アリオン市にて
晶華「さて、前回は第3の大陸クールのアリオン市に到着したマシロン君一行。宮廷魔術師アイフォー・ティーニンと、最近、領主の座を引き継いだ若き王さま(未来の主人公になる予定)との面会を経て、今回のボスキャラ、混沌の妖魔ヴァンデミアが〈混沌の荒れ野〉のはずれにある廃都ケイベシュの地下を拠点に、周囲への侵略を開始したことが分かります」
マシロン(シロ)「師匠は、ヴァンデミアと直接対峙はしておらず、地上への出入り口を封印しただけだから、ヴァンデミアがどんな奴なのかも分かっていないんだな」
ルビーK(翔花)「わたしの精霊としての勘が言っています。旧世界の〈闇の精〉みたいに他人に寄生する魔物で、可愛い女の子に化けているから、ラブレターなんて出したりしたら、ヒュードロンするかもしれないわ」
ザック(009)「『ドロロンえん魔くん』なんて、そんな古いネタを出されても、今どきの若者は分からねえよ。雪子姫は好みだが」
晶華「『ドロロンえん魔くん』は、『マジンガーZ』や『デビルマン』でお馴染みの永井豪さん原作の妖怪退治もので、前番組が『ロボット刑事』、後番組が『ゲッターロボ』につながるわ」
ザック(009)「ゲッターはともかく、前番組が『ロボット刑事』とは意外だな」
晶華「その枠は、前年まで『ゲゲゲの鬼太郎』(第2期)が放送されていて、むしろ『ロボット刑事』が異質にはさまった形ね」
ザック「えん魔くんは幼少期に再放送で見てたから、前後の番組までは意識していなかったや。とにかく、ヴァンデミアは可愛い女の子なんだったら、ルビーKみたいに説得して、仲間になったりはしないのか?」
晶華「さすがに、そういう改変は難しいでしょう」
ザック「う〜ん、俺にも彼女が欲しいなあ、と思いながら、恋人募集中モードになってる、第3部ザックだった」
マシロン「ルビーKの発言はどこまで信用していいか分からない妄言なんだよね。リーブラ様の加護が届かないから、嘘もつき放題だって言ってたし。ここはグァンドゥムの声を聞いてみよう。ルビーKの言葉は正しいの?」
晶華「グァンドゥムのお告げによると一言、知らん……だそうです」
マシロン「大地の精霊にも分からないのか。だったら、手がかりがどこで手に入るか教えて」
晶華「情報なら酒場へ行け。老人の持っている地図を入手することが正解への鍵になるであろう、とお告げが下されます」
マシロン「おお、さすがはグァンドゥム。よし、酒場へGOだ」
パラグラフ401番の選択肢は、すぐに出発するか、市場で買い物をするか、酒場で情報収集するかの3択です。しかし、先に市場に行くと、酒場には行けなくなりますので、ここは酒場の一択です。
さもないと、真のエンディングは見られず、良くてTS(トランスセクシャル、性転換)エンドになってしまいます。TSせずに、最後のパラグラフ(600番)に到達するのは、たった一つの正解の道を辿らないといけないので、初見では非常に難しいです。
とにかく、最初の一手は酒場に向かうこと。本記事では、基本的に正解ルートをたどり、外れルートはIF展開でフォローするということで、先に明言しておきます。
酒場にて
ザック「よし、酒場だ。可愛いウェイトレスを見つけて、口説き始めるぜ」
マシロン「おい、ザック……って無視されたので、どうしようか。酒場での情報収集って、どうしたらいいのか、田舎者のボクにはよく分かっていないんだよな」
晶華「選択肢は2つ。カードゲームに興じている男たちがいるので、そちらを見てみるか。それとも、奥の静かなテーブルに行くか、ですね」
ルビーK「ゲーマーだったら、ここはカードゲームの一択ね」
マシロン「ボクもそうしたいのはやまやまだが、そちらを選ぶと真のエンディングに到達できないってグァンドゥムが言っている気がするんだよ」
ルビーK「仕方ないわね。ここはわたしが……一度、酒場の外に出て、PONと人の姿に変身します。そして、その辺の石ころに幻術をかけて、軍資金にしてカードゲームのギャンブルに挑戦するわ。マシロン様は、その間に奥のテーブルで情報収集をしておいて」
マシロン「おいおい、ルビーK。人を騙すようなマネは……」
ルビーK「郷に入らば郷に……ってことよ。とにかく、本来、ゲームブックに存在しない幻のようなわたしが、ギャンブルに調子づいても、IFルートって形で処理すればいいから」
晶華「では、IFルートってことで、ルビーKさんがカードゲームに挑戦です」

ゲーム内ゲームは、FFシリーズだとたまにあって、小銭を稼げたり、ちょっとした情報を得ることができたりします。そして、ゲームの内容が作品ごとのアイデアがあって、寄り道が楽しめることも。
今回は「ウツワ」というポーカーに似たゲームで、1〜6の数字の書かれたカードが4セットの24枚。そして、4枚の手札で役を作るわけですが、それをダイスで判定するオリジナルゲーム。
晶華「それでは、サイコロを4つ振って、その出目が手札となります」
ルビーK「(コロコロ)6、5、5、5と出ました」
マシロン「凄い出目だな。4Dで合計21点なんて、滅多に出ないだろう」
晶華「出目は合計しませんが、これは5のスリーカードになりますね。1つだけサイコロを振り直せますが」
ルビーK「6を振り直して、5が出れば、フォーカードが狙えるのね。(コロコロ)出目2で失敗。だったら、5のスリーカードで勝負を賭けるわ」
役は強い順に、フォーカード、ストレート、スリーカード、ツーペア、ワンペアの5種類。その辺のルールは、普通のポーカーに準じます。
晶華「役が決まったら、賭け金を決めてください」
ルビーK「手札に自信があるので、ドーンと弾んで金貨50枚にするわ」
晶華「さすがに、そのような大金をPONと払ったら、偽物じゃないかと疑われますね。もう少し空気を読みましょう」
ルビーK「仕方ないわね。だったら、初手は様子見で金貨5枚にしておくわ」
晶華「それでは、サイコロを1個振ってください。出目によって、相手の役が決まりますよ」
ルビーK「5が出たわ」
晶華「すると、相手の役は6のフォーカードでした。あなたの負けです」
ルビーK「ちょっと。6はわたしがさっき捨てた札よ。イカサマに抗議するわ」
マシロン「ルビーKも偽の金貨を使ってるんだから、相手のイカサマをどうこう言う資格はないと思うんだけどな」
ルビーK「バレなきゃいいのよ、バレなきゃ。だけど、相手はイカサマがバレたので、わたしの勝ちね。真実の女神リーブラ様の名にかけて、イカサマギャンブラーは許せない。神罰を与えてあげるわ」
晶華「何だか、面倒なことになったので、しばらく放置して、マシロン君の方を先に進めます」
なお、相手の役は、1〜2の出目で6のワンペア。3〜4の出目で1のスリーカードに設定されています。
しかし、よもや、5〜6の出目で、最高の6のフォーカードを出して来るとは、リアルダイスとは言え、面白い展開に。
あと、ミニゲームとは言え、ポーカーもどきとして結構、遊べる簡単ダイスゲームと思いますが、第3部は全体的にミニゲームやパズルの多い仕様になっていて、ストーリー抜きでもトリッキーなアイデア満載だと思っています。
晶華「では、マシロン君の方ですが、周囲の喧騒にあまり馴染めず、静かに飲もうとしていると、6人のならず者が1人の老人をこづき回しているのを目撃しました。連中は老人を嘘つきだとか、ペテン師だとののしっていますね」
マシロン「やれやれ。この酒場は、嘘つきだらけじゃないか。老人を助けるために6人相手にケンカをする趣味はないから、少し様子を見守るとしよう」
晶華「酒場のケンカイベントは、ルビーKが発生させましたので、ここは穏便に様子見するのが正解ですね。ケンカになると、老人がこっそり逃げますので、重要な情報収集ができなくなります」
マシロン「老人が本当にピンチになったら、止めに入るけど?」
晶華「ならず者と言っても、ケガをさせない程度に頭をはたいたり、肩をドンとやって脅しつける程度で、勘弁してもらえますね。嘘つきと言われた老人は、マシロン君と目が合うと、『そこの若いの。わしは嘘つきなんかじゃない。魔法の塔の記された古い地図を金貨6枚で売りつけようとしただけじゃ。お前さん、買わんか?』と問いかけて来ます」
マシロン「老人から地図を入手せよ、とグァンドゥムが言っていた。ぜひ買おう」
晶華「すると、ならず者は呆れたように言います。『おいおい、その詐欺師の言葉を真に受けてるなよ。どこの田舎者だ? そいつは嘘つき爺さんということで、この辺りでは有名なんだぜ』と忠告してくれますよ。すると、老人は『今回のネタは嘘じゃない。伝説のハマカイがいる魔法の塔は、本当にあるんじゃ』と訴えます」
マシロン「ハマカイって?」
晶華「ケマンダー師匠から聞いたことがあります。魔法大戦以前から生きている長寿の種族で、鳥の頭部を持った賢者めいた生き物です。砂漠や荒れ地の隠れた塔に隠棲していることが多いそうですね」
マシロン「ハマカイが荒れ地の塔に住むという情報は、よく知られているのかな?」
晶華「そんな話に興味を持つのは、古代の知識に関心が深い魔法使いや冒険者ぐらいですね。一般人が詐欺のネタとして使う類の話とは思えません」
マシロン「人を騙すなら、もっと美味いネタを用意するってことか。ハマカイなんて言われても、それで地図を買いたくなる物好きは滅多にいない、と。それにしても金貨6枚かあ。手持ちの金貨が10枚だから、半分以上吹っ飛ぶ。もう少し安くならないか?」
晶華「マシロン君が値切ろうとしたので、老人は金貨3枚に値下げしてくれます」
マシロン「半額なら買おう。残り金貨7枚、と」
晶華「地図は簡単な絵柄の古い物で、かすれた字で『五本指から東へ44キロ、南へ33キロ』という記述が読み取れます」
マシロン「それだけ?」
晶華「それだけですね」
マシロン「こんな情報に金貨3枚の価値があるとは思えないがな、とつぶやきながら、老人を睨みつけますが?」
晶華「そのとき、カードゲームをしていた卓で、騒動が持ち上がります」
マシロン「そっちはIFルートじゃなかったのか?」
晶華「地図入手→カードゲームイベントに進むことは可能ですよ。今回は、そういう展開で進めます」
ルビーK「イカサマギャンブラーは許せない! 神罰を与えてあげるわ。救世主のマシロン様がね」
マシロン「って、ボクかよ」
晶華「すると、ならず者が6人、ナイフを持って、マシロン君を睨みつけます。老人と、地図で揉めていた連中は、厄介ごとを避けるために、酒場から出て行きますよ」
ザック「そこに俺が出てくるわけだ。おっと、待て待て。俺の親友に手出しはさせねえぜ」
マシロン「IFルートだと思って安心していたら、何だか大事になって来ていないか?」
晶華「ここで選択肢は、剣を抜いて本気で戦うか、素手で相手を殺さないように戦うかです」
マシロン「剣を抜いたら、ますます大事になって、官警沙汰になる*1とグァンドゥムが言っている。ここは救世主らしく、グーデバーンの拳で相手しよう」
晶華「素手だと、技術点が3減るので、7になりますね。その代わり、相手の体力点を2まで減らすと、気絶して戦闘不能になります。ザックさんが3人を相手してくれるので、マシロン君は残り3人を倒すだけでいいです。相手の技術点は、順に5、6、6でゴブリン並みのザコだと言っておきましょう」
マシロン「剣を使えば余裕なんだけど、素手だからなあ。まあ、頑張ってみるか」
一度に全員を相手にするか、それとも一人ずつ相手にするか、特に記述がないので、ここはプレイヤー有利の裁定にしたがって、一人ずつ相手にすることに決める。
その結果、1人めから2点、2人めから6点、3人めから8点のダメージを受けて、ズタボロになった運の悪いマシロン君であった。
マシロン「痛い。残り体力が6点なんて、ダイス運が悪いにも程がある。普通、1差で有利な戦闘で、こうはならないだろう」
晶華「しかし、粘り強く戦って、拳で打ち負かしたマシロン君に、ならず者も感じ入るものがあったのか、お詫びに金貨30枚を治療費としてくれますよ」
マシロン「おお。これでパーッと飲み食いして、体力点を回復させよう」
この後、市場に繰り出して、食料を買ったりしながら、回復までした結果は以下のとおり。
★獣使いマシロン(プレイヤー:シロ、パラグラフ574)
・技術点10
・体力点22
・運点11
・食料:5
・金貨:27枚
・薬:技の薬(技術点回復)、ツキ薬(運点回復)
・所持品:背負い袋、ナイフ、兵士の剣、獣皮の服、15メートルの縄、ランタンと火口箱、骨の髪飾り(ネズミとコウモリをただで召喚可能)
・ルビーK関係:銅の指輪(ケイとの契約指輪)、ケイのルビー(精霊ケイの力の源。獣モードの額に付いている。大爆発の危険あり)、銀の盾(ケマンダー師匠の遺品)
ルビーK「結果的に、食料以外は何も買わずに、お店を出たのね」
マシロン「まだ持っていないアイテムは、以下のとおりだが、どうも使う局面がないと思うんだよな」
- 銀のナイフ(金貨10枚)
- ハンマー(金貨6枚)
- ブーツ(金貨4枚)
- 上等の衣服(金貨8枚)
マシロン「酒場のならず者がくれた金貨でほとんど買えるんだが、買ったところであまり使う機会がない、とグァンドゥムが言っている。実のところ、買い物できるアイテムがあまり面白くないのが、このゲームの欠点だとも思えてきた」
晶華「酒場のケンカでお金を稼げるけど、本当にお金が必要になるのは、老人から地図を買うときだけなので、街での買い物タイムがただのフレーバーでしかないのよね」
マシロン「グァンドゥムのお告げがなければ、銀のナイフとか、ハンマーとか、ブーツとかまとめて買うんだけどな」
ルビーK「上等な衣服は?」
マシロン「これから冒険に出るのに、上等な衣服なんて買うか? 買うなら、領主の宮殿に行く前に買うべきだろう、礼装的なものは」
本来、酒場のケンカも必須イベントじゃないけれど、それをクリアした場合だけ、たっぷりお金が入手できる仕様だ、と。
それでも、ゲーム攻略の役には立たない点がもったいない。本当に重要なアイテムは、お金を出して買うのではないゲーム性なのだ。
アシュカイオスへの旅
晶華「アリオン市を出たマシロン君一行は、そのまま西の街アシュカイオスを目指します」
ザック「俺は、酒場のウェイトレスを口説き損ねた愚痴を言ってるぞ。ルビーKが騒動を起こしたせいで……」
ルビーK「大丈夫。わたしが騒動を起こさなくても、ザックさんはフラれていたから」
ザック「どうして、そんなことが分かるんだよ?」
ルビーK「普通に考えたら分かるでしょ。相手は仕事中なのよ。それを邪魔して、どこの誰かは分からない旅の客が言い寄って来たからって、ホイホイ誘いに乗る女がどこにいるのよ?」
ザック「うっ、イケメンの剣士が声をかけたら、女の子は目をハートにして飛びついてくるものじゃないのか?」
ルビーK「昭和の時代には、そういうお店もあったかもしれないけど、令和の時代に女の子を誘おうと思えば、お金を持っていて、羽振りの良さを示すところから始めないと。酒場で女の子を誘うなら、まずは酒や食事を注文して、何度かオーダー入れて、段取りを構築するところから始めないとね」
ザック「ずいぶんと詳しいようだな、ルビーK」
ルビーK「そりゃあ、人を誘い込む作法はそれなりにね」
マシロン「どうでもいいけど、ルビーKはギャンブルで、人を騙そうとしたことを反省しろ」
ルビーK「どうして? 結果的にお金が儲かったんだからいいでしょ? やはり、ならず者相手に腕っぷしを示すのは、何よりもお金につながるわね。それより、つまらない地図にお金を支払ったことは、反省しなくていいの?」
マシロン「これは、グァンドゥムから聞いた、将来に向けての必要投資だから問題ない」
晶華「……と、そんな話をしたりもしながら、アリオン市の西に広がる古戦場跡の平原を旅するあなた達です。ここでサイコロを1個振ってください」
マシロン「6だ」
晶華「すると、シュグランという吸血怪物に襲われました。どうもモンスター事典にも載っていないオリジナル怪物っぽいです。人間のように2本足で歩き、ゾウのような長い鼻で相手の血を吸う小柄な生物。元ネタは『クトゥルフ神話』みたいですが、そういうのが4体襲って来ますので、2体ずつ戦うことになります」
1度に与えるダメージは3点と高い敵ですが、技術点は6とか7とか低いので、3点ダメージを受けただけで難なく倒すことに成功。
無傷で倒せよ、と思いつつ、大禍なくアシュカイオスの街に到着。
そこは南から襲撃してくるモンスターの群れに怯えていた。先日も、巨大な悪魔犬が現れて、アムという少女をさらって行ったという。
ザック「悪魔犬だって? その昔、故郷の街シルバートンを襲ったムーンドッグのことを思い出して、俺は怒りをはっきり示す」
マシロン「落ち着け、ザック。周りが怯えている」
ザック「あ、ああ、俺としたことがつい……。大丈夫だ、さらわれた娘は俺が必ず助けてみせる。街を脅かす闇の魔物を成敗して、光をもたらすために俺は冒険者になったんだ」
晶華「それを聞いて、悲しみに暮れていたアムさんの両親はザックさんに、お願いします、と言って金貨10枚を渡します」
マシロン「何だか急に金回りが良くなった気がする。ええと、その金で食料を買って、体力3点を回復していいかな?」
晶華「街の不安を反映して、物価高になっていますね。食料1食が通常の金貨2枚から4枚に値上げしていますよ」
マシロン「差し引き金貨6枚の収入と。さらに情報を聞きたいんだけど?」
晶華「ヴァンデミアにまつわる話は聞けませんでしたが、街の南東の荒野にハマカイという賢人の住む塔があるそうです。正確な位置は分からないものの、古の賢者種族なら必要な情報を知っているのではないか、と推察できます」
マシロン「グァンドゥムの導きどおりだな。〈ハマカイの塔〉の地図なら入手済みだ。ケイベシュへ向かう前に、〈ハマカイの塔〉に寄って行くことにしよう」
〈ハマカイの塔〉の謎
晶華「それではアシュカイオスを出立したマシロン君たちは、塔の目印である〈五本指の岩〉と呼ばれる地点まで到達しました。その先には、塔の正確な位置(直線距離)を求めて、それを10倍したパラグラフに進む必要があります」
ルビーK「東に44キロ、南に33キロだっけ。直線距離だから斜めの距離を求めればいいのだろうけど、いくらになるのかしら?」
ザック「三平方の定理を使えば簡単だ。中3で習う」
ルビーK「そんなの、わたしが知るわけないので、ピタゴラスさんを呪いながら闇堕ちします」
晶華「ピタゴラスさんの名前は知っているんだ」
ルビーK「名前は分かる。だけど数式は分からないの」
マシロン「縦3、横4なら、斜めが5になるのがピタゴラス数の代表的な例だな。それを利用すれば、直線距離は55メートル。つまりパラグラフ550番へ進む」
ルビーK「さすがはマシロン様。大魔法使いの弟子だけあって、頭がいい」
マシロン「ルビーKだって、妖術を使う仮面の魔女だったろう? それがどうして、算術に関して頭が良くないんだ?」
ルビーK「プレイヤーは計算が小学校低学年レベルって設定だから。とりあえず、割り算までは習得したんだけど、小数とか分数はワケ分からない。一応、確率の意味は何となく分かるけど」
晶華「山本さんのゲームブックは、中高生向きの数学パズルがたまに採用されたりするから、お姉ちゃんには難解かもね」
ルビーK「メインプレイヤーはシロちゃんだから、わたしはマシロン様を持ち上げる役どころってことで」
晶華「とにかく、パラグラフ550番へ進むと、〈ハマカイの塔〉を見出すことができました。窓一つない、強固な造りの塔で、唯一の出入り口である青銅製の扉は固く閉ざされています。扉の表面には、美しい女性のスフィンクス像が浮き彫りになっていました」
ルビーK「美しい女性……こいつがヴァンデミア?」
晶華「『そんなわけがありません』と、スフィンクスさんが応えました。『私はこの塔の門番を務めるもの。我が主人に会うには、私の謎に答えていただかなくてはいけません。挑戦する気はありますか?』」
マシロン「いいだろう。第一問の答えは『いいえ』だ。ボクにはダイス目以外の未来がそこそこ見えている。パラグラフ選択で最適解を選べるなら、救世主に隙はない」
晶華「せめて、問題ぐらいは聞きましょうよ」
ザック「答えを知れば簡単な論理パズルだが、解説が少し面倒だからな。『その言葉=いいえ』と出題文に当てはめると、すっきり意味が通る、ということで、問題のネタバレはしないでおこう」
晶華「では、謎解きパズルの描写は略式ってことで。スフィンクスさんは正解を答えたマシロン君の知恵に微笑み、この後のボタン式パズルのためのヒントをくれました。そして扉を開いてくれますよ」
マシロン「よし、階段から上へ上がるぞ」
晶華「ところが、外からは4回建てぐらいの高さに見えたのに、あなた達が目にしたのは無限に続くらせん階段。上ろうとすると、老人のような声が解説します。これは愚か者に破滅をもたらす無限階段。主人は18階にいる。1階から18階までの段数を正確に数えた数字のパラグラフに進め。数え間違えると、無限階段に閉じ込められてゲームオーバーです」
ザック「それだけのヒントじゃ、答えは出せないな」
晶華「確かにそうね。だから追加情報です。各階の階段数はつねに同じで、18階から12階まで降りるのに180段下ります」
マシロン「すると、6階分降りるのに180段だから、1階分は30段。そして1階から12階まで行くのに、11階分登らないといけないから、30×11=330段。それに180段を加えて、合計510段だ」
晶華「正解です。これは30段を出した後、うっかり30×18=540ってまちがえる人がいることを想定して、そこからバッドエンドにも通じていますね」
ルビーK「1階から18階までは、17階分登ればいいわけね。それにしても、510段も階段を登るのは大変そう」
マシロン「確かに。エレベーターぐらい付けて欲しかった」
ザック「ゲームブックだと、肉体労働の労力はそれほどでもないからいいけどな」
晶華「では、最後にボタン式扉の謎です。0、1、2、3、4の5つのボタンを正しい順番に押して、5ケタの数字を出してください。それを68で割ったパラグラフへ行くのが正解です。ただし、余りが出ると間違いで1点ダメージを受けてしまいます」
ルビーK「そんなの分かるはずがないわ」
ザック「スフィンクスがくれたヒントは、各番号がその順番じゃなくて、0は最後じゃないってことだな」
マシロン「つまり、1は1番めじゃないし、2は2番めじゃないといった形だね」
ザック「そして、68は17×4だから、その倍数ってことは4の倍数ってことが確定する。これで下2ケタは12、24、32の3つに絞られた*2。仮に12とするなら、1番めは5ケタで0が使えないから、3か4。すると30412か、34012か、43012の3つに絞られた。問題は17の倍数をパッと見分ける手段が分からないから、1発で正解を導き出す手段が見えないってことだな。34012が外れだということは、割とすぐに分かったが」
マシロン(シロ)「この場に、ジュニア(元リトル)がいれば、暗算で68の倍数が分かるのにな」
ザック「とりあえず、初手の30412が当たりとは思えないから、43012÷68を試してみよう」
晶華「633余り32で外れです。ダメージを1点くらって、もう一つヒントがもらえます。最後の数字は4だ、と」
ザック「ついでに分かったことがある。第3部のパラグラフは401から600までしかないから、これに68、いや約70をかけた28000から42000ぐらいの範囲に数字が収まるはず」
マシロン「すると、下2ケタが24で確定して、最初は3だから30124か、31024のどちらかですね」
ザック「30124だと?」
晶華「443で正解です」
ザック「ふう。1点ダメージだけで何とか正解に漕ぎつけたぜ」
ルビーK「ふわ〜、もう終わった?」
ザック「寝てたのかよ!?」
ルビーK「こういう数字パズルは、わたしの弱点だし、1人じゃ山本弘さんのゲームブックは解けないわね」
晶華「そういう時は、パラグラフを401から600番まで流し読みして、話がつながっている項目を探すの。ゲームブックという形式だから、それで何とか話を続けられるわ」
ザック「それって邪道じゃないか。そんな解き方をして、ゲームブックが楽しいか?」
晶華「謎が行き詰まって、話が進められないことに比べたら、はるかにマシよ。大切なのは、ストーリーが最後までたどりつけること」
マシロン「それよりも、主役のボクより、ザック役の009さんの方が解くのに夢中になってましたね」
ザック(009)「ぼくはNOVA2009で、NOVAの代役だから、こういうパズルが大好物で、ついつい夢中になる習性があるんだ。途中でザックのロールプレイを忘れてしまったよ。ザックがこんなに数字パズルが得意なはずがない」
マシロン(シロ)「ボクだけだと、もっとダメージを受けたかもしれないので、攻略のうえでは助かりました」
ハマカイの話
晶華「それでは、パラグラフ443番で、塔の主人の老賢者ハマカイさんと対面します。うまく試験に合格したので、運点2を加えてください」
マシロン「いや、ここまで運点を使ってないんだけど、まあ、いいです。自己紹介したうえで、ヴァンデミアのことを知らないか尋ねてみます」
晶華「『知っておる』とハマカイさんは深くうなずきます。彼の話では、本来、俗世のゴタゴタには関わりたくないけど、今回は特別だそうです。ヴァンデミアが地上で暴れると、多くの貴重な知識が失われてしまって、何よりも知識を重んじるハマカイさんにとっては痛手になるようです。だから、力だけでなく、知恵ある冒険者なら喜んで手を貸そう、と言ってくれました」
マシロン「では、改めて、ヴァンデミアとは何者か? どんな能力を持っていて、倒すにはどうすればいいか、教えていただきたい」
晶華「ハマカイさん曰く、『ヴァンデミアは魔界のデーモンの一種と考えられるが、地上の生き物ではないゆえ、その性質は今だに謎に包まれておる。それについて書かれた文献がほとんど残っておらず、ヴァンデミアに会った者もいないゆえ、どんな姿をしているのかも分からん。おそらく、直接、奴に会った者は、死ぬか、正気を失うか、目撃情報を語れないような目にあうのじゃろう』」
マシロン「ボクの守護精霊の一体が予見したところでは、旧世界の〈闇の精〉のように人に憑依する能力を秘めている、とか……」
晶華「それは興味深い話だ、とハマカイさんは身を乗り出します。彼も一度、遠見の水晶球でヴァンデミアの姿を映し出そうと試みたけど、何も映らなかったそうです。正体が〈闇の精〉の同種なら、その正体が薄ぼんやりとした瘴気であろうと、霊体であろうと、何らかの影として見えるはずなのが、何も映らない……ということは、ヴァンデミアは魔力を遮断する能力を持っているか、それとも存在そのものが〈無〉なのではないか、とハマカイさんは推測していますね」
ザック「存在そのものが〈無〉ってどういう意味だ?」
晶華「本体が魔界にいて、地上には実体のない意識だけを飛ばして、生き物の肉体を乗っ取る存在とか、地上の視覚では決して感知できない存在とか、考えられることはいろいろありますが、魔界や混沌の知識はハマカイさんにも断片的にしか分からないほど、奥深いものです。そもそも、知識とは体系化に基づいて集積されるもので、その体系から外れた特別なケースは個々の目撃情報やデータを収集したうえでないと、確固としたことが言えないわけで、とにかくヴァンデミアは地上の常識からはかけ離れた魔物としか言いようがありません」
マシロン「師匠が、直接対峙しなかった理由が分かった。正体不明で、下手すると取り込まれてしまうような相手に対しては、警戒し過ぎることはないもんな」
晶華「『ケマンダーに言わなかった情報がある』とハマカイさん。『あの時は、わしもその情報を知らなかったゆえじゃが、その後、とある古文書を見つけてな。ケイベシュの神殿に納められた銀のサークレットがあれば、いかなる精神支配や憑依の能力からも身を守ることができる、らしい』」
ザック「それでヴァンデミアの能力を封じることができるのか?」
晶華「古文書によると、『ヴァンデミアと名乗る妖魔を、サークレットを着けた神官戦士が単独で対峙して、追討した』とあります。ただ、その神官戦士はまもなく、混沌軍の大群と戦って、抗しきれずに討ち死にしたそうですが」
マシロン「精神戦闘では無敵でも、肉体戦闘で勝てるとは限らないもんな」
ルビーK「質問です。精霊の力なら、ヴァンデミアに対峙できますか?」
晶華「それは……できるかもしれないし、できないかもしれません。しかし、精霊というのは、周辺環境の魔力の影響を受けやすく、混沌の瘴気の強い場所では、容易に邪悪化してしまう危険があります。それを防ぐには、神の加護や契約魔術師との強い心の絆が必要とされます。契約精霊の自我は、精霊使いの精神状態にしばしば影響を与え合うので、精霊使いの意志力が強ければ、ヴァンデミアに対峙しても問題ないかもしれません」
ルビーK「かもしれない、だらけであやふやなことはよく分かったわ。とにかく、銀のサークレットを入手しないと、ヴァンデミアの能力を防げないってことね」
晶華「それは確実です。ゲームブックに書いてますから。精霊力云々はゲームブックに書いていないので、適当にそれっぽい理屈を紡いでいるだけだし。ルールやシナリオに書いていないことは、ディレクターの物語知識を土台に、その場のノリやアドリブも交えて、らしいことを組み立てるしかないですからね」
ザック「サークレットがあれば、ヴァンデミアの特殊能力への対策にはなる。しかし、実体を持たない敵をどうやって倒すかは、答えが出ていない。剣では斬れないんだろう?」
晶華「それは、ハマカイさんにも分かりませんね」
マシロン「〈闇の精〉に対する『炎の書』みたいなアイテムがあればいいんだけどね」
ザック「これからの探索で見つかればいいんだが、とりあえずはケイベシュの神殿を優先しろってことだな」
晶華「探索に役立つアイテムとして、ハマカイさんは6種類の魔法薬を提供してくれます。以下の6つから好きなのを3つ選んでください」
- 飛行薬:一時的に空が飛べる
- 透明薬:一時的に体が透明になる
- 縮小薬:一時的に体が小指ほどの大きさになる
- 技の薬:技術点が原点まで回復する
- 力の薬:体力点が原点まで回復する
- ツキ薬:運点が原点+1まで回復する
マシロン「技の薬とツキ薬は持っているからいいとして、力の薬を1つ。それと飛行薬と透明薬ってところかな」
ザック「透明薬をここで入手していないと、トゥルーエンドは見られない、と言っておこう」
マシロン「どうして分かるんだ、ザック?」
ザック「いやあ、ここで仕掛けパズルをあれこれ解いているうちに、何だか頭が良くなったような気がするんだ、ハハハ」
晶華「苦しい言い訳のような気がするけど、むやみやたらにネタバレはしないでね。ともあれ、今回はここまでにしておきましょう。次回はケイベシュへ向かうパラグラフ517番から再開します」
(当記事 完)
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