさつ代わりの毒ガスを吹きつけるわ」
マシロン「フフフ。こんなこともあろうかと、〈毒消し〉は入手済みだ。毒など、救世主のボクには通用しない」
ヴァンデミア(翔花)「だが、わたしの技術点14に太刀打ちできるかな?」
マシロン「ボクの技術点は13だけど、ここに取り出したるはドラゴンスレイヤー+4。これで、技術点17で攻撃できる」
ヴァンデミア「何と。このわたしを貴様ごとき人間が罠にはめたと言うのか?」
マシロン「ついでに、これで最後だから、大盤振る舞いで〈体力増進の薬草酒〉を飲んで、攻撃力をさらに+1にする。技術点18という神にも匹敵する戦闘力で、お前を討つ! 今、ボクの身にはグァンドゥムが宿る!」
●機動救世主Gマシロン:技術点18、残り体力点17(Gはグァンドゥムではなくて、ゴッドネスの略)
●暗黒龍ヴァンデミア:技術点14、残り体力点14
晶華「では、救世主VS暗黒龍の最終決戦を、私は実況します。解説役は、ザックさん役のナイン君にお願いします」
009「解説と言っても、もう、これは問題なく、マシロンの勝ちじゃないか? たとえ、ヴァンデミア(翔花)のダイス運が、マシロン(シロ)よりも良かったとしても、技術点4差を覆して逆転勝利を果たすとは考えにくい。これで、マシロンが負けたら、シロ君は己がダイス運の悪さを呪いながら、潔く腹を切る覚悟をしないとな」
晶華「おっと、ザックさんから『負けたら死ね』宣言が下されました。このプレッシャーを我らが救世主は払いのけて、物語をハッピーエンドにできるでしょうか? それでは、長かった『暗黒の三つの顔』最終バトルの開始です!」
1ラウンドめ。マシロン26VSヴァンデミア19。マシロンはさらに運だめしで追加ダメージ。ヴァンデミアにダメージ4点(残り10点)。
2ラウンドめ。マシロン26VSヴァンデミア21。マシロンはさらに運点10で運だめし。8で成功して、ヴァンデミアに4点ダメージ(残り6点)
3ラウンドめ。マシロン28VSヴァンデミア22。マシロンはさらに運点9で運だめし。6で成功して、4点ダメージ(残り2点)
マシロン「フフフ。ヴァンデミア、このゴッドネスな救世主に最後に言い残したいことはあるか」
ヴァンデミア「愚かな人間ごときが神気取りとは片腹痛いわ。ここでわたしを倒しても、いつか雪辱を果たしてくれよう。さあ、来るがよい」
マシロン「では、最後の一太刀を浴びせよう。(コロコロ)出目8で、攻撃力26」
ヴァンデミア「6ゾロが出れば、まだ行ける。(コロコロ)惜しい、11だった」
マシロン「龍の爪が、ボクの武者兜をかすめて弾き飛ばしたけど、ボクのドラゴンスレイヤーが黒龍の心臓を貫き通して、トドメを刺した。こうして、ボクは龍使いと龍殺しの栄誉を同時に獲得したことになる。まさに、アイ・アム・ヒーローってところだな」
晶華「はい、お姉ちゃん、お疲れさま。ヴァンデミアからルビーKに戻っていいわよ」
ルビーK(翔花)「はあい。2回もラスボスを遊べて、満足よ」
晶華「黒龍を倒したマシロン君。しかし、その足元を小さな虫が走り抜けました。その目が緑色に光っているのを見逃さず、素早く踏みつぶします」
マシロン「いや、それだと足が汚れる。相手が虫なら、虫殺しのナギナタで突き刺して、即死させる」
晶華「すると、遠いどこかで悲鳴が聞こえたような気がしました。どこかの魔界に本体があるヴァンデミアが、魂を砕かれた断末魔なのだろう、とグァンドゥムが教えてくれます。近くに動く気配もなく、これでヴァンデミアも最期の時を迎えたのだ、と確信しました」
マシロン「師匠、遺言は果たしましたよ。笑顔を浮かべながら、天を見上げます」
パラグラフ600番
晶華「ヴァンデミアにとどめを刺すことに成功した救世主マシロン君は、大広間に戻りました。ザックさんが倒れていた少女を解放していますね」
ザック(009)「マシロンの目は緑色になっていないよな」
マシロン「そう言うザックの目も大丈夫だな」
ルビーK「ここで、わたしが幻術で2人の目を緑色にしてみせたら、たちまち殺し合いが始まりそうね」
晶華「本当にそんなことをしますか?」
ルビーK「冗談よ。ここまで来て、そんなことをしたら、わたしが読者さんに怒られそうだし。ルビーKは、小悪魔ちっくな妖精だけど、本当の悪魔に身を堕とすつもりはないわ。今のわたしは救世主の介添役を楽しんでいるんだから」
晶華「それを聞いて、安心したわ。やっぱり最後はハッピーエンドがいいものね」
ザック「そうだよ、ハッピーエンドだ。悪魔の落とし子を全滅させるのに苦労はしたし、ボロボロになったが、好みの女の子に出会えて、上機嫌だぜ。冒険の終わりは、やっぱりこうでなくっちゃな」
晶華「ずっと悪魔犬の体に閉じこめられていたアムさんは、元の体に戻れた嬉しさに、ザックさんに抱きついて、すすり泣いています」
ザック「よしよし。俺たちが、家に連れ帰ってあげるからな。安心しろ」
マシロン「じゃあ、しばらく待って、アムさんが落ち着くのを見てから、ここを出よう。ザックも治療は必要だろうし、どこかで体力を回復できないだろうか?」
晶華「そうですね。ヴァンデミアが倒されたことで、暗黒も晴れたのか、遠くからリーブラ様の声がルビーKに聞こえたことにしましょうか」
ルビーK「え? 大陸を越えて、リーブラ様の加護が届くの?」
晶華「一時的なものだけどね。そして、リーブラ様への願いは大盤振る舞いで、次の3つのどれかが叶えられます。1つ、能力値の完全回復。2つ、窮地からの脱出。3つ、呪いや病からの回復」
ザック「『ソーサリー』と同じ効果だな」
マシロン「だったら1番……いや、2番かな。この地下世界から、ケイベシュの地上に脱出させて。そこで、師匠の盾とか装備を回収して、朝になったらアシュカイオスに向けて旅立つ」
ザック「アシュカイオスまで行く……というのは無理か。そこまで長距離には飛べなかったもんな、『ソーサリー』のリーブラ加護は」
晶華「では、ケマンダー師匠の盾が目印になって、あなた方はアムさんも含めて、地上に転移できます。支配者のヴァンデミアが倒された以上、この地に巣食う混沌勢力も烏合の衆になったので、アリオンを中心にした派遣軍が遠からず一掃してくれることでしょう」
ザック「俺もその軍には志願したいところだな」
晶華「それは未来の話として。その前にアムさんを連れて、アシュカイオスの街まで帰還したあなた方は、英雄として喝采を受けて、盛大な宴を催してもらえます」
ザック「俺はできれば、アムさんといっしょに、この街でしばらく暮らしたいんだが?」
マシロン「え?」
ザック「いやあ、ここまで、お前の旅に付き合って来たけど、世界も救ったし、可愛い彼女もできた。俺としては、これ以上ないハッピーエンドだと思うんだよ」
マシロン「アランシアには帰らないのか?」
ザック「このクールの地にも冒険のネタは転がっているし、アリオンの若き領主の運命も見守りたいし、このアシュカイオスも俺の故郷のシルバートンより危険が多そうだ。見過ごしにはできないんだよ。だから、アリオンまでは、お前といっしょに帰る。領主にも報告しないといけないからな。その後は、別れ別れだ。お前もクールに残るってんなら、また付き合えるだろうが」
マシロン「ボクは……」
ザック「どうするかは、お前次第だ。俺とともにクールに留まるか、それとも俺と別れて、違う大陸に旅立つか」
マシロン「それって、ゲームブック本来の600番とは少し違いますよね」
晶華「ええ。クールに留まるか、冒険の旅を続けるかは同じですが、原作ではザックさんがアムさんといっしょにはならず、冒険を続けるエンドなんですね。だけど、当記事でのザックさんは、アムさんと添い遂げるエンドを要望している、と」
ルビーK「恋人ゲットで、冒険生活を引退するって言うの?」
ザック「広く世界を回る旅が終わりってだけで、守りたいものができたから、それを守ることを優先するようになったって話だ。まあ、アリオンやアシュカイオスを舞台にした冒険なら、続けていくだろうな」
救世主のその後
ザックが旅をやめるとは思わなかった。
根っからの冒険者で、今後もいっしょに旅を続けるものとばかり思っていたからだ。
だけど、三つの大陸を巡って、強大な暗黒を退治する旅が終わった後は、ザックはいち早く第2の人生と伴侶を見つけ出した。このフットワークの軽さと、人との交友関係(同性異性を問わず)を紡ぎ上げる巧みさこそがザックの長所なんだろうな。
でも、ボクはそこまで、まだ自分の道を見出せずにいた。
ルビーKにも言ったけど、まずアランシアに戻って、師匠の墓に報告。それはいいけど、その後はどうする?
ヨーレの森に行って、ハーフエルフの人たちと魔法修行をするという手もある。だけど、波乱万丈の冒険を終えた後では、再修業なんて退屈すぎるかもしれない。ボクの魔術は、実戦で磨き上げたものだし、やや異端なところもあるのだろう。
ルビーKは、ボクにずっと付き合ってくれるって言ったけど、同時に、ボクに神さまか領主になって、人を支配することを求めてくる。それだけの力があるんだから、上に立つのが当然だって。
だけど、ケマンダー師匠だって、荒野に隠遁して暮らしていたじゃないか。ボクを養育するためだったら、別に隠遁生活に甘んじていなくても良かったはず。
それとも、師匠は孤独なのが性分だったのだろうか。
ザックが盗賊都市に、憧れの英雄の痕跡を求めたように、ボクも師匠の痕跡を求める旅をしてもいいのかもしれない。だったら、ブラックサンドのニカデマスさんや、まだ会ったことのないヤズトロモさんを訪ねて、三つの暗黒を封印する以外の師匠の動向を聞くのもいいだろう。
他には、南アランシアへ行ってはどうか? とルビーKが主張したりもした。そこに何があるのか尋ねてみたら、カラメールという街で人が神になって、奈落の帝王という悪魔を退治したという噂が話題になったそうだ。
ボクも救世主や神を自称して、妖魔ヴァンデミアと対峙したことはあるが、あれは脳みそ怪物の影響で思考が高揚したなかでの、理性が吹っ飛んだ心理状態なんだと思う。分かりやすく言うなら、お酒を飲んでテンションが舞い上がった状態。あるいは周囲の混沌に当てられたのかもしれない。
冷静に考えると、人が神になるなんて眉唾だ。伝説の英雄は数々いるけど、神になった英雄って誰かいる? 混沌の妖魔と戦う際に、神さまの力を求めることはあっても、神さまに助けてもらうのと、自分が神さまになるのとでは雲泥の差がある。
神学なんかを学んでみるのもいいかもしれないな。
ボクはケマンダー師匠から全てを学べないまま、冒険の世界に足を踏み入れた。師匠がボクに教えようとして、教え残したことがあれば、そこをまずは押さえておきたい。
ザックは冒険者の先輩としてボクを導いてくれたけど、ボクが欲しいのは、そういう先達なんだろうな。師匠だろうと、先輩だろうと、ボクはまだまだ学び足りないと思っているから、ボクの旅の目的は指導者探しから始めないといけないのかもしれない。
そう、他人を支配するとか、指導する前に、ボク自身が師匠みたいに導いてくれる人を探しているのだろう。ただ、支配や隷従は受けたくないので、自由人ながら師匠になってくれる稀有な人物がいればいいんだけど、そんな都合のいい人物はどこにいるだろうか。
とにかく、ボクの旅の目的は、新たな師匠探しになるかもしれないし、その師匠がもしかすると、神になるか、精霊になるか、それとも隠遁した賢者になるかは分からない。
だけど、まずはアランシアの名高い賢者と呼ばれる人物から訪ねてみようとは思う。
自分の今後の指針を見出すために。
(当記事 完)