ゾンビという大きな山を越えたので、何だか気が楽になりました。
まあ、アンデッド業界には、もう一つの大きな山場「ヴァンパイア」が控えているんですけどね。考えてみれば、「ゾンビ」と「ヴァンパイア」でそれぞれ五十音を一つ使えば楽だった? とも思いますが、今さら泣き言は言うまい。
さて、当ネタ用に、新たに「雑学」カテゴリーを設定。気合を入れて、書き続けます。
今回のお題は、割と楽なので、一気に行きます。「ワイト」「レイス」「マミー」の3本なり。
ワイト
ゾンビ、グールに続くレベル4アンデッドは、これ。
昔、D&Dをやっていて、これがどんなモンスターか分からずに困ったことがあります。大体、英語表記のモンスターを調べるのに、まず英和辞典を使って、日本語の訳を調べますよね。
スケルトンは「骸骨」、ゾンビは「動く死体」、グールは「食屍鬼」、その後のレイスは「死霊」、マミーは「ミイラ」、ヴァンパイアは「吸血鬼」など、日本語の意味が分かれば、大体イメージできたりもするんです。
でも、ワイト(wight)って、普通の辞書で調べても載っていないんですね。日本語で訳せないということは、ゲームマスターとしては大変、説明しにくい。
「君たちの前にワイトが現われたよ」と言っても、「ワイトって何?」と尋ねられると、「ええと……何だか青白い燐光を放つ、やつれた人影だ。いかにも、アンデッドって分かる姿だね。でも、ゾンビやグールとは違う、もっとヤバそうな感じだ」と説明できたら、まだマシ。
これが、D&Dのモンスターの説明だと、「ワイトは、人間や亜人間の死体に宿る霊である」との記述があって、実体を持つのか、持たないのか、それすらも分かりにくかった、と。まあ、「変な人魂エネルギーが人間の死体に取り付いて、動かしている」と考えると、「なるほど、いわゆるウルトラマンに取り付かれたハヤタ隊員だな」などと誤解も生じたりするんですが(笑)*1。
で、しばらくファンタジーRPGに接していると、ワイトの元ネタが、『指輪物語』に登場した塚人(バロー・ワイト)だという情報に触れて、wightってのが「人」を表す古英語だという雑学知識も手に入れるのですが。
ええと、古英語ってだけで、「人」って言葉にも「古の人」ってニュアンスが加わるのでしょうね。
熱意をもってゲームをする中で、分からない情報に接して、いろいろと調べる習慣がつく。高校時代の自分にとって、D&Dが教えてくれたことは膨大です。まあ、今だとインターネットで、はるかに効率よく調べられるのですが。
今回も、ワイトで検索してみて、「ワイト島」という実在の地名が、イギリスのすぐ南にあることを発見。と言っても、アンデッドモンスターがうようよいる島では当然ないのですが。むしろ、「博物館の恐竜が、いっしょに浮かれて踊ったぜ♪」の歌のように、ヨーロッパで恐竜の化石が最も豊富な場所だとか。おかげで「恐竜島」という名前の博物館があったり、他にも「ブラックギャング渓谷」といった味のあるテーマパークがあったりします。
何だか、そのまま、ファンタジーRPGの舞台に流用できそう。
それはさておき、アンデッドのワイトに話を戻します。
D&Dの赤箱(ベーシックルール、1〜3レベルキャラに対応)では、最強アンデッドであるワイト。
こいつの特殊能力は2つ。まず、防御面で「銀の武器か魔法の武器でないとダメージ無効」というもの。まあ、マスターが親切で、パーティーにすでに魔法の剣でも与えていれば、何の問題もないんですけどね。
問題は、もう一つ。攻撃面で、これ以降のアンデッドの定番となる「エナジードレイン(生命力吸収)」です。ワイトは、肉体的にダメージを与えることはしませんが、触れた相手の生命力、すなわちキャラクターレベルを吸い取ってしまいます。レベルを4まで上げたのに、ワイトの攻撃が命中しただけで、3に低下してしまうんですよ。2回触られたらレベル2、3回触られたらレベル1に、どんどん弱っていき、4回触られたら、はい、ご愁傷様。
その後、レベルを吸い尽くされて死んだキャラクターは、1〜4日後にワイトとして復活、自分を殺したワイトの手下になってしまいます。この辺から、ホラー映画的演出が可能ですが、プレイヤーキャラクター(PC)に対してそこまでするのは、ゲームマスターとしても度胸がいりますよね。ぼくは、やったことがない。
実際、「エナジードレイン」によるレベル吸収は、ゲームマスターにとっても使いにくい特殊能力なんですよ。純粋にダンジョン探索ゲーム、死ぬかどうかは運次第のサバイバルゲームとしてなら、「うわ、レベルが下がった。やべえ」って状況もスリルがあって楽しめるのかもしれませんが、ストーリーゲームとして、「ラスボス戦を盛り上げるために、PCのレベルや戦闘能力を把握して計算した上で、バランスよいバトルを考えるマスター」にとっては、プレイ中にキャラのレベルが下がるのは想定外の事故。そういうのを嫌うストーリー志向マスターにとっては、PCの楯となる生贄NPCを同行させるなどの救済策を考えた上で、ワイトの脅威を演出するなど、まあ考えることも多し。
エナジードレインといえば、コンピューターゲームの『ウィザードリィ』なんかでも採用されていますが、せっかく育てたキャラのレベルが下がるのを嫌って、喰らったら即リセット、というゲームスタイルもあります(自分はそれ)。
しかも、ハイリスク、ハイリターンで、レベルを失っても、それを凌駕するだけの経験値をくれるなら、倒し甲斐もあるんですけど、『ウィザードリィ』のアンデッド系って、大抵、獲得経験値も低く設定されていましたからね。
ハイリスク、ローリターンの賭けには乗らない、というプレイスタイルから、世の中、効率化が大事という知恵も学んだり。まあ、効率悪くても、作業そのものにのめり込んで、楽しめるのなら、それも幸せな生き方なんですけどね。
う〜ん、すごいな、ワイト。NOVAに人生哲学まで語らせてくれたよ。
レイス
赤箱モンスターが終わって、いよいよ次の段階、青箱(エキスパートルール、レベル4〜14対応)モンスターに移ります。
レイスのつづりは「Wraith」。適当に英和辞典で探すと、「Race(競走、種族)」や「Lace(留め紐、衣服素材のレース)」、似たものでも「Wrath(怒り、復讐)」などに行き当たってしまって、高校時代のNOVAを大いに悩ませてくれた単語です。今でも、「レース」という言葉を聞くと、「どの意味のレースだ? つづりは何?」と、ついつい考えてしまうわけで。
このレイス、『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』というテーブルトークRPGシリーズ(総称「ワールド・オブ・ダークネス」シリーズ)の4作目で『Wraith: The Oblivion』というゲームがあったのですが、日本語に訳されることなく展開終了。2作目の『ワーウルフ』や3作目の『メイジ』までは訳されたんですけどね。
まあ、吸血鬼とか狼男ならともかく、「みんなで幽霊ごっこしましょ」ってコンセプトのRPGが商品として発売されること自体、アメリカってすげえ、って思いました。「幽霊もできるRPG」なら、まあ分からなくもないですけどね。
ともあれ、レイスはワイトと違って、「固体としての体を持っておらず、青白く、ほとんど透明に近い人の形をしたもやとして現われる」という記述があり、イメージしやすかったです。
まあ、もっとレベルが上がれば、「スペクター」や「ゴースト」とどこが違うんだ? という疑問も出てくるんですけどね。
能力的には、単純にワイトの上位バージョンと言えます。「通常武器の無効化」「エナジードレイン」をそのまま持っており、さらに高速飛行可能なので逃げにくい、という難儀な亡霊です。
まあ、こういう実体を持たない幽霊関係は、後々語る機会もありそうですから、先送りにしておきましょう。
マミー
さあ、本日のテーマで、最もメジャーと言えるのが、マミー、いわゆるミイラ男です。いや、ミイラ女でも構わないのですが。包帯少女萌えというジャンルも確実にございますし。
ちなみに、マミーのつづりは「Mummy」。お母さんの場合は「Mammy」。でも、子供が間違えて「Mommy」と書いたり、「Mummy」と書いたりするのもありがちだとか。
ミイラママ(Mammy the Mummy)なんてネタもありかな、と思って検索すると、まだアマゾンでは引っ掛かりません。だったら、「ミイラ母さんマミ」なんてキャラ名はネタとして使えそうだなあ、と思いつつ。
こういう方面なら、十分可能かと。
なお、ミイラという言葉の語源は諸説ありますが、16〜7世紀にポルトガル語の「mirra(没薬)」から来たという説が有力。後は、漢字で「木乃伊」と表記されますが、これは北京語で「ムーナイイー」と読むので、マミーの音写として中国から来たという説が濃厚。
ミイラの風習で有名なのはエジプトですが、他にアンデスや中国、そして日本でも高位の仏僧がミイラとして遺体保存する習慣が一部にあったということですね。また、奥州藤原氏のミイラは中尊寺金色堂とともに有名。
さて、D&Dでのマミーは、エナジードレインがない分、モンスターとして登場させやすいと思います。
特殊能力は、「恐怖による金縛り」と「病気」。まあ、病気は厄介だけど、治療する手段を求めるといった冒険ネタに活かせるので問題なし。エナジードレインには治療手段がないですからね(少なくともエキスパートレベルでは)。
ただし、マミーの能力で意外と侮れないのは、「呪文、火、魔法の武器によってしか傷つかず、しかも、これらは半分のダメージしか与えない」こと。実質、HPが倍あるようなものなので、結構タフなモンスターだったりします。
まあ、移動力がそこそこなので、逃げることはたやすいのですけどね。
それと結構、宝を持っているデータなので、宝物庫の前の門番という形で扱いやすいモンスター。こういうハイリスク、ハイリターンなモンスターは、マスターとしても使い勝手が良くて好き。
他に、ゲームでは、レイス同様、「ワールド・オブ・ダークネス」シリーズで『Mummy: The Resurrection』というのがありまして、「現代人の肉体を借りて甦った古代のミイラを演じる転生戦士もの」だとか。現代人の肉体を借りているのなら、ミイラじゃないような気もするのですが、詳しいことは自分も分かりません。
で、ゾンビ同様に、「ミイラの歴史」なんてネタも考えてみましたが、あまり面白みがないことに気付きました。ゾンビと違って、ミイラは昔からキャラが固定されていて変化がないわけですしね。
これも最近、話題に出した気がしますし。
強いて言うなら、これが近年の話題かな、と。
「ハムナプトラ」シリーズ。原題は、そのままマミーですね。ミイラマニアは必見です。
でも、ゾンビと違って、ミイラって、それ単体で活躍できるモンスターではなくて、「古代遺跡の探検」というシチュエーションと組み合わさって、雰囲気をかもし出すモンスターだと思いますね。後は、まあ「古代の王女に横恋慕した高僧の呪い」か「王家の墓」ってのが、イメージワードになるぐらい。
それでも、
こういうネタで、萌え妄想を広げることはできそう。
彼女たちに、ミイラの包帯コスプレさせて、「クリーミーマミー」「エスパーマミー」なんてネタも、どこかにあるかなあ。