今回の話でも、「他人と関わって、痛い思いをしてばかりのカノン」が描かれます。
見ていると、カノンって、ストレートに自分の想いを伝えることしかしないんですね。相手の気持ちを受け止めるとか、想像した上で段取りを踏んで接触するとか、そういう前段階のコミュニケーションを経ずに、いきなりずかずかと踏み込んでくる。これが、タイヘイなどのオンバケなら、まあ人間社会のルールに無頓着なので仕方ないか、と思えるんだけど、カノンの場合は……まあ、世間知らずという意味ならタイヘイと一緒か。
もちろん、カノンって、今の自分と違って経験不足な大学生だから、比べるとしたら、自分の学生時代を思い出してみるのがフェアなんでしょうけど……(遠い目)、当時は今よりも好き嫌いが激しかったかな。
「カノンみたいに、話し合えば誰とでも分かり合えるなんて幻想を抱く」ことはせずに、「人を見て、通じ合える相手かどうかを見極めた上で、徐々に自己開示する」って方向だったよね。「誰とでも」なんてのはとても無理で、「自己開示の前段階」を経る、と。
ただ、「通じ合える」と思った(思い込んだ)後が、性急だったかもしれないな。そこで一気にずかずかと踏み込んで、「通じ合えない部分がある」ことに気付いて幻滅してしまい……ということもあって、落ち込むという経験もした。結局、「一人の、あるいは少数の人間(親友と思い込んだ相手)に、自分の全てを受け入れてもらおうと思って、突き進んだ挙句、失敗」という過程を経て、今だと、「相手に合わせて、自分を小出しにするという社交の基本」と、時には「受け入れてもらうかどうかは関係なしに、自分らしさはこれだ、と積極的にアピールする技術」、で、「せっかくアピールするなら、独り善がりじゃなくて、何か相手に快く伝えるための芸とかネタに昇華するだけのサービス精神」とか、そういうのをこれまで培ってきたんだ、と思う。
うん、そういう自分自身の来し方を考えると、まだ未熟なカノンを笑うことはできないな。失敗しても、タイヘイに励まされながら、「善意は必ず通じる」と信じて、果敢に訴えるカノンを「青い」と感じつつも、まあ頑張れや、と応援するスタンスになるんだろうね。
おそらく、学生時代の自分の不器用さみたいな物を、ドラマか何かで見たとしても、ツッコミどころ多いだろうし(爆)。
何はともあれ、カノンが「鬱になって引き篭もらず、外向きになっている」のはいいことです。これで、失敗を重ねて、だんだん学ぶ成長ドラマをきちんと見せてくれるなら、時間はかかっても見てられるかな。
でも、残り7話で満足できる成長にまで至るかどうか。
とりあえず、一つのゴールとしては、「人のために働いて、それで傷ついて、なお、あきらめないカノン」が、「いまだ引き篭もっているブジンサマ」に、歌を通じて説教するような結末?
「裏切られても、自分の善意は崩さず、行動し続ける」ってのが一つの理想なんだろうけど、「裏切られても、自分の視聴意欲は崩さず、見続ける」って姿勢を視聴者に強要することで、疑似体験させようってのがカノンの方向性かなあ? ともツッコミ入れつつ。
オンバケ地方編
山寺の坊さんを虐殺したイパダダを追って、僧形姿のイパダダと対峙するサワモリさんたち。
まあ、また適当にアクションして見せた後、逃げられるんだろうなあ、と予測してみる。
前回の予想は、ほぼ正解。
一つ違ったのは、「適当にアクション」すらしなかったこと。
イパダダの口から、変な手がニュッと伸びて、岩壁の上を乗り越えて、あっさり逃げられるだけ。それを為すすべもなく見守るサワモリたち……って脱力展開。
「少しぐらい戦ってくれよ」と言いたくなった、特撮アクションファンのNOVAです。
大体、ハシタカさん、飛べるのに、追わないなんてねえ。
飛んで追ったら撃墜されて、「ゴメン、逃げられた」と彼女が言うぐらいでも、納得できるのに。
まあ、次回、キリノハさん登場に期待するとします。
コミック版だと、キリノハさん、「不甲斐ないオンバケ仲間」を批判するキャラなんだけど、そういう姿勢でツッコミ入れてくれるなら、NOVAも賛同します。
「チッ、イパダダに逃げられてばかりで、情けない」ってね。事実そうだから。
タイヘイVSブジンサマ
前回の後では、タイヘイとブジンサマの問答に期待したのに、ブジンサマ、眠ったまま、スルーしてやんの。
なるほど、ブジンサマは「一方的に文句を言った」だけで、「熱い議論」には興味ないんだね。そこで、せめて、「わしに質問するな」とか「絶望がわしのゴールだ」とか「(タイヘイの追求を)振り切るぜ」とか、ネタになるセリフを言ってくれれば、拍手なのに。
で、ブジンサマが動かないなら、ゴンベエさんを代役に、という話が出ているのですが、今回の話では「図体の大きな封印役」というキャラが語られます。
ええと、「巨大な壷妖怪」なんて思いつきましたが、果たして?
遠距離通信
幸太郎やかなめという、自分が苦手な2人との接触を悩むカノン。
その悩みを一人でつぶやいていると、ブチンコとタマッコのトランシーバー効果で、タイヘイに想いが通じます。
そこで、11話の「リストラ男」の話を持ち出して、「人に裏切られても、人を信じられるのか?」という命題を、タイヘイに尋ねるカノン。
タイヘイは、「人間を好きでいたいから、自分は信じる」という答えを返し、それがカノンの行動方針となります。
まあ、言っている言葉そのものは共感できます。
でもね、人間の気持ちって複雑だから、「ストレートに信じている気持ちをぶつけられても、相手がそれに拒否反応を起こしてしまう」ことだってあるわけで。「ハリネズミのジレンマ」のたとえもあるけど、その辺の距離感に対するデリケートさとか、想像力とか、相手の事情を察しようとする配慮も、欲しいわけで。
その辺を諭せる、達観したキャラが、あまりいないのがカノンワールドなんだよね。これが学園物だと、「経験豊かな教師」が分かりやすい理想的な結論を示すんだけど、カノンの場合は、大人キャラも総じて「夢とか、人のつながりとかを否定し、自分の人生に専念しろ」ってスタンスみたいだからねえ。
で、カノンが「自分の人生に専念」だと、「学業と音楽活動に邁進」になるんだろうけど、そういう姿はあまり見せてくれないわけで(苦笑)。音楽活動に邁進だと、サキの誘いに応じたはずで。
幸太郎
で、バンド解散という憂き目にあって、自暴自棄のこいつです。
「危ない薬の売人」というところまで堕してしまい、これに「男性への依存症」を示すかなめを巻き込もうとした次第。
カノンは、かなめを守るために、苦手な幸太郎と直接体面を敢行するわけですが、正直、遅いですなあ。イパダダが取り付いているときに、そうしていれば、「幸太郎の中からイパダダ出現、ピンチのカノン、それを救うべく駆けつけるタイヘイたち」という特撮アクション物王道展開が見られたのに。
ともあれ、「幸太郎VSカノン」が今回の、そして今までのドラマのポイントとなるわけですが……話が平行線で、ちっとも盛り上がらなかったなあ、というのが感想。
女好きの幸太郎、「かなめを守りたいなら、おまえ(カノン)がもう一度、よりを戻すか? 何だか気が強くなったみたいで、それもそそるしよ。お前の声の『ToTheTop』も聞いてみたいな」
「ふざけないで!」(バシッとビンタ)
人によっては、このビンタだけで、これまでのカタルシスを解消できたかもしれませんが、自分はダメ。
正直言えば、幸太郎って、「自分の欲望にストレートなだけで、カノンを嫌っているわけではない」んですよね。カノンとの仲がこじれたのだって、「カノンが相手の浮気を許せなかった」という一方的な断絶なわけで、幸太郎の方がカノンを拒んだわけではない。
これって、幸太郎の立場からすれば、「ストレートに気持ちをぶつけて、相手に拒否反応を起こされた」ってだけで、幸太郎に「デリケートな配慮がない」ことを責めるなら、カノンだって他の人に対して同じように振る舞っているわけで。
今回のストーリーだと、「カノンが善の立場で、幸太郎が悪の立場」と一方的に決められてしまいましたが、幸太郎の内面をもっと描くこともできたはずで。単に「カノンを裏切った悪い奴」ってだけの扱いなら、これまで幸太郎というキャラを描いたのは何のためだったんだ? という疑問も湧きます。
もちろん、この後で「幸太郎の心情」をフォローすることもできるかもしれなかったのですが、本話のラスト近くで、「幸太郎が警察に逮捕される」というオチを迎えます。これで、おそらく幸太郎絡みのストーリーは終わったな、と思いますね。
これまで「幸太郎に裏切られて云々」というドラマを延々と描いてきた結末がこれなら、ちょっとお粗末だなあ、と思ったり。
かなめ
一方のかなめ。
彼女も「カノンを裏切って、人間不信を起こさせた一人」ということで、彼女との対決が本話のテーマになるわけですが、幸太郎みたいに「一方的な悪」というようには描かれておらず、「被害者」としての側面を強調されています。
前回の引きとなった彼女のプロフですが、「両親が離婚して、母親に引き取られる。再婚した義父が暴力的で、母親も守ってくれず、虐待されて育つ。その後、高校時代に付き合っていた男性がいたものの、彼女が恋人に対する依存症や独占欲を示したせいで、男の方が重荷を感じて破局。それ以来、ずっと孤独を感じている」という内容が示され、カノンは同情します。
で、そのプロフを読んだことを、かなめに伝えるカノン。こういうところも、デリカシーのないストレートさだね。相手の傷にずかずか踏み込むんだから。
「だから? 同情したとでも言うの? あんたみたいな偽善者、私は嫌い」と、かなめに拒絶されて落ち込むカノン。そりゃ、カノンが悪い。
カノンにすれば、「幸太郎と付き合うことで、ますます傷つくことになるだろうかなめ」を心配して、「幸太郎と付き合うな」と言いたかったんだろうけど、そのために傷口に触れてしまうのは、思いきり失敗してます。自分が「幸太郎の裏切りをトラウマのように抱えて、祈り歌と向き合えずに来た」ことを考えると、そういう相手の傷口に触れるような発言が危険なことぐらい分かるだろうに。つくづく、自分の傷ついた経験を、相手の心情を理解するのに使えない娘だなあ、と。
その後、幸太郎との対面に失敗し、落ち込み、帰ってきたタイヘイに慰められてから、ブチンコの偵察で「かなめが危ない薬の取り引き現場に向かった」ことを知らされるカノン。
で、その現場で、再度かなめと対峙するカノン。
かなめの気持ちが「都会に出て孤独なときに、幸太郎と出会って、信じてしまって裏切られた自分と同じ」と切々と訴えるカノンですが、結局、拒絶された挙句、「自分が幸太郎にした」のと同じビンタを返されてしまいます。
これが「Gガンダムの武闘家」なら、「拳と拳を交えることで、深く結びつく友情」なんてノリも演出するんだろうけど、カノンの場合、「心の交流」には至らずに「一方的に気持ちをぶつける」だけで終わり、という展開になりがちですね。それでも、「たとえ拒絶されても、ぶつけることに意味がある」という方向性なんだろうか。だったら、「幸太郎というキャラのやっていること」も否定できないんだろうけど、それに対しては「カノン視点で、悪い奴と断罪している」、言ってしまえば、カノン主観は、ダブルスタンダードそのものなので、論理的にも、そして感情的にも、共感できない、と。
それでもまあ、不機嫌になったかなめがその場を立ち去り、「薬の取り引き」に関わらせなかったことで、後日、幸太郎が逮捕されても、かなめまで巻き込まずに済んだ、という意味では、今回の話のミッションは達成できたわけで。
かなめ視点
彼女のドラマも、まあ、今回で終了だろうけど、この結末はどうかなあ。
カノンから見れば、「心の交流には至らなかったけど、かなめが幸太郎の被害を受けずに、助けることができた。いずれ、自分の善意は受け入れてもらえるはず」と希望観測的に終わっています(そのため、ドラマ全体として後味は悪くない)。
でも、かなめ視点だと、「信じていた幸太郎に裏切られた」という点と、「もしかしたら、幸太郎の逮捕は、カノンが警察に通報したから?」という疑念が生じそうな流れなので、ますます人を信じられなくなりそうです。
依存症の場合、仮に「信じていた人が悪いことをしている」としても、それを支えて共犯になることを辞さず、かえって相手に尽くす自分に酔ってしまうところがあるので、それができずに自分が相手を裏切ってしまったと感じることで、かえって落ち込んでしまうことがあります。
物語のラストの、かなめの心情がそうなんだろうけど、それに対して、カノンは異常に楽観的です。カノン自身は、タイヘイやオンバケたちという支え役がいるけれども、かなめの場合、どうなるのかな。
ここで、学業に専念するなり、違う男を見つけるなり、いっそのことネット小説を書いたり、いろいろな可能性を妄想したいところ。
PS:まあ、かなめがレギュラーなら、傷ついた彼女に対して、その後もカノンが友人として接することで、フォローする展開もありだろうけど。