ケイベシュ? ケイベッシュ?
晶華「前回は、アリオン市から古戦場跡を経て、西のアシュカイオス、そして重要な情報&アイテム入手ポイントの〈ハマカイの塔〉までをクリアしました」
マシロン(シロ)「今回は、敵の妖魔ヴァンデミアが潜んでいるケイベシュへ侵入することになるわけだ」
ルビーK(翔花)「ところで、廃都ケイベシュは、ケイベッシュとも書いてあるんだけど、どういうこと?」
晶華「88年の当ゲームブック執筆時は、山本さんがケイベッシュと表記していたのですが、その後、『タイタン』でケイベシュ表記が定着したので、今ではッを付けないのが公式訳になってるの」
ザック(009)「ニコデマスは追悼本で、現代の表記のニカデマスに置き換えたのに、ケイベッシュは昔のままなんだよな。あまりメジャーじゃない地名なので気づかれなかったか、気づいていても、当時の地図でしっかりケイベッシュと書いてあるから、変えにくかったのかもしれないが」
晶華「ここで『タイタン』の歴史を語っているときは、資料に合わせてケイベシュと書いて、本編ストーリーを追っているときはケイベッシュと書いていたのですが、記事公開後に表記がいろいろブレていることに気づいたから、後から現代の表記に合わせたケイベシュに極力、統一することにしたの。以降もケイベシュということでよろしくね」
★獣使いマシロン(プレイヤー:シロ、パラグラフ517)
・技術点10
・体力点21/22
・運点11
・食料:5
・金貨:33枚
・薬:技の薬(技術点回復)、ツキ薬(運点回復)、体の薬、飛行薬、透明薬
・所持品:背負い袋、ナイフ、兵士の剣、獣皮の服、15メートルの縄、ランタンと火口箱、骨の髪飾り(ネズミとコウモリをただで召喚可能)
・ルビーK関係:銅の指輪(ケイとの契約指輪)、ケイのルビー(精霊ケイの力の源。獣モードの額に付いている。大爆発の危険あり)、銀の盾(ケマンダー師匠の遺品)
廃都ケイベシュへの旅路

晶華「では、広野を南に向かい、ケイベシュを目指します。ランダム遭遇が発生しますので、サイコロ1個を振ってください」
ザック「今回は俺が振ろう。(コロコロ)2だ」
晶華「では、砂の中から体長20メートルもある大砂蛇(技10、体20)が出現します。ザックさんの援護でマシロン君は技術点+2できますが、もしも敵の攻撃が2回連続で命中すると、巨大な口で丸呑みにされて、ゲームオーバーです」
マシロン「それは……2差で勝っているとは言え、リスクがあまりにも大きすぎるな。魔法で追い払ったりはできないの?」
晶華「体力点5消費すれば、できますよ」
マシロン「だったら、そうする。敵の体力点20を削るのも、手間暇が掛かるしね」
晶華「それなら、獣使いのパワーで大砂蛇はおとなしく、地中に帰りました」
ルビーK「さすがはマシロン様。相手が自然界の獣だったら、敵なしね」
マシロン「ちょっと疲れたけど、酒場のケンカでボコボコにされるよりはマシだな(残り体力16点)」
晶華「それでは、次のイベントです。ケイベシュまでもう少し、というところで、幅100メートルもある深い峡谷に差し掛かりました。下を見ると激流が渦を巻いていて、落ちたくはありません。崖はほぼ垂直に切り立っていて、登り降りは不可能です。目につく範囲に吊り橋がありますが、長いこと使われていないらしく、ひどく痛んでいて、今にも落ちそうです」
ザック「さて、マシロン。どっちが先に渡る?」
マシロン「ここが運命の分かれ道だ。グァンドゥムが言っている。正解はボクが先に渡ること。2人めは橋が崩れて、川に転落する運命だ。だからザック、君にはこの飛行薬を渡しておくので、後から飛んで来て欲しい」
ザック「分かった。しかし、お前が間違って、川に転落するなよ」
晶華「マシロン君は、運だめしをして下さい」
マシロン「12が出なければ、大丈夫。(コロコロ)よし、8で成功だ」
晶華「失敗したら、橋を支える縄の一本が切れて、技術点判定を求められます。それでも失敗すれば、川落ちルートに入って、真のエンディングには至れません」
マシロン「大丈夫だ。ボクは川を渡りきった」
ザック「次は俺の番だな」
晶華「ザックさんが渡ると、グァンドゥムの予言どおり、吊り橋が切れて、ザックさんは空中に投げ出されます」
ザック「おっと、こんなこともあろうかと、飛行薬を準備中なのさ。ゴクゴクと飲んで、空中をフワフワ浮遊するぜ」
晶華「本当はザックさんが飛行薬を飲む展開はないのですけどね。マシロン君が飛行薬を飲んで渡ろうとした場合と、同じ処理をさせてもらいます。この谷間をねぐらにしているコウモリ人間が3体飛んで来て、空中のザックさんを襲撃してきます。相手の技術点は8と9ですね」
ザック「技術点10のマシロンならともかく、技術点12の俺なら、こんな奴ら、楽勝だぜ」
マシロン「ボクはコウモリを体力消費なしで操れる。地上からザックを支援したいんだが」
晶華「コウモリ人間はただの獣じゃなくて、知性がありますので操ることはできません。それでもザックさんは慣れない空中戦を、持ち前の優れた運動神経で克服し、やがてコウモリ人間3体を切り捨てることに成功しました」
ザック「どんなもんだい。このザック様の手にかかれば、空中戦ぐらい何のその……」
晶華「しかし、その瞬間、飛行薬の効果時間が切れました」
ザック「ヘッ?」
晶華「そのまま真下の激流に落下します」
ザック「うわーーーーっ」
マシロン「(冷静に)さらば、ザック。君のことは忘れない」
ルビーK「えっ、ザックさん。これで終わったの?」
マシロン「大丈夫。グァンドゥムが言っている。ザックのことだ、そう簡単に死ぬことはあるまいって。ここでザックの後を追って、川に飛び込んでも、助け出すことはできないし、真のエンディングには到達できなくなるんだ。だから、ボクはザックとの再会を願いながら、自分の道を進み続けるしかない」
晶華「それでは、川落ちルートはIFルートってことで、下流に流された先のパラグラフ538番を後で語るとしましょう。今は、ザックさんとの不幸な別れを惜しみながらも、パラグラフ450番、廃都ケイベシュについに到着です」
呪われた都ケイベシュを前に
マシロン「ザックと別れて、寂しい気持ちでケイベシュの街にとぼとぼたどり着いたわけだが……」
ルビーK「大丈夫。マシロン様には、わたしが憑いているから」
マシロン「憑いているって、幽霊かよ」
ルビーK「精霊だけど、一回死んでるから、幽霊と大差ないかもね。だけど、アンデッドってわけじゃないし」
晶華「幽霊と精霊の違いは難しいけど、ファンタジーの世界では『死者の魂が転生できずにさまよっているのが幽霊で、何らかの未練を残していて、それが解消すれば輪廻の軌道に戻ることができる』と言ったところね。一方、精霊は『精霊界という異世界を出自にしていて、そこから召喚されたもの』や『現世にある生物や無生物の中にある気が凝縮して、半ば実体化したもの』などが考えられるわ」
ルビーK「幽霊は生前の姿形に縛られるけど、精霊はもう少し自由よね。不定形ではあるけど、召喚者や契約者の想念(イメージ)に影響を受けやすいというか、たぶん、幽霊は自身の怨念や未練が強いから自らのイメージで姿形が決まる。だけど、精霊は自我が薄いから、他からのイメージを反映しやすいのだと思う」
晶華「私たち花粉症ガールは、NOVAちゃんの空想妄想から生まれたものだけど、植物の精霊ドライアドのファンタジーイメージを強く持っている。NOVAちゃんは時空魔術師にして、言霊魔術師だから、言葉によって存在を定義する魔力を持っていて、物語の力を扱うこともできるんだけど、言葉を現実に変えるには多くの想念や魔力を必要とするわけで……と、私たちの話は置いておいて、ルビーKの話よね」
ルビーK「ルビーKは、暗黒の魔女ミューマ・バジオと名乗ったケイ・キノックスが、鋼鉄ゴーレムの動力源である魔力のルビーに自らの血を捧げて、その魔力で亡者と化した存在ね。その段階では、幽霊、悪霊の類だったんだけど、マシロン様に鋼鉄ゴーレムを倒されたことで、一度、調伏された形になる」
マシロン「調伏された霊魂はどうなるんだ?」
ルビーK「聖職者がしかるべき儀式を行えば、輪廻転生の軌道に戻すことができるし、妄執が強すぎる悪霊だったら、儀式を受け付けずに呪われた魂のままに在り続けるかもしれない。あまりにも強い悪霊は、何かの物品や誰かの肉体に取り憑くことで実体を得て、妖怪化することも考えられるわ」
マシロン「つまり、幽霊のケイさんは、妄執が強すぎた、と?」
ルビーK「妄執だけじゃなくて、やはり魔力のルビーを依代にしたために、そこに秘められた膨大なエネルギーに縛りつけられてしまったのね。だから、幽霊のケイは、ルビーの魔力を吸収したか、あるいはルビーそのものに取り込まれて〈ルビーの精霊〉に変質してしまったの。意識や記憶は幽霊ケイなんだけど、存在の本質はアンデッドから魔法生物に置き換わっている。だから、聖職者に悪霊祓いされても消えないけど、ルビーの魔力を封じられると滅ぼされる。ただし、ルビーの魔力は膨大なので、下手に破壊すると大爆発を起こすし、簡単には封じることができない」
晶華「まるで厨二病みたいな、無敵設定ね」
ルビーK「そのまま放置すると大変危険な存在なんだけど、ケマンダーさんの盾に込められた正義の心がわたしの邪念を中和しているところを、マシロン様が精霊契約の儀式を行うことで、ルビーKは従僕の自我を植えつけられた。マシロン様は、獣使いの能力を習得していて、わたしに獣の姿を与えることで、精霊獣ルビーKが構成された。その後、女神リーブラ様に無理やり帰依させられて、聖女としての自覚も芽生えたんだけど、暗黒の魔女としての思考の癖も健在なので、いろいろ矛盾した存在になっているのね」
マシロン「元のケイの記憶や人格は残しつつ、ケマンダー師やボク、リーブラ様の影響を強く受けるようになって、変質したってことか?」
ルビーK「いろいろ洗脳されたから、その分、思考力が落ちてバカになった? まあ、狡猾で邪悪な敵が、主人公に負けて感化されたことで、味方になると、愛されポンコツキャラに転向するようなもの?」
晶華「敵が味方になると、日常生活の解像度が高まったり、周囲との人間関係が変化することで、キャラ変が生じることもフィクションあるあるよね。ただ、そのキャラの本質がどこにあるか、そこがブレない限りは問題ないと思うわ。敵に対しては残虐だったキャラが、味方になると仲間想いになることもあるし、残虐に振る舞おうとしても、惚れた相手に感化されて自制することを学んだりもする」
マシロン「理由もなくいきなりキャラ変すると、ツッコミどころだけど、物語の流れに応じて、次第に変化を見せるのは、キャラの成長とも言えるもんな」
ルビーK「リアルな人間だって、尊敬できる人の薫陶を受けて感化されたり、欲望に流されて堕落したり、いろいろな人生模様があるものね」
マシロン「とにかく、ルビーKは、ボクとともに成長中の生きた存在であって、妄執に縛られた亡霊ではないってことだな」
ルビーK「ああ、わたしが暗黒ナンバーワンになりたいって気持ちは変わらないわ。他人の手でこの世界を破壊されることには、我慢がならない。だって、この世界を破壊するのは、わたしの夢だったもの。わたしが果たせなかった夢を、誰かが果たしたら悔しいじゃない? この世界は、わたしが破壊するか、支配するかのどちらかなんだから、その前に破壊なんてさせない。今の行動動機はそんな感じ?」
マシロン「だから、破壊なんてボクは認めない」
ルビーK「だったら、救世主として支配してよ」
マシロン「それもボクの夢じゃない」
ルビーK「だったら、マシロン様の夢は何? 三つの暗黒を倒して、師匠さまの遺言を果たした後は何をするつもり?」
マシロン「う〜ん、そうだな。まずは故郷に帰って、師匠の墓前に報告して、その後は……修行と冒険の毎日かな。救世主として、困っている人を助ける旅を続けたい」
ルビーK「……つまらないわね。どこかの国を支配して、王さまになろうとは思わないわけ?」
マシロン「束縛されるのは嫌いなんだ。自由な獣のように、この大地をいつまでも駆け続けたい。そういう夢は……つまらないのかな?」
ルビーK「自由気ままな冒険者。邪魔する者は成敗する。どこまでも駆け抜ける一陣の風になりたいってこと?」
マシロン「まあ、何を願うにしても、大地の精霊グァンドゥムに相談してからってことになりそうだけど」
晶華「そこでグァンドゥム落ちとはね(苦笑)。もう、マシロン君はグァンドゥム教の教祖になるのがいいんじゃないかしら」
ザック→009「キャラの設定語りに夢中になるのはいいけど、寄り道はそれぐらいにして、そろそろ話を進めてくれないか? 何だか俺が行方不明のまま放置されているようで、寂しいんだ」
晶華「そうね。特別に、ザックさんが激流に落下した後の話もシーン構築してあげるわ。それまで、ナイン君として好きにツッコミ入れてくれていいから」
009「分かった。ザックの再登場までは長いからな。特別シーンを期待しているぜ」
ケイベシュ神殿の恥辱
晶華「では、改めてケイベシュです。先ほどまでのマシロン君とルビーKの会話は、廃墟に到着するまでのお喋りだったということで、適度に交流を深めた、と。そして到着した廃墟は非常に静かです。混沌の軍勢がいるかと警戒していたら、意外と静かな感じで拍子抜けです」
マシロン「今はまだ昼かな?」
晶華「日暮れまで2時間ぐらいはありそうですね」
マシロン「探索する時間は十分ありそうだな。夜になると、地下からわらわら混沌の生き物が出て来そうだから、その前に潜伏場所を確保しないと」
ルビーK「神殿があるはずよ。そこなら、安心して過ごせるかも」
マシロン「じゃあ、神殿らしい建物を探してみる」
晶華「建物の多くは崩れていましたが、街の中心に大きな神殿がほとんど無傷で建っていました。入り口は一つしかなく、その横には大きな石像が立っています。その瞳には、赤く輝くルビーがはめ込まれていて、マシロン君はアランシアの鋼鉄ゴーレムを思い出しました」
マシロン「ゲッ。こいつも、もしかしてゴーレム?」
ルビーK「目からビームを撃って来そう」
マシロン「ハハハ、ルビーKではあるまいし。警戒しながら近づいてみると?」
晶華「すると、二条のルビービームが放射されます」
ルビーK「やっぱり、そう来るわね」
晶華「光線をかわすために運だめしをして下さい」
マシロン「8で成功」
晶華「直撃を免れましたが、少しかすめたので1点ダメージです」
マシロン「残り体力15点。念のため、直撃していたら何点ダメージだった?」
晶華「5点ですよ」
マシロン「あと3回くらったら死ぬな。少し下がって、対策を練らないと……」
晶華「ここで選択肢は、獣を召喚するか、神殿を無視して他を探すか、薬を飲むか、ですね」
マシロン「獣を召喚しても、無駄にビームで焼き殺されるだけ。他を探すとサークレットなしで地下へ潜入することになる。ここは〈透明薬〉を飲んで、ゴーレムの監視をすり抜けるしかないんだが……」
ルビーK「ないんだが?」
マシロン「〈透明薬〉を飲む。体は透明になる。しかし、身につけている装備や所持品までは透明にならないので、ゴーレムの監視をすり抜けるには裸にならないといけないんだ(赤面)」
009「このネタは、いかにも山本さんらしいよな。とにかく、あの手この手で、プレイヤーキャラクターを脱がせようとして来るのが当時の山本さんだった。88年といえば、ジャンプで『BASTARD』が連載されて、美少女だろうと男だろうと脱がせようとするファンタジーが世を席巻し始めて、それが少年読者に人気になるものだから、山本さんもその波に乗っていたわけだな」
ルビーK「今の時代に同じことをやったら、セクハラで訴えられて、ウォーロック誌が18禁指定を免れないわね」
マシロン「ただ裸になるだけじゃなくて、ここで全ての装備、所持品、食料、薬、金貨を残していかないといけない。つまり、神殿の中に入って、〈銀のサークレット〉を入手するためには、それまで手に入れたアイテムを全て捨てていかないといけないんだよ」
ルビーK「後で回収したりはできないの?」
晶華「ゲームをクリアするまでは無理。だから、このゲームは、全てのアイテムを犠牲に〈銀のサークレット〉を入手するか、アイテムを惜しんで〈銀のサークレット〉なしで地下に突入するかの2択になる」
009「だけど、初見でアイテムを全て失うことが真のエンディングへの道、と看破できるプレイヤーはまずいないよなあ。アイテム全ロストは失敗ルートと判断して、神殿には入らずに地下に入って……まあ、もう一つのエンディングを心に焼きつけたウォーロック読者は多かったはず」
マシロン「真のエンディングを見るために、アイテムを全てここに残していくのはやむを得ない。しかし、当記事ではその際に大きな問題が発生する」
ルビーK「何なに?」
マシロン「アイテムの中には、ルビーK関係の〈銅の指輪〉〈ケイのルビー〉、それにケマンダー師匠の〈銀の盾〉が含まれるんだよ。それらを残して行くなら、ルビーKともここでお別れしないといけない」
ルビーK「そんな! わたしを置いて、1人で先に進むって言うの? 君といつまでも一緒にいるよ、と愛を囁いてくれた、あの夜の言葉は全部、嘘だったの?」
マシロン「いや、そんなことを言った覚えはないんだが?」
ルビーK「その指輪は呪われています。決して捨て去ることはできません」
マシロン「いやいや、それは第1部だけの設定のはず。ケイの死とともに呪いは無効化されたんじゃないか」
ルビーK「その後、わたしと契約した際に、もう一回、呪われたの。契約精霊の儀式を行なったあの夜から、わたしとマシロン様は一心一体。エンゲージの魔力で病める日も、健やかなる日も、死が2人を分かつ時までいっしょよ。この誓いを無効化することは、たとえアキちゃんだろうと、山本弘さんだろうと許されないんだから」
009「ヤンデレかよ」
マシロン「ボクだって、ここでルビーKと別れて、この先を1人で進むのは寂しい。だけど、ゲームブックのストーリーを崩さずに、話を進めるためにはディレクターが多少の融通を利かせてくれないとな(チラッ)」
ルビーK「アキちゃん、お願い。わたしとシロちゃんの関係を認めて」
晶華「お姉ちゃん、どさくさ紛れにゲームと、この場の現実を混ぜないで。お姉ちゃんをシーさんに取られるのは認めたくないけど、ルビーKとマシロン君を引き離したりはしません。ええと、〈銅の指輪〉と、それに付いている〈ケイのルビー〉はルビーKの幻術で透明になりました。ただし、ケマンダーの盾は残して行って下さい」
マシロン「師匠の遺品は持って行けないのか。だったら、他の装備品とまとめて、近くの適当な建物跡に残しておく。後から戻ってきて、しっかり回収できるようにな。そして、持って行けないポーションを飲んで、体力点と運点を回復してから、裸の状態で〈透明薬〉を飲む」
晶華「本当は、〈透明薬〉を飲んでから、装備が消えないのに気づいて、慌てて全部脱ぎ捨てるシーンなんだけど、グァンドゥムのお告げを聞いたりして、するべきことを分かっているという裁定にしてあげる」
ルビーK「わたしもPONと姿を消して、契約指輪も透明になるわ。そのまま神殿へ乗り込むと?」
晶華「それでもゴーレムは反応しました。ルビービームを発射しますが、透明な体をすり抜けて、何の被害も与えません」
マシロン「透明に対しても反応するのか。恐ろしい感知性能だな。〈透明薬〉が光線無効の性質があって良かったよ」
晶華「ゴーレムの妨害をすり抜けて無事に神殿に入ります。そうして長い廊下を歩いているうちに、やがて薬の効果が切れました」
ルビーK「マシロン様の体をジロジロ見回します」
マシロン「視姦はやめろ。男だって恥ずかしいんだから(赤面)」
ルビーK「大丈夫。タヌキの姿だと、わたしも裸だから」
マシロン「モフモフの毛皮に包まれているだろう? こっちは、いつもの〈獣皮の服〉がなくて、スースーするんだから。おまけに武器だってないし」
晶華「武器を手に入れるまで、戦闘時の技術点がマイナス3点されるから」
マシロン「ううっ、こんな辱めを受けないと、真のエンディングを見られないなんて、作者が故人でなければ、恨んでやるところだが」
009「40年近くも前の作品なんだから、時効にしておけ。裸で夜中の街を走り回されたハーフエルフのアリシアン*1に比べたら、誰も見ていない神殿で裸になるぐらい何だ?」
マシロン「ザックがここにいなくて良かった、とつくづく思う」
晶華「裸を恥ずかしがっているマシロン君が、ルビーKにイジられながら通路の先の扉を開けると、奥の宝物庫に到着しました。部屋の中央の台座には、話に聞いた〈銀のサークレット〉が置かれています」
マシロン「頭に装着します」
ルビーK「まるで裸の王さまね」
マシロン「ううっ、宝物庫だったら、他に何かないか? 身にまとうマントとか、武器になりそうなものとか、布切れでもいいし、カーテンとか……(涙目)」
晶華「切実な希望ですが、めぼしいものは見当たりません。ただ、部屋の奥に地下に通じる秘密階段がありました。そこから降りて、ヴァンデミアの支配する地下世界に入るか、それとも神殿の外に出てゴーレムの殺人光線に焼き殺されるか、二つに一つです」
マシロン「ううっ、裸エプロンならぬ裸サークレットのまま、地下へ降りて行きます(涙目)」
晶華「では、マシロン君のシーンはここまで。次回はパラグラフ447からになります」
★獣使いマシロン(プレイヤー:シロ、パラグラフ447)
・技術点10(素手なので、戦闘時は7)
・体力点22
・運点11→12
・食料:0
・金貨:0
・薬:なし
・所持品:銀のサークレット
・ルビーK関係:銅の指輪(ケイとの契約指輪)、ケイのルビー(精霊ケイの力の源。獣モードの額に付いている。大爆発の危険あり)
IFルート(そのころのザック)
晶華「さて、神殿に入って〈銀のサークレット〉を入手するには、他の装備を捨てることになりますが、神殿に入らずに他を探索すると、装備を失わずに地下に侵入することができます。その際、男女の幽霊から『友に気を許すな』とか『友を信用しろ』とか矛盾したアドバイスを聞いたり、左右の壁に押しつぶされそうなトラップに出くわしたりします*2が、この時点で真のエンディングは見られないことが確定します」
マシロン「他に川落ちルートでも、神殿に入れずに地下に侵入することになるんだね」
晶華「そのIFルートは、どうせだから川落ちしたザックさんに探索してもらいます」
009→ザック「なるほどな。本来はマシロンの川落ち後の冒険を、俺の冒険に読み換えるわけだ」
晶華「激流に流されて行くザックさん。しかし、泳ぎが達者なので溺れることはありません。両岸は絶壁なので、はい上がることもできないまま、下流へ流されて行き、やがて大きな鍾乳洞に入り込みました。そこで流れがゆるやかになり、地底の湖に至ったところで、ようやく岸にはい上がることができました」
ザック「ふう。酷い目にあったぜ。洞窟の中らしいが、明かりなしでも見えるのか?」
晶華「壁が青く光っているので、問題なく見えますよ」
ザック「よし。俺もまだまだツキには見放されていないようだ。何とか、マシロンと合流したいところだが、どこへ進めばいいことやら……」
晶華「とつぜん、カエル人間の集団が現れて、ザックさんを取り囲みます。三又の矛を突きつけながら、ゲロゲロ鳴いています。おそらくは『降伏しろ』と言っているようですね」
ザック「降伏しても、ろくな目にあいそうにないな」
晶華「ええ。巨大ガマガエルの生贄にされてしまいます。マシロン君なら、七つ頭のヒドラを召喚して、カエルどもを弱点の蛇で威嚇できますが、さもなければガマの巨大な口に飲み込まれてバッドエンドですね」
ザック「だったら、ザコ集団を倒して、この場を突破するしかないじゃないか。相手は何体で、技術点はいくらだ?」
晶華「5体で、技術点は6〜8、体力点は5〜8です」
ザック「数が多くて手間はかかるが、技術点12の一流剣士の敵じゃない。バッタバッタと切り捨ててみせるさ」
晶華「ザックさんの能力なら、それも可能でしょうね。マシロン君なら、傷つくリスクを考えると、ヒドラ召喚の方が安くつくとは思いますが」
ザック「とにかく、カエル軍団を切り伏せた、でいいな」
晶華「5体を難なく倒したザックさんの強さに驚いて、ほかのカエル人間は逃げ出しました。安心して、洞窟の奥を探ることができますよ」
ザック「探った」
晶華「パラグラフ447に来て、マシロン君に追いつきました……と言うか、裸になって恥ずかしがりながら、行動がもたついているマシロン君より、先にヴァンデミアの地下都市に到着しましたよ。そこから、いろいろな施設の建物を探索できますが、そのうちの一つ、美術館を捜索することになります」
ザック「しかし、俺の探索はそこまでだな」
晶華「ええ」
フォー・セブン!
少女の声とともに、ザックの意識は固まった。
(当記事 完)