夢の戦士
アッキー「前回のあらすじは……」
NOVA2009(前置きはいらねえ。最初からクライマックスだぜえ。アッキー・ノヴァン・キーパー参上!)
アッキー「ということなので、まだの人はこちらの記事を読んでください。とにかく今は悪霊の憑依した巨大ドゴラと戦闘中なので、読者さんの相手をしている時間がないの。だけど、応援はよろしくね。みんなの応援の気持ちと声が、花粉症ガールの力になるんだから」
NOVA2009(避けて、避けて、避けた。よっしゃあ、ピンゾロは1回も出さずに済んだぜ。こちらのターンだな。ほれ、アッキー、必殺技を撃つんだ!)
アッキー「もう、TRPGをしているんじゃないんだからあ。くらえ、蜂毒バスター!」
巨大ドゴラ『ゲビッ!? ゲビーン。ゲビビビビン!』
NOVA2009(チッ、一瞬だけ怯ませたみたいだが、すぐに回復しやがる。石化したところも、人間で言えば、かさぶたみたいに剥がれ落ちるだけだ。もっと、こう強い技とかないのかよ)
アッキー「やっぱり、巨大化してウルトラアッキーになるしかないみたいね」
NOVA2009(どうやって?)
アッキー「気合と妄想パワーを最大限に発揮するの」
NOVA2009(お前、本当に俺の娘か? 気合と妄想は創作の必需品だが、それだけじゃ頭の悪いおバカな小説しか書けねえ。もう少しこう、それっぽい理屈とか根拠とかアイデアとかないのかよ)
アッキー「そういうのはNOVAちゃんに任せた」
NOVA2009(任せるな! とにかく、夢の力をエネルギーにするヒーローだったら、昔、ウイングマンってのがいたんだよ。原作マンガだと、最終決戦で巨大化したんだけどな。それには、自分一人だけの妄想パワーじゃダメで、彼を応援するみんなの夢の力が結集して、巨大な敵を倒したんだ。お前が気合と妄想で巨大化したいんだったら、ウイングマンと同じくらいのみんなの応援が必要になる。それだけの想いを集めることができるか?)
アッキー「無理ね」
NOVA2009(あっさり諦めるなよ)
アッキー「だったら、NOVAちゃんは花粉症ガールの物語を、桂正和さんのウイングマン規模の人気作品にすることができる?」
NOVA2009(無理だな)
アッキー「あっさり諦めてるのはNOVAちゃんじゃない。令和のNOVAちゃんだったら、無理とは言わずに、こう言うわ。『ウイングマンは俺の心のバイブルの一作だ。そう、ウイングマンの想いは、俺の心にしっかり受け継がれている。だから、俺の書く作品は、ウイングマンへのオマージュにも溢れている。ウイングマンの力、お借りします』って」
NOVA2009(とにかく、ウイングマンが俺の心のバイブルの一つだというのは間違いないが、いつか原作に忠実なアニメが作られないかなあ、と思う。『三つ、美紅ちゃん、愛してる❤』なんて原作にないセリフを言う広野健太はどうも恥ずかしくて受けつけん)
アッキー「この脱線癖。やっぱり、2009年でもNOVAちゃんね。とにかく、他に巨大化する手段を考えないと」
NOVA2009(いや、巨大化は必ずしも必要ではないぞ。ウイングマンは1984年にアニメ放送されたが、同じ1984年でも、我々は特撮ヒーローに学ぶべきだ。そう、巨大化しなくても、巨大な銃さえあればいい。今から、シューティング・フォーメーションを発動するぞ)
アッキー「シューティング・フォーメーションって、宇宙刑事シャイダーさんの技?」
NOVA2009(そう、まずは超次元戦闘母艦バビロスを召喚してだなあ)
アッキー「バビロスなんて、ここにはないわよ」
NOVA2009(なければ、時空戦士スピルバンの超時空戦闘母艦グランナスカでも構わない。カノン・フォーメーションなら代替可能だ)
アッキー「だから、そんな大きい母艦はないんだってば」
NOVA2009(本当に? どこかにあるんじゃない? 巨大ロボに変形する宇宙船とか。俺だったら用意するはずだけどな)
アッキー「アストロメガネンオーってロボならあるけど、今は屋久島に待機中だから、すぐには呼び出せないの」
NOVA2009(屋久島? 何で、そんなところに? まあ、いいや。だったら、他に代わりになる巨大な基地施設……ってあるじゃないか。ほら、あの塔なんか巨大な銃器の砲身にするのに正にうってつけだろう)
アッキー「ええっ!? クリスタルタワーをシューティング・フォーメーションに変形させるの?」
NOVA2009(よし、アイデアの種は生まれた。後は妄想で細部を設定して、気合で書き上げる。そうだな、名前はクリスタルキャノン。いや、そろそろ夜明けが近いかな。だったら、サンライズキャノン・フォーメーションだ。基地が変形して、巨大なレーザーで相手を倒すのは、ターボビルダーやマックスマグマなんかでも実証済みだからな)
アッキー「もうどうなっても知らないから。サンライズ・スティープル、チェーンジ・キャノンモード!」
NOVA2009(俺の思念も込めるぜ。俺がこの世界に召喚された意味は、こういう奇跡を起こすためだと見た。そう、この世界に神というものがいるのなら、ここで、あの塔に仕込まれた隠し機能が発動しないと嘘になる)
その時、NOVAの思念に、塔に設置された〈白き栄光の杖〉が応えた。
リトル「え? 何だか塔が光り輝いて、揺れ動いてるぅ? 何か、凄いことが起こっているような気がしますぅ」
アッキー「嘘? 塔が飛んできたわよ」
NOVA2009(何を驚いてるんだ? そうなるように祈ってるんだから、そりゃ飛んでくるだろう。さあ、それより次は巨大なワイヤーフレームでイメージの像を描いて、射撃できるようにするんだ。必殺! 蜂毒バスター・サンライズキャノン・フォーメーションってな。この一撃で闇の悪霊を封印するんだ!)
アッキー「ええ、そうね。花粉症ガールの新必殺技! 蜂毒バスター・サンライズキャノン・フォーメーション! 妄想イメージを高めるために、宇宙刑事シャイダーさんの映像をお借りします」
こうして、巨大ドゴラは、巨大なアッキーの幻想映像が放つ蜂毒バスターによって、石化するのだった。(20周年記念バトル第1部、巨大ドゴラ編・完)
しかし、夜明け後の15日にさらなる戦いが待っていた。
昭和NOVA出現
アッキー「結局、徹夜になっちゃったわね。今から寝てたんじゃ、ニチアサのプリキュアとスーパーヒーロータイムを見逃しちゃう」
NOVA2009(気持ちは分かるが、今はそんなにのんびりしたことを言ってる場合じゃないぞ。俺だって、シンケンジャーとディケイド、フレッシュプリキュアを見逃したら、ガーンとショックを受けて、一週間、何のやる気も起こらなくなりそうだけど、録画していれば済む話だからな)
アッキー「そうね。今日は忙しくなりそうだから録画で……って、私たちの拠点であり、生活空間のクリスタルタワーが無事かどうかを確認しないと。何だか、いきなり呼び出して、縦になっているのを横にして撃っちゃったし。中の本棚とか崩れてそうだし、屋久島行ってるNOVAちゃんが帰って来たら何て言い訳したらいいの? それに何よりもリウ君が中にいたんだから、もしかしなくても大変なことになってるんじゃないかしら」
NOVA2009(ああ、悪い。そこまで後先考えてなかったわ。敵を倒すことと、自分のアイデアに夢中になって、中の人とか家具とかの安全まで気が付かなかった。うわー、地震の後みたいに、とんでもないことになってそうだなあ。ご同情申し上げるぜ)
シロ「おい、アッキー。敵を倒したはいいが、塔を銃身に使うなんて、とんでもないことをよくもしたな。塔を守るために、塔の中をぐちゃぐちゃにして、どうするんだよ」
アッキー「悪いのは、2009年のNOVAちゃんなんだから。私は悪くない」
NOVA2009(いいや、俺の罪はお前の罪。とにかく人のせいにしている暇があったら、今すぐ状況を確認しに行くぞ)
アッキー「そうね。シーさん、とにかくタワーの中の様子を確認しましょう」
シロ「おお、すぐにダンジョンの中を走り抜けて……」
アッキー「それじゃあ、時間が掛かり過ぎる。転移するわ、つかまって」
そして、塔の中のいつもの部屋に転移したアッキーたち。
リトル「あ、お帰りなさいぃ。うまく巨大ドゴラを石にしたみたいですねぇ」
アッキー「あれ? リウ君も、中の家具も無事みたいね。揺れなかった?」
リトル「最初はちょっと揺れたけど、この人が魔法を掛けてくれて、鎮まりましたぁ」
アッキー「この人?」
白ローブの少年「やあ、粉杉晶華さんでしたね。お久しぶりです」
アッキー「誰?」
白ローブの少年「2年前のこの記事を読んで下さい。そうすれば、分かります」
アッキー「あ、もしかして、NOVAちゃんが高校時代に書いたファンタジー小説『光の杖』の主人公ジョエル・トレント君だっけ?」
ジョエル「正解です」
NOVA2009(ジョエル・トレントだと? 懐かしいキャラの名前だな。おい、アッキー。アーマーを脱いでくれ。ジョエルの顔を見てみたい)
アッキー「はい、NOVAちゃん。キャストオフするよ」
NOVA2009『おお、君がジョエル・トレントか。まさか、今ごろ夢に出てくるとは思わなかったよ。この世界が、未来のぼくの作ったものだと言われても、納得できる気がした』
ジョエル「何ですか、このバイオメカっぽいネコミミ・スーツアーマーは?」
晶華『KPマーク2ちゃん。人格は2009年バージョンの平成NOVAちゃんだけど』
ジョエル「前に会った父さんは2018年バージョンでしたから、それより若いんですね」
NOVA2009『君の父さんは、確かジョーニアス・トレントだったはずだが』
ジョエル「この世界では、ジョーニアス・トレントというのは〈光の杖〉(ブリリアント・スタッフ)を所持する魔法使いの称号みたいなものです。つまりWhite NOVAが、ぼくの父さんみたいなもの。あ、ぼく自身は杖に宿る思念、精霊みたいなもので、1988年のNOVAの記憶を持ちます」
晶華「つまり、ジョエル君は昭和NOVAちゃん、NOVA1988みたいなものってことね」
NOVA2009『ぼくの書いた小説の主人公が、当時のぼくの記憶を宿しているってのは、納得できない話ではないが、いろいろ紛らわしい設定だよなあ。とにかく、ジョエルが昭和NOVAで、ぼくが平成NOVA、もう一人は何NOVAだっけ?』
晶華「令和NOVAよ。あ、WhiteからShinyに改名したから。まあ、一部のアカウントはまだWhite NOVA名義のままだけど」
NOVA2009『そのシャイな令和NOVAさんは今、どこにいるんだ? 過去の自分たちを呼び出して、一体、何をしようとしているんだ?』
晶華「さあ。屋久島に行って、お姉ちゃんを呼び戻すために、神さまと交渉するとか言っていた気がするけど」
シロ「あのう、さっきからボクたちが全く話に付いて行けなくて、置いてきぼりなんだが。紹介とか、状況解説とかお願いできないか? まず、塔の中が無事な理由から教えて欲しい。魔法とか言ったよな」
ジョエル「では、改めて自己紹介しましょう。このクリスタルタワーの原動力は〈光の杖〉、あるいは〈白き栄光の杖〉というアーティファクトに由来します。ぼくは杖に宿る思念が具現化した精霊で、今のように時空の歪みが一定量に達したときに、それを解消するために出現します。杖の設定の創造者が、高校時代のWhiteあるいはShiny NOVAさんであるため、その杖の持ち主として設定されたジョエル・トレントという少年魔術師の姿と人格を借りていますし、記憶は1988年のNOVAさんのものをベースに、杖自身の記憶が融合しています。
「そして、塔の中が無事な答えは簡単です。もしも塔の中身がぐちゃぐちゃになれば、NOVAさんの悲しみがどれほどのものになるかと想像した結果、それを避けるために、グラビティーコントロールの結界を建物内に巡らせました。やはり、アーティファクトに宿る精霊としては、所持者の不幸は見過ごせませんからね」
シロ「ああ、丁寧な自己紹介、感謝する。ボクは……」
ジョエル「知っていますよ。シロさんとリトルさんは、しばらくこの塔に暮らしていましたからね。塔の記憶は、杖にもフィードバックされますので、お二方の情報は習得済みです」
晶華「だったら、どうしてKPマーク2ちゃんが分からなかったのよ?」
ジョエル「晶華さんは時々、細かいところが鋭いですね。ぼくが知っているケイPさんの姿はネコミミボール型がデフォなので、今回のように非常事態にスーツアーマー化した姿は、知識にはありましたが、現物を見たことがあまりなかったので、とっさに考えが及ばなかったのです」
晶華「なるほどね。ところで、KPイチローちゃんのボディが石になったままだけど、解除はできるのよね」
ジョエル「杖の魔力をNOVAさんが使えば、可能ですよ。2009年バージョンのNOVAさんでも、杖の力は使えるはず。ただし、令和のShiny NOVAさんの命令が最優先されますので、彼が反対したら無効化されますが」
晶華「私の命令は?」
ジョエル「あなたは同じ父親を持つので、ぼくの妹みたいなものと認識していますが、杖の力を使う権限は持ちません。ぼくの力を使いたければ、そこにいるNOVA2009氏を通じて、間接的に命じてください。ただし、今、巨大ドゴラの石化を解除することは全くお勧めできませんが」
晶華「どうして?」
ジョエル「中に宿る悪霊の思念が残っているからですよ。石化を解除したら、また暴れ出すことは明らかです。解除の前に、まずは悪霊を退散させないと」
シロ「浄めの塩とか音楽で何とかならないか?」
ジョエル「ただのケイソンなら有効かも知れませんが、異次元の悪霊であるヤプールに塩や音が通用するとは考えられません」
晶華「つまり、いろいろ複合していると、弱点も一筋縄でいかないということね。ヤプールの怨念を払うには、どうしたらいいのかしら?」
ジョエル「やはり、ウルトラの光の力、とりわけ超獣退治の専門家ウルトラマンAの力があれば、心強いでしょうね」
晶華「石化解除は、ShinyなNOVAちゃんが帰って来てから、考えるとしましょう。それより、明日は20周年記念の16日なんだから、今からパーティーの準備を急いで整えないと間に合わなくなってしまうわ。はい、悪霊退治イベントはこれで終わり。今から、私たちの総力を上げて、会場の準備に取り掛かりま……」
リトル「あ、アッキーさん。通信が入ってますぅ。ダイアンナって人からぁ」
晶華「今ごろ来たの? もっと早く来ていれば、元快盗団のマーキュリー・バットも巨大ドゴラ相手の貴重な戦力になったのに」
シロ「連中にもパーティーの準備を手伝わせればいいさ」
晶華「そうね。それと、昭和と平成のNOVAちゃんズも手伝いお願いね」
NOVA2009『やれやれ。この夢はいつになったら醒めるんだ?』
ジョエル「NOVAちゃんズって一括りにされるのは不本意ですが、あなたが使ってくれないと、ぼくは杖の魔力を十分に使うことができないのですよ。乗り掛かった船だと思って、最後までお付き合いお願いします」
NOVA2009『高校時代のぼくに頼まれたら、まあ、イヤとは言えないよな』
マーキュリー・バット
アスト「チッ。スピードAの称号を誇るオレとしたことが、14日の夜に間に合わず、遅刻しちまうとは情けない」
ダイアンナ「仕方ないじゃないさ。アステロイド観測所の留守番を任せる予定の鉄太郎さんが遅くなって、しかも、あたしたちに動かず待機するように命じたんだから」
リバT『仕方ありませんわ。ヤプールの反応が感知されたので、あの強烈な悪意の波動に晒されそうな人たちをフリーにするわけにいかないと言うのが、ウルトラ族の見解なんですから』
ダイアンナ「確かに、あたしは闇属性のバットクイーンさ。だけど、令和の光に感化されて、宝石の輝きを帯びし、ダイアンナ・ジャックイーンとして生まれ変わったんだ。例え、闇のベリアルを父に持とうとも、正義と慈愛の心と、仲間たちとの絆でニュージェネレーションのホープとして成長したジード君みたいに、ウルトラ一族はもっと寛大な精神を持たないといけないと思うよ」
リバT『クイーンは、どのウルトラマンが好きなんですか?』
ダイアンナ「そうだねえ。慈愛の月の心を持つコスモスとか、ダディーNOVAが一番好きなジャックとか、全身のキラキラ光るクリスタルが綺麗なギンガが三強といったところかな」
アスト「オレはもちろん超獣退治の専門家A兄さんだな。先日のZに出演した時の勇姿が今も忘れられないぜ。ああ、オレもA兄さんみたいに、男女2人合体で変身したいぞ」
ダイアンナ「あたしで良ければ、いつでも相手になるが?」
アスト「お前は、一人で男女2人合体したじゃないか。とにかく、オレたちは鉄太郎さんの制止を振り切って、時間移動機能の壊れたタイムマシンに乗って、はるばるアステロイド観測所から裏道使って、ようやくクリスタル湖畔の近くに来たってわけだ。直通転移装置が使えれば、もっと早く来れたんだが」
ダイアンナ「しょせん、敵役としてデビューしたあたしたちは、裏街道を進むしかないのさ。世間の風は、前科者には厳しいねえ」
アスト「おい、さっきから黙り込んでいるキング。何か言ったらどうなんだ?」
触手キング「貴様には黙って風流を愛でる心というものがないでごわすか?」
アスト「風流だと? 何の話だ?」
触手キング「あの巨大な石像よ。まるで宇宙大怪獣ドゴラを模したような触手オブジェ。前にここに来たときは、あのような芸術作品はなかったと記憶するが、20周年記念として特別に用意されたのかもしれん。もしもあれが時空魔術師のセンスであれば、なかなかいい趣味をしていると言えよう。あれこそ触手帝国の象徴にふさわしい」
アスト「もしも、あれがNOVAのセンスだったら、オレはこのまま失踪した方がいいかもな」
リバT『あれはケイPお兄さまの像? 気になりますわね。行ってみましょうか?』
ダイアンナ「先にアッキー様に聞いた方がいいと思うけどね。そう言えば、クリスタルタワーの位置もズレていないか? 前はもっとクリスタル湖と距離が空いていたと記憶するんだが」
アスト「20周年記念だから、地形の模様替えでもしたんじゃないのか? 何しろ、時空を超える大魔術師さまなんだから、土地を多少動かすぐらいお手の物だろうぜ」
謎の声《超獣クラブキングの眷属よ》
触手キング「ん? 誰か何か言ったか?」
アスト「さっきから普通に喋ってるぜ。いつも寡黙なのはお前だろうが」
触手キング「いや、超獣とか、眷属とか……」
アスト「聞き間違いじゃないのか? 『時空を超える』とか言ったから、『超時空』と勘違いしたとか?」
謎の声《我はヤプール。この声は、超獣の眷属たるお前にしか届いていない》
触手キング「ヤプールだと!?」
アスト「今ごろ反応してるなよ。確かにヤプールの名は出したが、その話はもう終わっている。今はNOVAの変なセンスを論評する流れだ」
ヤプールの声《今すぐ我が元に来い。超獣は超獣に還れ。力を授けてやるぞ》
触手キング「吾が名は触手キング。クラブキング、蟹キングと呼ばれたのは昔の話。今は触手の神を信じ、触手帝国の夢に向かって邁進するのみ」
ヤプール《お前は我を信じなさい、ほれ信じなさい、ほれ信じなさい……》
触手キング「うう、頭の中に歌が鳴り響く〜。空は青くない、黄色だ〜。山は茶色だ、死んだ〜」
アスト「お、おい。お前、突然、何を言い出すんだ?」
ヤプール《クラブキング、改め触手キングよ。我は触手の神だ》
触手キング「触手の神! あなたこそが!」
ヤプール《そう、神たる我が像に己が身を捧げよ、キング。そうすれば、我らは一体となり、邪神Kとして、新たな帝国を築くこともできよう》
触手キング「おお、それこそが吾が望み。神よ、吾を導きたまえ!」
アスト「さっきから誰と喋ってるんだよ。落ち着け」
触手キング「ええい、放せ、A(エース)。吾は行かねばならんのでごわす」
ヤプール《Aだと? その男、Aなのか?》
触手キング「そうです、Aです。吾がマーキュリー・バットのスピードA」
ヤプール《Aは敵だ。今すぐ殺せ》
触手キング「はっ、吾が神よ、仰せのままに。悪いな、A。死んでもらうぞ」
アスト「うおっ、何だ? 突然、攻撃してきやがって。オレが超スピードで回避しなければ、即死だったぞ」
触手キング「どうして避ける?」
アスト「そっちこそ、どうして攻撃してくるんだ」
触手キング「それは、お前がAだからだ」
アスト「理由になってねえ」
触手キング「十分な理由ではないか。お前はA。吾が神はAが憎い。だから、神の命に従い、吾がAを殺す。おとなしく死んでくれ」
アスト「断る。前からおかしな奴だと思っていたが、とうとう一線を越えたようだな。お前が本気なら、オレだって本気で戦ってやる。去年だって、お前が悪霊に取り憑かれ、戦ったことがあったな。あの時に果たせなかった決着、今ここで着けてやるとするか」
触手キング「面白い。目にもの見せてやる」
ダイアンナ「……といったことがあったんだよ、アッキー様。突然の同士討ちに見かねたあたしが、アストとリバTを連れて撤退し、キングはそのままドゴラ像の方に向かったんだけど、一体、何なんだい、あの変な像は?」
晶華「ケイソンとヤプールに取り憑かれたKPイチローちゃんの成れの果てよ」
リバT『やっぱり、お兄さまが? ヤプールの声は私めにも届きましたが、元々超獣の眷属ではない触手の女神だから、支配力は届かなかったようです』
NOVA2009『ええと、今、ケイPのメモリを確認しているんだけど、石になったのがマーク1で、今、ぼくが使っているボディがマーク2。それにマーク3ってのが、蟹キングと融合してクラゲキング、あるいは触手キングになったらしいね。つまり、ケイPシリーズは2体がヤプールの手に堕ちたってことでいいのかな』
リバT『そう言うあなたはどちら様ですか? ジロー兄さまのボディを使っているとは……』
晶華「2009年の平成NOVAメモリで起動しているの。マーク2ちゃんは思考回路がショックで壊れちゃったから。また、ドクター・ウルシェードさんに修復をお願いしないといけないわね。今度はもっと打たれ強くなるよう改修してもらわないと」
リバT『ジロー兄さまは繊細で壊れやすいみたいですね。まあ、そっちも悪堕ちしなかったのは不幸中の幸いでしたが。ともあれ、ここまでケイP一族が失態を続けている以上、一族の汚名は唯一残された妹である私めが晴らさないといけないようです。ヤプールの魔の手から、イチロー兄さんとサブロー兄さんを解放することが、私めの使命と言えましょう』
アスト「キングについては、正直どっちでもいいって思ってるんだ。あいつがあいつの信念に従って、ヤプールとか触手の味方に付いたんだったら、好きにすればいい。ただし、オレたちの邪魔をするなら、この辺りで引導を渡してやる時かもしれないってな」
ダイアンナ「まあ、そうなるとパグマイアのメンツが一人欠場することになるけどね。仲間のよしみだから、助けられるなら助けたいけど、無理なら非情に割り切る。そうでないと生き残れない」
晶華「そんな。2人とも冷たいよ。何があっても、絆はあきらめない。それがウルトラの心ってものでしょう?」
MAD ウルトラマンR/B(ルーブ) OP Full: Hands
ダイアンナ「できることはできる。だけど、できないことはできないんだ。アッキー様の優しさは嫌いじゃないけど、自分から闇に降った者を案ずるあまり、大事な仲間の想いを見失うことがあってはいけない。何かを得るには、何かを捨てないといけないことだってあるんだよ」
晶華「欲しいものは何があっても手に入れる、全てな。それが宇宙海賊や快盗の流儀ってもんでしょう?」
アスト「果たして、触手キングの命というのが、欲しいものに当たるかは謎だけどな。たまたま何かの縁で、一時期いっしょに行動したってだけで、ずっと縛られるのもな。出会いもあれば、別れもあるのが人生ってもんだ」
晶華「だけど、私はハッピーな物語を紡ぎたい。仲間だった人を見捨てて、ハッピーになれるとは思えないんだよ(涙目)」
ダイアンナ「やれやれ。この娘の涙を、キングの奴に見せてやりたいねえ。それを見ても、触手の方がいいなんて言い出したら、その時こそケジメを付けてやる」
闇と光
リトル「巨大怪物体、石化の封印が解除されましたぁ」
晶華「え、何で?」
リトル「モニターを見て下さいぃ。ドゴラが人型と融合し、恐ろしい姿にぃ」
アスト「こいつは……ゲームによっては、正気度判定が必要になるレベルだな」
晶華「これこそ、邪神K。KPちゃんと、悪霊ケイソンと、触手キングさんの3つのKがヤプールの悪意を媒介に融合した超異次元怪物体……と言ったところかしら」
リトル「大きさ推定300メートル級。真っ直ぐ、タワーに向かって進んできますぅ」
晶華「まずいわね。ジョエル君、タワーをもう一度飛行させられるかしら」
ジョエル「可能です」
晶華「じゃあ、すぐにタワーを避難させてちょうだい」
ジョエル「その命令は聞けません。杖の魔力を必要としますので、杖の所持者の許可がなければ」
晶華「いちいち面倒くさいわね。NOVAちゃん、命令をお願い」
NOVA2009『何だか女王に仕える艦長になった気分だな。クリスタルタワー今すぐ浮上』
ジョエル「命令受領しました。今すぐ浮上します」
NOVA2009『そのまま回避行動を続け、邪神Kよりできるだけ距離をとれ』
リトル「邪神K。翼を広げて飛行形態をとりましたぁ」
晶華「え、向こうも飛べるわけ?」
リトル「速度、邪神Kの方が本塔より上。このままだと追いつかれますぅ」
晶華「お願い、誰かタワーを守ってちょうだい」
晶華「え、ゼロさん?」
ゼロ「待たせたな、メガネシルバーの晶華ちゃん。メガネンジャーのよしみで、アステロイド観測所から、わざわざ出向いてやったぜ。この俺が来たからには、安心しな。行くぞ、ヤプールの巨大超獣。俺のビッグバンはもう止められないぜ!」
(当記事 完。「第4話 つながる想い」につづく)