昨日の続き。
今回は、トーリンを始めとするドワーフたちについて、まとめてみよう、と。
で、『ホビット』や『指輪』関係の情報をネットであさったりもして、ファンサイトとかを見ていると、自分なんかとは比にならないくらい濃いマニアの方もいっぱいいることが分かります。
自分はその辺、淡白なもので、『指輪』を読んで、『ホビット』を訳して、映画を何度か見たら、それで満足してたんですが。80年代に読んだ後は、90年代〜ゼロ年代に読み返したりもせず、今回の『ホビット』映画化に際して、久しぶりに読み返している状況。
おかげで、92年の新訳『指輪』とかは読まず、97年の山本史郎版・旧訳『ホビット』は存在すら知らなかった。まあ、マニアを名乗るには浅いレベルかな、と。
他には、TRPGの『指輪物語RPG』ぐらいで、いっぱしのマニア気取りをしていただけで、ちょっと井の中の蛙気分を味わっている最中。
そして、ドワーフについても、いろいろ書こうかと思いつつ、すでに多くのサイトでネタにされているので、それを紹介するだけでもいいのかな、と。
たとえば、こことか、
『ホビットの冒険』のドワーフ一行、キャラクター紹介 - Togetter
海外のこことかが分かりやすい、と思った。
The Hobbit's amazing transformations - NZ Herald
その上で、自分なりの切り口を模索しつつのダベリをしてみます。
1.トーリン・オーケンシールド
『ホビット』のドワーフだと、まず、この方を紹介しないといけません。
ところで、初めて『ホビットの冒険』に接した際、自分は幼少期に見たこのアニメを思い出しました。
ええと、『小さなバイキング ビッケ』というのですが、主人公ビッケの父親はバイキングの族長ハルバル父さん。これが、今回の『ホビット』映画を見る以前の、NOVAのトーリンのイメージだったりします。
物語構造は、陽気で豪胆だけど知恵が足りないで毎回ピンチに陥るバイキングの一族を、知恵ある子供のビッケが機転を利かせて助ける児童文学の類型なんですが、まあ、ビッケに相当する活躍をするのがビルボなんですね。
それに主題歌で、「ハルバルとうさん こわいけど、ゴルムにファクセにスノーレ チューレ 詩人のウルメに ウローブじいさん♪」って、バイキング仲間の名前を連呼するのも、
「トーリン、バーリン、ドワーリン、フィーリにキーリ、オイン、グローイン、ドーリにオーリ、ノーリ、ビフール、ボフール、ボンブール」と13人のドワーフに被って来たり。
で、ドワーフの話をしようと思っていたのに、どうしていきなりビッケに脱線してるんだ? といぶかしげなブログ読者の皆さんもいるでしょうが、大丈夫、書いてるNOVAも同じ心境です(オイ)。
まあ、寄り道してみたら、昨年の年末に実写版ビッケの日本語版DVDも出ていたということが分かって、これも何かの縁かと思い貼り付けてみる。
とにかく、NOVAにとってのトーリンは、長年ハルバル父さんのイメージだったわけで、それが今回のリチャード・アーミテッジ演じる、あまりに渋いトーリンのイメージに完全に上書きされてしまったんですな。
もう、ドワーフと言えば、ずっと「斧やハンマー振り回すヒゲだるま」だったのに。
あるいは、森でハイホーハイホー歌っている木こりのイメージ。
それが、映画のトーリンを見て、「こんなのはドワーフじゃない」という拒絶反応も起こすことなく、あっさり受け入れてしまった自分にも驚きだったり。
今までだったら、「確かに格好いいけど、これ、ドワーフじゃなくね?」と批判しそうなものなのに。
……とまあ、ここまで書いて、トーリンについて、こういう切り口で書いているブログは他にないだろう、とニッコリ中。
でも、これまでも散々書いてきたしなあ。「トーリン、渋くて格好いい」って。これ以上、何を書けばいいかなあ、と思いつつ、映画より翻訳書籍の話に参ります。
ええと、トーリンのお父さんはスライン、お爺さんはスロールと言います。トーリンは、英語ではThorin。つまり、マイティー・ソー(Thor)と同じ発音の系譜なんですね。父や祖父の名前に合わせるなら、トーリンよりもソーリンとした方がいいのでしょうが、瀬田さんはトーリンと訳しちゃった。
もちろん、マイティー・ソーも北欧の雷神トールの英語読みなので、トーリンも英語よりは古ゲルマンの読み方に合わせたと考えることができます。
自分も昔、『ホビット』を個人的に訳した際に、Thorinは父祖の名前に合わせて、ソーリンにした方がいいんじゃないか、と考えたわけですが、97年に出版された山本史郎訳がそういう表記だったらしいです。
で、散々、批判された結果、今回の山本・新版ではトリンになったとか。
まあ、トーリンがトリンになったのは、読むときに意識して伸ばせばいいので気にならないのですが、トリンに合わせて、父祖の名前までトラインとトロールに変更されたりして苦笑。ちなみに、元はThrainとThror。
トーリンがソーリンになったり、トリンになったりするのは、まあ英語の読み方の表記違いとして自分は納得できます。でも、スラインやスロールが、トラインやトロールになるのは、発音表記上、有り得ないんじゃないかな。
とりわけ、物語世界のモンスターとして、トロール(『ホビット』ではトロルと表記)が存在している世界では、紛らわしくて仕方ない。
瀬田さんの版では、スロールの名前は出てませんが(じいさま、じいさんと語られるだけ)、改訂後は名前付きで語られます。第1章では悪竜スマウグを出し抜くための秘密の扉が示された「スロールの地図」が話題になるのですが、それを「トロールの地図」と表記されちゃ、何だか違うイメージが出てきて閉口してしまう。
……と、第1章読んで、トーリンの感想は以上。
何だか、もっと書かないといけないことがあるような気もしますが、彼について書く機会は、まだたくさんあると思うので、今回はこれぐらいで。
少なくとも、心に移りゆくよしなしごとは書いたぞ、と。