待望の第11話。朝の新聞でサブタイトルを見たときからドキドキです。
「仕事人、死す!!」
え、やっぱ源太が死ぬの? それとも、小五郎が返り討ちに合うのかな?
それとも、タイトルに偽りあり? 3話の「偽装詐欺」みたいなもの?
で、本編見た感想。
詐欺師の話ではあったけれど、タイトルに偽りはなかったです。
一人の仕事人の人情と死を、過不足なく描いた作品として、納得です。
さらば、源太。
情に過剰に揺れ動く半人前の仕事人だったけれど、これ以上、「自分と同じ犠牲者」を出さないために、最後に自分一人で決着をつけた姿は、「仕事はきっちり果たした」と評価します。
前回の後始末
源太を不審人物と見なした奉行所同心・大河原伝七。
2人を切り捨てようと刀を抜きかける小五郎。
……こんな緊迫した状況で、3週間のインターバルをはさんだのですが、その結果は、伝七の注意を「涼次」が引き付け、「源太は怪しい者じゃない」と主水が取り成すことで何とか解決。伝七は、主水の見た「怪しい男」を追って、源太を解放しました。
その後、小五郎と涼次の間でにらみ合いが生じましたが、源太が「殺しを見られたとしても、あの役人をオレが始末すればいいんだろう。いつまでも半人前扱いしねえでくれ」と言い張って、一応の解決。
人の良い同心・大河原伝七と、悪女・お富
それから、伝七は源太の店に顔を見せます。
「まだ疑われているのか?」と警戒する源太でしたが、さにあらず。
伝七は「からくり屋の源太の母親」を名乗る女を連れてきたのでした。
しかし、その女・お富が実は「女詐欺師」で、源太を利用して、金儲けを企んでいたのです。そして、女の情にほだされた源太は……というのが今回のストーリー。
そう言えば、以前、NOVAはこういうことを書いています。
似たような立ち位置のキャラだと、若いときの「かんざしの秀」がいるのですが、秀の場合、ゲスト女性との交流が多い、という強みがありました。
でも、源太って「2007」で想い人を失い、その子の作太郎と、小料理屋を引き継いでいるというキャラ設定のため、「女性との交流」話が作りにくそう。そうなると、必然的に「男友達」とか「お得意客」としか絡めなくなりがちで、人情系のキャラとしては動きにくい地味な役どころ。
今後は浮いた話のない「子供相手専門」になるか、それとも2話みたいな話で「マダムキラー」になっていくか、注目したいところ。
結局のところ、源太自身が「子供」扱いされて、「マダムに殺される」という結末でした。
殉職に際して
以前、グリズリーさんという方が、第4話の感想の際、コメント欄で「仕事人から殉職者が出るか」と話をされていましたが、
自分のレスとして、
自分は、スペシャルの「玉櫛死亡」が割とショッキングでしたね。まさか、初手から、こういうハードさで来るとは思ってなかったので。(中略)
殉職がありそうなら、源太か涼次ってところでしょうが、シリーズの続編を狙うなら、今作では避けてほしいです。
でも、そうなるなら江戸からの逃避行というラストでしょうが、主水、小五郎は役柄上、残留組になるでしょう。よって、これも源太と涼次になりますね。子連れの源太が何だか、悲劇っぽいか。元想い人の店を捨てなきゃいけないし。(中略)
いずれにせよ、殉職にも相応のドラマが欲しいですね。
相応のドラマでした。
男を信じた玉櫛が斬られ、女を信じた源太が刺される。信じた者が裏切られるハードな末路。
遺された作太郎が気の毒です。
作太郎
作太郎と言えば、「2007」で母親を失い、5話で初恋のお姉ちゃんを失い、今回は育ての父親を失う、という悲劇の子役です。
5話での感想で、
今回の話をセンセーショナルに盛り上げようと思えば、「頼み人が作太郎」とか、「作太郎、仕事人になる」とか、どうしても作太郎を裏稼業に巻き込まないといけない。でも、ここは「作太郎の友人のゲスト子役」に、頼み人の役割を負わせることで、レギュラーの作太郎は安全圏に置かないといけない。(中略)
作太郎の悲しみをきちんと描いただけで、今回の話は十分に心の琴線をかき鳴らします。その点では、子役を使って盛り上げるのは、反則にも近いほど効果的ですね。
「レギュラーの作太郎は安全圏に置かないといけない」ということですが、今回は見事に「頼み人が作太郎」になってしまいました。
それもこれも、「女詐欺師に騙されて、命を狙われている源太を救うため」に仕事を依頼したのに、結局、源太が自分のことは自分で決着をつけると思いきり、それでも土壇場で情にほだされてしまい、油断して致命傷を受けてしまう。まさに「プロとして裏稼業を続けるなら、いちいち情に流されていては、長生きできない」を実演してみせた形になります。
歴代殉職者との比較
殺しの現場で、迷いが生じて返り討ちにあった者としては、「暗闇仕留人の糸井貢」が挙げられるわけですが、
貢の場合は、頭が良すぎて、開国という理想と、殺しでは変えられない現実のギャップに思い悩んで、とっさに隙が生まれた形になります。そして、殺しの的に返り討ちにされ、仕事を全うできなかった。
一方、源太の場合は、お人よしのバカがだまされて……という意味では、貢と異なり、むしろ「からくり人・血風編の直次郎」に通じるものが、また自らを刺した者に最期の力で反撃に出て倒すという意味では、「新仕置人の念仏の鉄」に通じるものがあり、過去の殉職仕事師の死に様と比べても、何ら恥じることはないと考えます。
さて、必殺史上、最終回で命を落とした者は多いですが、物語の途中で散って行った者も何人か見られます。
最終回で死んだ場合は、それで組織が解散して物語が結末を迎えるわけですが、物語の途中でメンバーの一人が散った場合は、遺された者の物語がどう展開して行くかが気になるところ。
そこで、ここからはそういうキャラを振り返ってみたい、と思います。
助け人・為吉
必殺シリーズ歴代殉職者第1号に挙げられるのが、助け人の密偵役・為吉です。
役人に捕まって拷問にあって死亡という流れですが、彼の死によって、それまで明るい作風だったのが、陰鬱なドラマに変わっていきました。
また、彼には隠していた妻子がいて、息子に「為のおじちゃん」と呼ばせるなどの演出で、裏稼業の非業な親子愛を描写していた点も、今回の源太との比較で特筆すべきことと言えます。
糸井あや
殺し屋ではありませんが、殺し屋の身内(妻)として、物語半ばに散って行きます。
やはり、彼女の死が、仕留人・糸井貢に重い影を残します。
からくり人・夢屋時次郎
緒形拳演じる、からくり人の主人公格。
最終話の1話前において、時の老中・水野忠邦や、敵組織の元締めを単独で射殺しようとしたものの、運悪く弾道に鳩が飛び込んできたために、果たせず、追いつめられて、自爆して死亡。
彼の死がきっかけとなって、からくり人の最終決戦に至る。シリーズ唯一、殺し屋が全滅する最終話は必見。
新仕置人・死神
元締め・虎に直接仕える非情な殺し屋。
元締めの用心棒にして、殺しの監視役の彼は、感情を持たない殺人機械だったのだが、最終話の1話前において、生まれて初めて恋愛感情を持ったがために、組織を裏切る形になってしまう。そして、最期は自害して果てる。
彼の死がきっかけになって、「闇の組織・虎の会」の崩壊劇が始まる。
新からくり人 噺し家・塩八
「仕事人2009」のオープニングナレーションを務める古今亭志ん朝演じるキャラ。
独特の話術による催眠効果で、相手を屋根に上らせ、自ら転落死させる個性的な技の持ち主。
物語半ばで、探索活動中に銃で撃たれ、重傷を負いながらも、仲間の殺しをサポートするため、高座の舞台で話芸を披露。殺し屋だけでなく、噺家としての矜持を守って死亡。
最終話で、緒形拳演じる安藤広重が香典を渡すなど、存在が言及されたのは嬉しい演出。
仕事人・半吉
「笑点」の山田君こと山田隆夫*1演じる仕事人初期の密偵役。「障子・行灯・ふすまのは〜りかえ〜」の口上で街中を駆け回る。
かわいのどか演じる出会い茶屋の店員・おふくといい仲だったけど、事件に巻き込まれて彼女が死亡。
その後、独り身になって寂しい想いをしていたときに、幼なじみの娘・お袖と再会。しかし、結局、彼女にだまされて、命を落とすことになる。
彼の死が仕事人チームを新たな体制に移らせる、一つのきっかけとなる。
さて、今回の「源太の死」が今後の2009のドラマ展開にどんな影響を与えるか、次の話が大変気になったりします。でも、今のメンツだと殺しの実働メンバーが「役人2人」と「町人1人」でバランスが非常に悪いです。まあ、初期の仕事人みたいに「侍2人」と「町人1人」というケースもあったけれど。
今から、新メンバーが入ってくるのか、「裏稼業には興味を見せて、殺し以外なら何でもやる」と言いきった如月が結局、どうなるのか、作太郎はレギュラーであり続けるのか、非常に気になるところですな。
*1:他に特撮ファンとしては、『太陽戦隊サンバルカン』の矢沢助八役をチェックしたい