今年もそろそろ終わり
NOVA「ふう。とうとう仕事が終わって、一息ついてる俺がいる」
晶華「おつかれさま〜」
翔花「仕事が済んだら仕事だぜ」
NOVA「それはパチンコのCMだな。まあ、仕事と言えば、新春の仕事人の追加情報が出たりしたんだが」
NOVA「とりあえず、今回、退場する仕事人がエンケンさん演じる瓦屋の陣八郎だと分かって、残念な気持ちとホッとした気持ちの両方がある。
「エンケンさんのキャラは、殺しの際の演技がコミカルで面白いと思っているが、ドラマ面では一歩引いた立ち位置で、あくまでメインではない助っ人仕事人だと思っていた。もしも万が一、メインキャラの涼次が退場ならガーンとショックを受けるだろうが、陣八郎の場合はそれほどショックではない。だからホッとしたのもあるが、それはそれで面白いキャラだったのになあ、と残念な気持ちもある、と」
晶華「陣八郎さんって、2015年からのレギュラー枠だったのね」
NOVA「登場しなかったのは2020の時だけだな。15、16、18、19、22、23の6作に出て退場って形になる。前回のリュウとのそば屋コンビが『生真面目な若者リュウと、ちゃらんぽらんな陣八郎の掛け合いが楽しい』と思っていたんだが、これで退場と思うと寂しいな」
翔花「他に注目ポイントは?」
NOVA「鎌倉殿で巴御前を演じた秋元才加さんが、ガッツ石松の娘のゲストヒロインを演じるが、ついでに仕事人に覚醒してくれないかと期待している」
晶華「ただの犠牲者枠でしょ?」
NOVA「おそらくはな。しかし、アクション女優としてウルトラマンの映画や牙狼の魔戒法師も務めた彼女がただの犠牲者とはもったいない気がするんだな。秋元才加さんが女仕事人として、エンケンさんに代わってレギュラー入りしたら、俺は大歓迎するぜ」
翔花「願望妄想乙といったところかしら」
NOVA「お前まで、そんなことを言うか? まあ、女仕事人と言えば、鎌倉殿のトウが最終回で殺しの道から足を洗って、孤児たちに武芸を指南する立場を獲得して、一応の平和な日常に帰結したのは良かった。養い親の善児に比べて、仕事が失敗続きのドジっ娘のイメージが付いていたが、殺しの世界から光の当たる場所に帰って来たのはハッピーエンドだと思う」
晶華「鎌倉殿はさておき、他に注目ポイントは?」
NOVA「橋本じゅん演じる医者の東庵が犠牲者枠なのか、それとも実は悪人で、殺しの的に転じてしまうのかがドラマ的に重要と考える。『エンケンさんの幼馴染みで、ワクチン開発に勤しんでいる真面目な医者』という設定だが、こいつが悪党だと、反ワク思想の人間が調子づきそうなので勘弁して欲しいわけだ」
晶華「でも、江戸養生所が悪人の巣窟であることは明らかでしょ?」
NOVA「給付金詐欺のために、鬼面風邪の患者数を水増ししているようだな。まあ、悪党殺しのドラマなので、悪い医者がいて殺しの的になるのは結構だが、全ての医者が悪党のように描くのは救いがないからな。『ワクチン作っている医者は善人だったけど、ワクチンなんて作られたら金儲けの邪魔だと考える悪党に殺される。彼の仇を命がけでエンケンさんが討って、彼の作ったワクチンを守って、江戸の市民はワクチンのおかげで助かる。鬼面風邪騒動は、こうして人知れず命をかけて戦った善意の医者と仕事人の犠牲のおかげで収まって、めでたしめでたし』となるのが、俺的に納得できるストーリーだ」
翔花「医者の東庵先生が悪党で、それを知った秋元才加さんが絶望して闇堕ちして、殺しの道に足を踏み入れて、レギュラー化するってのは?」
NOVA「それはそれで見てみたい気もするが、善人が絶望して闇堕ちする皮肉なストーリーは今の必殺2時間ドラマの定番だからな。表と裏のどんでん返しがシリーズの醍醐味とも考えるが、反ワク万歳な物語に堕してしまうと、そいつは残念と言わざるを得ない。その辺は脚本の西田征史さんがどんなオチをつけるかを見極めるしかないが、一つだけ先に言っておくことがある」
晶華「何?」
NOVA「ドラマと現実は別物だってことさ。仮に、必殺のドラマでワクチン作りが悪党として描かれたとしても、現実で反ワクチンが正しいと立証されるわけじゃないし、そういう思想云々でドラマがつまらなくなってしまうような感想をもしもメールで寄越してきたら、『俺はそういうドラマをつまらなくしてしまう元凶を、一生許さない』ってことだな。
「ドラマが現実の一部を風刺するとか、皮肉っぽく描くことはあっても、『好きなドラマシリーズをつまらない政治思想の玩具にされた』なら、それは『今回の話はつまらなかったな』となるだけであって、『好きな必殺シリーズが反ワク思想を肯定したから、自分も前言を撤回して、反ワク思想に乗り換えます』なんてことにはならないので、その辺は先に釘を刺しておきたい」
翔花「せっかく楽しんでいるドラマを、つまらない感想のために台無しにされたら、興醒めだもんね」
NOVA「面白い感想ってのは、聞いてて学びがあるんだよな。『役者のこの演技が上手いなあ』とか、『この場面で、このセリフは感じ入った』とか、『こういうストーリーを描くために、こういう伏線を差し挟むなんて緻密なストーリーメイキングだ』とか、読むと面白い考察があって、なるほどな、と首肯できる部分がある。つまらない感想にはそれがない。首肯できる部分がないのに、偏頗な毒だけが目立ってしまい、食べたらグゲっと来る吐き出したくなるような感想。
「面白い感想は、作品の味を引き立たせるような調味料と言えるし、食後のデザートとか、酔わせてくれる美酒にも例えられる。逆に不味い感想は、作品の味を壊してしまうわけだ。仮に反ワク思想の持ち主であっても、ストーリーとは別に、『役者の演技』『殺しの美学や演出、選曲のあれこれ』『物語の伏線や構造の分析』『過去の作品との比較』『今後の期待』など、語れる切り口が芳醇であれば、読んでて勉強になるし、
「もっと簡単に『涼次のキャラはいいですね。リュウも毎回、職業と殺し技が変わるのが面白い。今回は魚屋ですか。天秤棒で棒術を披露するのかな。クライマックスはいつもの刺し技でしょうけど、前座の殺しで見事な棒術アクションを披露してくれるのを期待します』とか、『陣八郎さんの退場は残念です。この人はカクレンジャーの貴公子ジュニアの怪演とか、コミカルな悪党が似合っていますが、仕事人Vのラスボスでもあったのですね。良い役者さんの最後の活躍を楽しみにしたいです』とか、キャラ愛を披露する蘊蓄語りとか、読み応えのある感想を書ける人間を尊敬するなあ、と」
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